クルト・ザンデルリンクの「驚愕」ライヴ2種(ハイドン)

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(1)クルト・ザンデルリンク(Kurt Sanderling)指揮のウィーン交響楽団(Wiener Symphoniker)の演奏で、ハイドンの交響曲94番「驚愕」、ブラームスの交響曲3番の2曲を収めたアルバム。ハイドンの収録は1998年12月17日、ウィーンのコンツェルトハウスの大ホールでのライヴ。ザンデルリンクのライヴをいろいろリリースしているレーベルはWEITBLICK。

(2)クルト・ザンデルリンク(Kurt Sanderling)指揮のスイス・ロマンド管弦楽団(Suisse Romande Orchestra)の演奏でハイドンの交響曲94番「驚愕」、オケを変えてラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲、リヒャルト・シュトラウスの「ドン・ファン」の3曲を収めたCD-R。ハイドンの収録は2000年11月8日で、収録場所は記載されていませんが、スイス・ロマンドの本拠地、ジュネーヴのヴィクトリア・ホールでしょうか。レーベルはCD-Rで良く見かけるEn Larmes。
クルト・ザンデルリンクはハイドンを得意としており、私も好きな演奏が多い指揮者です。これまでいろいろ取りあげてきました。
2013/02/16 : ハイドン–交響曲 : ザンデルリンク/読響の「熊」1990年サントリーホールライヴ
2012/11/13 : ハイドン–交響曲 : クルト・ザンデルリンク/ベルリン交響楽団の王妃、86番
2012/06/30 : ハイドン–交響曲 : 【新着】ザンデルリンク/スウェーデン放送交響楽団の39番ライヴ
2010/11/04 : ハイドン–交響曲 : クルト・ザンデルリンク/ベルリン・フィルの熊ライヴ
2010/06/18 : ハイドン–交響曲 : クルト・ザンデルリンクの86番
これまでの記事を読んでいただければわかるとおり、ザンデルリンクのハイドンは生気と感興、推進力が高次にバランスした演奏。まさにハイドンの美学をそのまま音楽に仕立ててきます。私もザンデルリンクのハイドンは好きなタイプの演奏故、過去取りあげたものは何れも高評価をつけています。そのクルト・ザンデルリンクでまだ取りあげていないこれらのアルバムを聴き比べながら取りあげようと言うのが今日の意図です。
ちなみにザンデルリンクの略歴などは、上の39番の記事をご覧ください。
Hob.I:94 / Symphony No.94 "Mit dem Paukenschlag" 「驚愕」 [G] (1791)
まずは、ウィーン響との(1)から。
流石にウィーン響、柔らかい音色ながらしっかりと芯があり、ザンデルリンクの折り目のすっと通ったコントロールの魅力が伝わります。オーソドックスなのにアトラクティヴ。推進力があるのに落ち着きはらった指揮。そしてテンポは一貫して中庸を保ち、曲自体からハイドンの良さを再認識させるような自然なアプローチ。まさに王道を行く演奏。響きに身を任せて驚愕の変化に富んだ1楽章を楽しみます。ライヴですがまるでセッション録音のような安定感。
つづくびっくりの2楽章は、こうすれば子供騙しではなく純音楽的な洗練を感じさせられるようになるという見本のような折り目正しい演奏。あっさりとした表情からにじみ出る爽やかな情感。華美にもならず、テクニックの誇示にもならない誠実さ。素直なアプローチから純音楽的な面白さを存分に感じさせます。ハイドンの聴かせどころのツボを完全に押さえています。後半の展開部のダンディズム溢れるタイトな表情。
メヌエットはザンデルリンクの真骨頂。作為なく自然に音楽が流れますが、フレーズ事に微妙に間を変化させながら音楽の構造が浮かび上がるよう、くっきり描いていきます。音量の変化ではなく表情で音楽を浮かび上がらせる至芸。まさに燻し銀。
そしてフィナーレは、落ち着いたコントロールながら、この曲のクライマックスにふさわしい推進力が漲り、徐々に頂点に近づいていきます。リズムの芯がぶれずに、オケの各楽器がせめぎ合い、最後はフォーカスがピタリと合って頂点へ。この素晴しい盛り上がりはなんでしょうか。会場からも暖かい拍手降り注ぎます。
つづいて(2)。(1)から約2年後のコンサートということで、演奏の基本的なスタイルは変わりません。オケの音色の柔らかさや、まとまり、折り目正しさは(1)のウィーン響に歩がありますが、逆にライヴらしい独特の空気感や良い意味での荒々しさはこちらの方が上。録音はやはり(1)に歩があります。いつ爆発するかわからないような緊張感があり、これはこれでなかなか楽しめます。オケのキレはわずかに劣りますが、不思議と大きな流れの迫力はこちらにあります。
以後、フィナーレまで同じ傾向がつづき、(1)と相似形の演奏。流石にオケが変わってもコントロールが行き届き、ザンデルリンクならではの驚愕になっています。こちらの方が拍手は盛大で拍手に関してはこちらが一段リアルでした(笑)
クルト・ザンデルリンクの指揮するウィーン興、スイスロマンド管での「驚愕」のライブ2種。最も印象に残るのは、やはりザンデルリンクのコントロールのでしょうか。どちらの演奏もコントロールが行き届き、ザンデルリンクならではの響きになっています。どちらの演奏も燻し銀の名演。よりライヴらしい演奏を好む方はスイスロマンドのものを好む方もいるでしょう。一般的にはウィーン響とのWEITBRICK盤をオススメとしておきましょう。「驚愕」の折り目正しいバランスの良い演奏として、多くの人に聴いていただきたい名演だと思います。評価はウィーン響盤が[+++++]、スイスロマンド管盤が[++++]といたします。
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