作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

アーノンクール/ベルリンフィルの熊ライヴ(ハイドン)

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9月に入りました。久々の交響曲のアルバム。先日ディスクユニオンの店頭で探し当てたもの。

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ニコラウス・アーノンクール(Nikolaus Harnoncourt)指揮のベルリンフィルの演奏で、モーツァルトの「音楽の冗談」ベートーヴェンとモーツァルトのバリトン向けアリア4曲、そしてハイドンの交響曲82番「熊」を収めたアルバム。バリトン独唱はジェラルド・フィンレイ(Gerald Finley)。収録は2001年4月29日、ベルリンフィルハーモニー大ホールでのライヴ。レーベルはCD-Rの米GNP。

この日のコンサートの記録はベルリンフィルの公式サイトのカレンダーでも確認できます。

Berliner Philharmoniker - Concert Calender - 29 April 2001

アーノンクールの演奏は天地創造の実演も聴いていますし、これまで声楽曲などを中心にいろいろ取りあげていますが、交響曲の演奏はブログをはじめた頃に簡単に取りあげたのみ。

2010/04/07 : ハイドン–交響曲 : アーノンクールの初期交響曲集
2010/02/28 : ハイドン–交響曲 : 新着! ウィーンフィルの交響曲集

今回は2001年と比較的最近、しかも相手はベルリンフィルということで、アーノンクールがベルリンフィルをどう操っているか興味津々。いつもの手兵ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスばりに刺激音炸裂なのでしょうか。

1曲目のモーツァルトの音楽の冗談から、アーノンクールやり放題(笑) テンポをかなり自在に動かし、ベルリンフィルの奏者に好き放題にやらせてます。小節がキツいのがアーノンクール流。ただ聴いていくうちにアーノンクールの術中にハマったのか、間延び寸前のテンポが妙に心地良く聴こえるようになります。最後はめちゃくちゃな不協和音にベルリンフィルハーモニーのお客さんも笑いと拍手の嵐。真の意味での遊び心炸裂を楽しんだ事でしょう。続くベートーヴェンとモーツァルトのアリアで、コミカルな音楽の正統な魅力を再認識させ、いざ最後にハイドンの熊です。アリアのフィンレイ、かなりの役者ぶりを発揮。おそらくハイドンの交響曲はコンサートの最初に演奏される事は多いものの、最後に演奏されるのはオールハイドンプログラムくらいじゃないでしょうか。

Hob.I:82 / Symphony No.82 "L'Ours" 「熊」 [C] (1786)
ここまでの演奏でオケが温まったのか、ベルリンフィルのキレの良さ炸裂です。アーノンクール流の癖はありますが、あまりにベルリンフィルの鳴りが良いので陶酔感すら感じる入り。最後のハイドンこそ古典の頂点とばかりにアーノンクールは厳かな印象も加え、ベルリンフィルもそれに万全に応えます。フィルハーモニーに響き渡る轟音、弾むリズム、音の塊が過ぎ行き静けさが訪れ、そして音塊が繰り返し襲ってきます。オケのあまりのキレの良さに聴き惚れます。正直これだけの威容で立ちはだかる熊の1楽章は初めて。アーノンクールは落ち着き払って、まるでハイドンが乗り移ったかのように純音楽的に澄みきります。フィルハーモニーにハイドンの圧倒的な音楽が満ちあふれ、ホール内が異様な迫力にのまれます。
アンダンテはすこし足早な穏やかさ。1楽章の火照りを鎮めるように進みますが、山は中間部にありました。鮮烈な響きを何度か響かせてアクセントをしっかりつけます。徐々にベルリンフィルの威力が増し、アーノンクールはテンポをダイナミックに変化させ、曲にメリハリをつけていきます。
メヌエットは予想通り小節を効かせたアーノンクール流のものですが、相手がベルリンフィルだけに、アーノンクールの意図を俊敏に察知して見事な反応。フィルハーモニーに響き渡る音塊が痛快。ホールがざわめきます。
クライマックスのフィナーレ。木管群の素晴しいプレゼンス。弦楽器群は唸るような弩迫力。カラヤン時代のような分厚いベルリンフィルを彷彿させる素晴しい合奏力。キレの良いアーノンクルールのコントロールにベルリンフィルが恐ろしい迫力で応じます。アーノンクールは要所でテンポと間を切り替え、鳴りまくるベルリンフィルを制御。ハイドンの楽譜に込められた機知に反応して、ベルリンフィルハーモニーを響きの渦に巻き込み、観客を異様な集中に放り込みます。最後はかなり大胆にリズムを変えて場内を圧倒。観客もここまで変化させてくるとは思わず、拍手が先走ります。いやいや圧倒的な演奏とはこのことでしょう。

流石アーノンクール。ベルリンフィルハーモニーをハイドンの熊で圧倒。世界最高峰のオケを自分がコントロールすれば、ハイドンでホールを圧倒できるのだと言わんばかり。トリックスターの面目躍如です。間違いなくアーノンクールの振るハイドンの交響曲のベストです。当日の観客はこの伝説的な演奏に酔いしれたことでしょう。録音で聴くと癖の目立ってしまう演奏が多いアーノンクールですが、この演奏はベルリンフィルという名オケとのライヴだけに、周到に準備して臨んだことでしょう。見事というほかありません。もちろん評価は[+++++]とします。

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