作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

灰汁のぬけたアーノンクールの天地創造新盤

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先日の記事で自分で伏線張っちゃいましたので、予定調和的にレビューになります(笑)
もちろん、10月のコンサートの予習も含んでおります。

HarnoncoourtCreationNew.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

初めて真面目にHMVのこの盤の紹介記事を読みましたが、この盤はアーノンクールの手兵、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス結成50周年として行われた2003年3月のコンサートのライヴ録音とのこと。楽団のアニヴァーサリーに演奏される曲が天地創造であることが、この曲の偉大さを物語っていますね。

アーノンクールの天地創造録音は2度目。旧盤はチェリストとして以前所属していたウィーン交響楽団と1986年4月にライヴ録音してますが、それ以来ほぼ17年ぶりの録音と言うことになります。

アーノンクールと言えば、アーノンクール節といわれるように、金管や打楽器をビックリするほど鋭角的に使ってメロディーを強調したり、タメ過ぎともおもえるくらい小節を利かせたり、かなり特徴的な演奏をする人ですが、モーツァルトなどの録音を聴く限り、歳をとるとともに、それらの鋭角さがこなれてきて、力が抜けた演奏をするようになってきたように感じていました。
ハイドンの録音では、アムステルダムコンセルトヘボウとのザロモンセットやコンツェントゥス・ムジクスとの初期交響曲集、ミサ曲集などの録音があり、つぼにはまった場合には、アーノンクール節がこちらの想像力を打ち破って見事な効果をもたらす演奏にもつながります。以前取り上げた初期交響曲集のうち、ホルン信号などがこれに当たると思います。

アーノンクールの初期交響曲集

さてさて、肝心のこの天地創造の新盤の出来はいかなるものでしょう。

冒頭からこれがライヴかとは信じられない精度の演奏。古楽器オケにも関わらず、非常にダイナミックな演奏。基調としてやはりアーノンクール節ですが、過度な鋭角性は陰をひそめ、遅めのテンポで指揮者の統制が十分行き届きながらものびのびとしたフレージングが感じられます。特に弱音部の綿密な処理と、くさびを打つように利かせるコントラストの演出が個性を際立たせています。
そしてておおらかさを表現する部分はこれも対比を際立たせるようにゆったりと。そして強奏の部分も力を抜いたアクセントの表現が多用され、以前よりも表現の幅が広がったように感じます。

歌手は粒ぞろい。ソプラノのレシュマン、テノールのシャーデ、バリトンのゲルハーエルの3人とも声質がきれいにそろっていて、また張りもあって巧いです。なかではやはりソプラノのレシュマン。ソプラノ好きなだけかもしれません(笑)

この盤の聴き所は歌手やコーラスを含めた演奏の精度でしょう。歌手の歌もコーラスも楽器の一部というような位置づけに聴こえます。確かにオケは非常に巧い。昨日のテンシュテット盤などと比較すると、パートの一人一人までフレーズのコントロールが行き届いて、アンサンブルの美しさが楽しめます。
そうゆう意味ではマクロ的なというか俯瞰的視点で楽しむ演奏というよりは、ミクロ的、ディティールを楽しむ演奏なのかも知れません。
アーノンクールの感心も、オケやコーラスのフレージング、ダイナミクス、音色の維持などディティールに注がれているような気がします。

古楽器の天地創造は近年、ずいぶんリリースされていますが、この演奏も代表的なものの一つであることは間違いありません。先日取り上げたマクリーシュ、クリスティなどもありますが、私自身の好みから言えば、古楽器の演奏としてはクリスティがファーストチョイスとして相応しいものでしょう。

アーノンクール盤は、良い意味でも悪い意味でもアーノンクールの強烈な個性を前提とした演奏。万人に薦められる個性というまで磨き上げられたものというには少し違うような気もします。
個性的ではない演奏というのはあまり評価していませんが、ハイドンと言う作曲家の最高傑作の演奏であることを考えると、曲の良さを素直に楽しめることも重要だと思います。

評価はこれまでと変わらず[++++]としています。

10月のライヴを聴くことで、この評価は変わることになるんでしょうか。
いろいろ考えて書いてますが、所詮個人の好みの延長。いろんな経験ですぱっと変わったりしますので(笑)
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