クァルテット・エステルハージのOp.20(ハイドン)

だまてらさんのコメントでちょっと気になったアルバム。手元に長らくありますが、あまり印象が残っていなません。きっと皆さんの手元にもそうゆうアルバム、いろいろあるに違いありません(笑)

QEsterhazy20.jpg
amazon

クァルテット・エステルハージ(Quartetto Esterházy)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.20のNo.2、No.4の2曲を収めたアルバム。収録は1973年9月、オランダ、アムステルダムのメノナイト教会(Doopsgezinde Gemeente, Amsterdam)でのセッション録音。レーベルはSony Music傘下のSEON。

先日クァルテット・アルモニコのOp.20のNo.2を取りあげた記事のコメントで、だまてらさんがこの演奏のことに触れています。所有盤リストを見ると確かに手元にありますが、演奏の印象がいまいち思い出せません。ちょっと気になっていたので、今日仕事から帰ってラックをあちこち掘って探し当てたもの。最近弦楽四重奏曲はメンバーの名前を所有盤リストに記載するようにしていますが、癖でメンバーを見ると、なんと第1ヴァイオリンはヤープ・シュレーダーではありませんか! ヤープ・シュレーダーといえば、ホグウッドと入れたモーツァルトの交響曲全集です。ホグウッドのハイドンの交響曲集はホグウッドの名前しか刻まれていませんが、モーツァルトの方はホグウッドとシュレーダーの連名となっており、ハイドンの全集にはない高揚感とキレがあり、私はコンサートマスターのシュレーダーのコントロールがこの2つの交響曲集の生気の違いを生んでいるとにらんでいます。

クァルテット・エステルハージのメンバーは下記のとおり。

第1ヴァイオリン:ヤープ・シュレーダー(Jaap Schröder)
第2ヴァイオリン:アルダ・ストゥロップ(Alda Stuurop)
ヴィオラ:ウィール・ピータース?(Wiel Peeters)
チェロ:ウォウター・メラー(Wouter Möller)

ライナーノーツなどをさらってみると、このクァルテットは、4人のオランダ人古楽器奏者によって設立された、ハイドンによって弦楽四重奏というジャンルが確立した現場であるエステルハージ家の名を冠したクァルテット。エステルハージ四重奏団というクァルテットがアメリカにもあり、ネットで出てくる情報はそちらばかりです。第1ヴァイオリンのヤープ・シュレーダーは1925年生まれ。アムステルダム音楽院やフランスのソルボンヌ大学で学び、グスタフ・レオンハルト、アンナー・ビルスマ、フランス・ブリュッへンらと古楽器による室内楽団を結成して古楽器演奏の先鞭を付けた人ですね。

さて、アルバムをCDプレイヤーにかけると、キリリとしたヴァイオリンの鋭い響きがまず耳に刺さります。

Hob.III:32 / String Quartet Op.20 No.2 [C] (1772)
1973年の録音としてはかなり鮮明な響き。シュレーダーによるヴァイオリンのキリリと引き締まった音色も良いですが、チェロやヴィオラの響きもかなりの安定感。特にチェロは楽天的と感じるほどの晴朗さ。シュレーダーのヴァイオリンは弦を良く鳴らして、古楽器としてはかなり豊かな響き。古楽器独特の刺さるような鋭い音色で、フレーズをクッキリ浮かび上がらせます。冬の真昼の太陽が鮮明な陰を山肌に落としているような峻厳さ。逆にクッキリさが際立ち、音楽のしなやかさは少し後退。だまてらさん宅で聴かせていただいた、ダイレクトでタイトな弦の緊張感がある演奏とイメージが重なります。
アダージョも鮮明な響きは変わらず素晴しいテンションを保ちますが、もう少し抑える部分をとって、間を活かすと深みが感じられそうです。ただヤープ・シュレーダーのボウイングは神業の域に達して、グイグイ心に迫ってきます。
メヌエットはシュレーダーとストゥラップの息がピタリと合って、ヴァイオリンが精妙に重ります。ヴァイオリンの音の伸びは古楽器とは思えない艶やかなもの。ヴァイオリンの鮮明さとヴィオラ、チェロの安定感の対比がいい感じ。
フィナーレはザクザクと弾き進める名人芸の響宴のよう。やはり4人ともテクニックは確かで、淡々とした中にも音楽のじわりと盛り上がる大きな波動が感じられ、楽章のクライマックスに向けて追い込んでいこうとしているのがわかります。

Hob.III:34 / String Quartet Op.20 No.4 [D] (1772)
2曲目は簡単に。丁寧な演奏ぶりは変わらず。このざっくりと一音一音を噛み締めるような展開、前記事で取りあげたマルコム・ビルソンのソナタでも同じエッセンスを感じます。音楽の造りがちょっと似ているかもしれません。前曲に比べて陰のあるこの曲では、彼らの演奏スタイルがより合っているように感じます。フィナーレは鋭い音色のヴァイオリンのキレの良さが際立ちます。鳥がさえずるようなヴァイオリンのパッセージを中心に進み、4人の息がピタリとあった掛け合いの妙が聴き所。しっかりとまとめてきました。

古楽演奏のパイオニアでもあるヤープ・シュレーダー率いるクァルテット・エステルハージによるOp.20からの2曲。古楽器独特の音色、特に伸びのあるヴァイオリンの音色の魅力を軸にした演奏。響きのメリハリがクッキリしていて音楽は明解そのもの。このタイトな音色の魅力は素晴しいものがあります。一方ハイドンの初期の弦楽四重奏曲の傑作であるOp.20には憂いや陰り、そして深みなどの表現も求めてしまうのが正直な所。クァルテット・エステルハージの演奏では楽章間の対比や、曲そのもの奥行きの深さの表現では、もう一段踏み込みを期待してしまいます。私の評価は両曲とも[++++]といたします。この演奏、だまてらさん宅ではヴァイオリンの迫力が一段と素晴しいのでしょうねぇ。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 弦楽四重奏曲Op.20 古楽器

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

最新記事
カテゴリ
ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものはリスト冒頭に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

登録曲数:1,365
登録演奏数:11,529
(2019年3月31日)
タグリスト
クリックするとそのタグに関する記事が表示されます。特定の曲に関する記事の表示ができます。

ピアノ協奏曲XVIII:4軍隊ヒストリカル交響曲93番交響曲70番ピアノ協奏曲XVIII:11交響曲80番交響曲81番トランペット協奏曲ヴァイオリンとピアノのための協奏曲XVIII:6悲しみロンドンオックスフォードモーツァルト交響曲4番ヨハン・クリスチャン・バッハピアノソナタXVI:51豚の去勢にゃ8人がかりピアノ三重奏曲十字架上のキリストの最後の七つの言葉スカルラッティヘンデルラモーバッハ驚愕ショスタコーヴィチシェーンベルク弦楽四重奏曲Op.76ドヴォルザークベートーヴェン交響曲75番チェロ協奏曲ホルン協奏曲古楽器時計弦楽四重奏曲Op.50アンダンテと変奏曲XVIII:6弦楽四重奏曲Op.54弦楽四重奏曲Op.64弦楽四重奏曲Op.20天地創造ヴォルフレスピーギヨハン・シュトラウスリヒャルト・シュトラウスタリスリゲティ交響曲10番ピアノソナタXVI:49迂闊者交響曲54番ネルソンミサバリトン三重奏曲トマジーニピアノソナタXVI:52交響曲2番ピアノソナタXVI:37ピアノソナタXVI:46日の出皇帝弦楽四重奏曲Op.71交響曲88番ブルックナーベルリオーズナッセンベンジャミンウェーベルンメシアンシェルシグリゼーヴァレーズOp.20弦楽四重奏曲交響曲67番交響曲65番交響曲9番交響曲39番狩り交響曲73番交響曲61番リームピアノソナタXVI:6ピアノソナタXVI:20ピアノソナタXVI:48アンダンテと変奏曲XVII:6四季交響曲全集ラヴェルリムスキー・コルサコフピアノソナタXVI:21ピアノソナタXVI:44ピアノソナタXVI:45第九太鼓連打交響曲99番ボッケリーニシューベルト交響曲5番ストラヴィンスキーチャイコフスキーライヴ弦楽四重奏曲Op.2序曲ヴィヴァルディオペラ序曲パイジェッロアリア集ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6すみだトリフォニーホールピアノソナタXVI:34ブーレーズサントリーホール弦楽四重奏曲Op.74騎士オルランド無人島哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェ変わらぬまことアルミーダチマローザ英語カンツォネッタ集ピアノ協奏曲XVIII:1ピアノ協奏曲XVIII:3交響曲3番ラメンタチオーネアレルヤ交響曲79番チェロ協奏曲1番交響曲27番交響曲19番交響曲58番紀尾井ホールドビュッシーミューザ川崎協奏交響曲オーボエ協奏曲LPヴァイオリンとヴィオラのためのソナタピアノソナタXVI:40ピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:32ピアノソナタXVI:38ピアノソナタXVI:29スタバト・マーテルピアノソナタXVI:39マーラー告別交響曲90番交響曲97番交響曲18番奇跡ひばりフルート三重奏曲交響曲102番交響曲86番ヴァイオリン協奏曲哲学者ミサブレヴィスニコライミサ小オルガンミサ交響曲95番交響曲78番ピアノソナタXVI:23王妃武満徹ライヴ録音SACDマリア・テレジア交響曲21番クラヴィコードBlu-ray東京オペラシティ交響曲11番交響曲12番交響曲15番交響曲37番交響曲1番ピアノソナタXVI:8ピアノソナタXVI:42ピアノソナタXVI:25ピアノソナタXVI:14ピアノソナタXVI:2ピアノソナタXVI:12ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:1ピアノソナタXVI:5ピアノソナタXVI:3ディヴェルティメント東京芸術劇場交響曲98番ピアノソナタXVI:7ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:35ロッシーニドニぜッティライヒャ弦楽三重奏曲東京文化会館フルート協奏曲弦楽四重奏曲Op.9弦楽四重奏曲Op.17剃刀弦楽四重奏曲Op.103弦楽四重奏曲Op.77ピアノソナタXVI:26ファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:31アレグリバードモンテヴェルディパレストリーナ美人奏者ピアノ協奏曲XVIII:7アコーディオンスコットランド歌曲ヴェルナーガスマンピアノソナタXVI:24交響曲51番交響曲35番交響曲46番DVD交響曲47番テレジアミサピアノソナタXVI:28アリエッタと12の変奏XVII:3ラ・ロクスラーヌ帝国ハイドンのセレナード五度ラルゴラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.33弦楽四重奏曲Op.1騎士交響曲17番ピアノソナタXVI:27シベリウス時の移ろい交響曲42番ベルリンフィルホルン信号弦楽四重奏曲Op.55交響曲87番リュートピアノソナタXVI:10ピアノ五重奏曲チェチーリアミサラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン東京国際フォーラム雌鶏冗談ナクソスのアリアンナピアノ協奏曲XVIII:5ピアノ協奏曲XVIII:9ヴァイオリンソナタ交響曲52番ピアノ協奏曲XVIII:2ロンドン・トリオモテットドイツ国歌カノンオフェトリウムよみうり大手町ホールパッヘルベルアダージョXVII:9受難パリセット交響曲84番ベルク主題と6つの変奏オペラアリアピアノソナタXVI:41スクエアピアノ交響曲57番交響曲68番リラ・オルガニザータ協奏曲交響曲50番交響曲89番CD-R偽作トビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師オルガン協奏曲火事交響曲38番リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10交響曲34番交響曲77番温泉フルートソナタドイツ舞曲誕生日校長先生ピアノソナタXVI:47bisピアノ小品音楽時計曲ピアノソナタXVI:11カートリッジ雅楽プロコフィエフサン=サーンス交響曲36番リストオーディオバリトン二重奏曲交響曲91番交響曲66番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47読売日響オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭変奏曲XVII:7ピアノソナタXVI:22天地創造ミサジャズ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノヴェーベルン府中の森芸術劇場裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャマリアテレジア交響曲56番2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ新橋演舞場サルヴェ・レジーナテ・デウムカッサシオン室内楽曲ベトナム料理国立新美術館高音質CD交響曲28番交響曲13番交響曲62番交響曲108番交響曲107番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲声楽曲カンタータ戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中ピアノソナタXVI:30カラヤンスウェーリンク書籍交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽ピアノソナタ

タグリスト
クリックするとそのタグに関する記事が表示されます。特定の曲に関する記事の表示ができます。

月別(表示数指定)
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カウンター
カレンダー
11 | 2019/12 | 01
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
ブログ内検索
Translation(自動翻訳)
アクセスランキング(FC2)
[ジャンルランキング]
音楽
87位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
クラシック
10位
アクセスランキングを見る>>
ブログランキング等
当Blogへお越しの際は、下のバナーをクリックの上お仲間のBlogも是非お楽しみください。
クラシック音楽鑑賞の情報満載。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

クラシックの膨大なブログランキング。更新もクイック。
人気ブログランキングへ

大家さんFC2のクラシックブログランキング。

おすすめ(音楽)
当ブログが発掘した超名演盤
ViventeR.jpg
衝撃の爆演(記事1 記事2

PetersenQ.jpg
Op.1の超名演(記事

Destrube.jpg
美音の饗宴(記事

書籍もCDも送料1点から無料。配送クイック


クラシックの独自企画・復刻盤は要注目


クラシックのアルバム・日本語解説が一番充実
HMVジャパン
HMV & BOOKS ONLINEでハイドンのアルバムを検索icon
HMV & BOOKS ONLINEでハイドン関係書籍・楽譜を検索 icon

おすすめ(音楽以外)






twitter
ブログの更新情報などをつぶやいています。
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ