作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ハンス・ロスバウト/ベルリンフィルのオックスフォード、ロンドン(ハイドン)

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前記事で聴いたアーノンクール/ベルリンフィルの熊があまりにも素晴しかったので、手元にあるベルリンフィルの演奏をあれこれ物色。そして選んだのがこれ。

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HMV ONLINEicon(発売予定のSHM-CD)/ amazon

ハンス・ロスバウト(Hans Rosbaud)指揮のベルリンフィルの演奏で、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲4番、ハイドンの交響曲92番「オックスフォード」、104番「ロンドン」の3曲を収めたアルバム。ヴァイオリン独奏はウォルフガング・シュナイダーハン。収録はオックフフォードが1956年3月、ロンドンが1957年3月、何れもベルリンのイエス・キリスト教会でのセッション録音。レーベルは名門Deutsche Grammophon。

手元の所有盤リストでベルリンフィルのハイドンの交響曲の演奏を探すと、もちろんカラヤン、ラトル、以前ライヴを取りあげたザンデルリンクなどが出てくるのですが、あとはチェリビダッケやリヒターといったところ。これまで取りあげた事のない指揮者という意味てロスバウトを選んだ次第。

ライナーノーツには、冒頭に高名なハイドン研究者であるロビンス・ランドンが1950年代に書いた批評が紹介されています。ランドンはこのロスバウトのオックスフォードとロンドンの演奏のことを「Grammophonの録音の歴史上、これから録音されるであろう数多の演奏も含めて、最も完成度の高い演奏である」との言葉を残しているそう。これはちょっと気になります。

そのハンス・ロスバウトですが、1895年、オーストリアのグラーツに生まれた指揮者。母はピアニストで、フランクフルトのホーホ音楽院に進み、1920年からはマインツ市立音楽学校の校長となります。指揮者としては1929年にフランクフルト交響楽団の音楽監督となり、ヒンデミット、バルトーク、ストラヴィンスキー、シェーンベルクらの作品を上演して、現代音楽を積極的に紹介しました。戦後はミュンヘンフィル、南西ドイツ放送交響楽団、チューリッヒ・トーンハレ管の指揮者として活躍し、1962年にスイスのルガーノで亡くなっています。エルネスト・ブールとともに指揮者としてのピエール・ブーレーズに影響を与えたということです。

フルトヴェングラーの急逝によってカラヤンがベルリンフィルの芸術監督となったのが1955年ということですから、このロスバウトの演奏はその直後の録音ということになります。

Hob.I:92 / Symphony No.92 "Oxford" 「オックスフォード」 [G] (1789)
現代音楽が得意と聞いてこの入りを聴くと、実に緻密なコントロールに聴こえるのが不思議なところ。朝陽が差すような淡いトーンからオケが踏み込んでくるまでの序奏の変化は非常に巧みな演出だと感じます。ちょっと古びた音色に違いありませんが、録音を脳内補正して聴くと、オケはやはりベルリンフィルらしい覇気に満ちあふれています。実に引き締まった良い表情。引き締まったタイトな響き。ベルリンフィルはベルリンフィルなんですね。
流石なのが続くアダージョ。音楽の流れが大きくなり、深い呼吸としっとりした響きがえも言われぬ柔らかさ。タイトさとこの柔らかさの対比が絶妙。そしてメヌエットは、沈着冷静な進行。出来るだけ客観的に演奏しようとしているのか、テンポは揺らさず、淡々と、しかし引き締まったダイナミックさは保とうとしているよう。
フィナーレの有名な入りは弾む感じとキレ、推進力の高度なバランスを保った演奏。速めのテンポで快活が前面に出ます。オケの吹き上がりは流石ベルリンフィル、意外に端正なロスバウトの指揮に、オケの方から煽りを入れてくるような印象もあります。オケがインテンポで次々と畳み掛けてきます。オケのキレを楽しめる素晴しいフィナーレ。

Hob.I:104 / Symphony No.104 "London" 「ロンドン」 [D] (1795)
変わってハイドン最後の交響曲「ロンドン」。録音は1年新しいのですが、音のクォリティーはさして変わらず。なんとなくロンドンの方がスケール感のある演奏を期待して、同じレベルの録音なのに、耳がスケール感を求めてしまって損している感じ(笑)
オックスフォードのリズムがキレていたので、ロンドンの1楽章は若干重い感じに聴こえます。ただ、淡々と立体感溢れる音楽を紡ぎ出してくるあたりは流石の出来です。聴き進むと重さもスケール感を出そうとしてのことだとわかります。1楽章は徐々に盛り上がって最後は覇気炸裂。
アンダンテはかなり大胆にテンポを落とします。一貫してキリッとした表情から、覇気が滲み出してくる演奏。やはりベルリンフィルの合奏力あってのコントロールでしょう。こうゆうオケを指揮するのは楽しいのでしょうね。
そしてメヌエットも録音年代を考えるとモダンな演奏。オケの合奏力によるメリハリが素晴しいので、淡々とした表情が活きます。
フィナーレは言わずもがな。耳が慣れて録音をちゃんと割り引いて、当時の響きを聴き取ろうとしてますので、迫力は十分。この余裕のある覇気はベルリンフィル独特のものでしょう。素晴しい陶酔感すら感じるフィナーレの展開。途中、テンポをかなり意識的に落として沈み込むあたり、ハイドンを知り尽くした至芸と聴こえます。最後は響きの坩堝のようになって終了。

ハンス・ロスバウトの指揮するベルリンフィルは、1950年代にもかかわらず、ベルリンフィルらしい素晴しい覇気のある演奏でした。オケの伝統とはこれほどの歴史があるものと再認識。オケの響きは長年かかってそのオケらしい音が形作られていくものだとあらためて再認識した次第。この録音をちゃんと聴くとベルリンフィルの素晴らしさがよくわかります。評価は両曲とも[+++++]としました。

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