アンヌ・ケフェレックのピアノ協奏曲XVIII:4(ハイドン)

最近ディスクユニオンで見つけたLPです。香りたつようなケフェレックのピアノが味わえる名演奏。

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アンヌ・ケフェレック(Anne Queffélec)のピアノ、アルマン・ジョルダン(Armin Jordan)指揮のローザンヌ室内管弦楽団(Orchestre de Chamble de Lausanne)の演奏で、ハイドンのピアノ協奏曲2曲(Hob.XVIII:11、XVIII:4)を収めたLP。収録は1981年11月、スイス、ローザンヌのカジノ・ド・モンブノン(Casino de Montbenon)でのセッション録音。

ケフェレックはラ・フォル・ジュルネで一度コンサートも聴いていますし、アルバムは過去に2度取り上げています。今日取り上げるアルバムに収録されているXVIII:11の方は取り上げ済みですので、今日のレビュー対象はXVIII:4のみなんですが、これが素晴らしいんですね、はい。

2014/05/06 : コンサートレポート : トリオ・カレニーヌのピアノトリオ(ハイドン)、アンヌ・ケフェレックの「ジュノム」(ラ・フォル・ジュルネ)
2013/04/03 : ハイドン–協奏曲 : アンヌ・ケフェレック/アルマン・ジョルダンのピアノ協奏曲(XVIII:11)
2011/02/06 : ハイドン–ピアノソナタ : アンヌ・ケフェレックのピアノソナタ集(ハイドン)

ケフェレックについてはソナタ集の記事をご参照ください。

Hob.XVIII:4 Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [G] (c.1770)
ローザンヌ室内管の室内楽的なタイトな響きの序奏から入ります。ケフェレックは最初タッチがちょっと重いように感じますが、すぐに独特の香りを放ちます。LPらしい実体感のある響きのせいもありますが、実に華麗で輝かしいピアノの高音域の音色が特徴的。この曲独特のピアノとオケのやりとりはケフェレックのタッチでエキセントリックな魅力が強調されます。この楽章でこれだけ豊かなニュアンスが滲むのが素晴らしいところ。アルマン・ジョルダンのコントロールも各パートがクッキリと浮かび上がる精緻なもので、ケフェレックのクリアなピアノと見事な相性。カデンツァはロベール・ヴェイロン=ラクロワのもので、短いながらエスプリの効いたもの。1楽章は落ち着きながら香り高さを印象付けました。
さらに素晴らしいのが続く2楽章。落ち着いてゆったりと紡がれるケフェレックのピアノに独特の詩情が宿ります。この楽章ではオケは完全に脇役に徹します。叙情的なのではなく険しさを伴うような緊張感を保ちながら、輝きに満ちたメロディーを淡々と置いていく感じ。カデンツァに入ると、輝きのニュアンスが微妙に次々と変化ていきます。
そして鮮やかに決めるべきフィナーレは、鮮やかのみならず、堂々とした迫力と、鮮明なタッチを余裕を持って感じさせる見事なもの。途中で音色の硬軟をさらりと変えてくるあたりのタッチの細やかさも印象づけます。オケとの息もピタリと合って精妙なアンサンブルの魅力を披露。終始ケフェレックが引っ張り、ジョルダンが一歩引いて支える構図。

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ケフェレックは1948年生まれでなので、この演奏時は33歳くらい。この若さでオケをも凌ぐ存在感は見事。独特の陰影のある芳香を放ち、しかもオケを完全にリードして自分の世界をしっかりと描く類まれな音楽性を持ち合わせていることに驚きます。ハイドンの協奏曲が完全にフランスの香りに包まれてしまいました。そして、ジョルダンも器の大きさで聴かせる見事なサポート。ハイドンの協奏曲の多様な面白さを引き出した名演と言っていいでしょう。この曲はCDとしてリリースされているのは見たことがありませんので、このLP、貴重なものかもしれませんね。評価は[+++++]とします。



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tag : ピアノ協奏曲XVIII:4

【新着】ハンス・スワロフスキーBOXから交響曲3曲(ハイドン)

ちょっと気になっていた箱物が入荷。

SwarowskyBox.jpg
TOWER RECORDS / amazon(mp3) / HMV&BOOKS onlineicon

ハンス・スワロフスキー(Hans Swarowsky)の現在入手困難になっている音源を復刻した11枚組のCD。この中のCD1にハイドンの交響曲が3曲収められています。ハイドンの演奏のデータは以下の通り。
・交響曲70番 ウィーン・アカデミー室内管弦楽団(Akademie Kammerorchester Wien) 収録:1952年
・交響曲93番 ケルン放送交響楽団(Kölner Rundfunk-Sinfonie-Orchester) 収録:1962年2月8日–10日
・交響曲100番「軍隊」 ウィーン交響楽団(Wiener Symphoniker) 収録:1956年5月3日ムジークフェライン
レーベルは独Profil。

スワロフスキーについては、先月末にちょっと怪しいLPを取り上げたばかり。

2019/11/28 : ハイドン–交響曲 : ハンス・スワロフスキー/ウィーン響の「悲しみ」(ハイドン)

アルバムに記載された情報の信頼性が低い中、スワロフスキーだったらこう振ってくるだろうととイメージした演奏と比較して模索しながら聴いた次第。そのイメージがどれほど実際にスワロフスキーの実演に近いか確認する意味もあって、このアルバムを取り上げた次第。今回入手したアルバムはちゃんとしたレーベルなので信頼性は問題ないでしょう(笑) 

Hans Swarowsky

前の記事で紹介したスワロフスキー・アカデミーのサイトにもあこの11枚組CDのリリースがニュースとして掲載されていました。スワロフスキーは1899年生まれということで、このアルバムは生誕120周年ということで企画されたものとのこと。私はもちろんハイドン目当てで手に入れたのですが、ハイドン以外の収録内容もかなり魅力的。グルダとのモーツァルトのコンチェルト、ベルリン交響楽団とのマーラーの3番、ケルン放送響とのリヒャルト・シュトラウス、それにヨハン/ヨゼフ・シュトラウスのワルツなど食指をそそられるものばかり。詳しくはリンク先のTOWER RECORDSのページをご覧ください。

Hob.I:70 Symphony No.70 [D] (before 1779)
予想通り揺るぎない構築感に満ちた入り。音質は50年代初めとしてはそれほど悪くありません。オケは精度はほどほどですが、整然とみなぎる構築感で見事に統率が取れています。どこにも隙のない正統派の楷書体の演奏にこちらが襟を正すほど。
続くアンダンテは、さらっとした演奏。無理にメリハリをつけず音楽自体に自然体で語らせる演奏。
そして、メヌエットも堅固。これぞハイドン。全く迷いなく説得力に満ちた素晴らしい迫力。そして中間部でグッと手綱を緩めて癒しの一間。再び力感溢れるリズムの連打。
フィナーレはメヌエットを上回る構築感。フーガが展開しながら堅固な城郭の扉を次々と開け、天守に至る道程のような演奏。やはり、この力みは皆無の構築感とハイドンの演奏の王道を行くような正統的なコントロールはスワロフスキーならでは。見事です。

Hob.I:93 Symphony No.93 [D] (1791)
続いて93番。前曲より10年録音が新しい分、音は鮮度が上がり、演奏も精度が上がって、スワロフスキーらしい正統的な演奏で、まさにオーソドックスな演奏。力感が目立つというより、全体のバランスの揺るぎなさ、完成度で聴かせる演奏。緊密に書かれた1楽章の終盤にかけて徐々に盛り上げてく設計の確かさはまさに教科書通り。教科書的演奏にありがちな単調さは微塵も感じさせず、むしろスリリング。この辺りがスワロフスキーの素晴らしいところ。この完成度がアバドに引き継がれているような気がします。
続く2楽章は1楽章よりもザックリとしたオケの響きを目立たせ、劇性を強調。この楽章の本質的な聴かせどころを汲みとったということでしょう。
メヌエットは一貫したテンポでオケが気持ちよく吹き上がります。このオーソドックスな安定感と強奏でも力みのない響きはスワロフスキーならでは。そしてフィナーレも落ち着き払ってじっくりと料理。クライマックスも安定感抜群。ハイドンの音楽の美点を知り尽くした、定番の見事な料理。あまりの余裕のたっぷりさから滲み出る風格で聴かせ切ってしまいます。完璧です。

Hob.I:100 Symphony No.100 "Military" 「軍隊」 [G] (1793/4)
最後は軍隊。ちなみに軍隊にはウィーン国立歌劇場管弦楽団との同じく1956年の録音がTAXEDOからリリースされ、レビューもしています。一応念のために先のスワロフスキーアカデミーのサイトのディスコグラフィーで確認すると、、、なんと今回リリースされたCDはウィーン交響楽団と表記されているにもかかわらず、TUXEDO版と同一音源として整理されているではありませんか、、、(驚) 収録時間を見ると1楽章が、8'53(Profil)と6’59(TUXEDO)とだいぶ異なる他はProfilが各楽章2〜3秒長いだけ。1楽章の繰り返しの省略だけの違いかもしれません。いやいやスワロフスキーの演奏情報は錯綜してます(苦笑)
気を取り直して聴いてみると、やはり同じ音源のようです。若干Profil盤の方が音の鮮度が良いように聞こえる程度。今回手に入れたProfil盤ですが、1956年5月3日と収録年月日まで記載されており、収録場所もムジークフェラインとあり、情報が具体的です。念のためウィーンフィルのコンサート履歴を調べてみると、1956年の4月27日の夜まではヒンデミットの指揮で日本ツアー、28・29日はウィーンでベーム指揮のコンサート、5月7日からはクーベリック、クリュイタンスの指揮でロンドンでコンサートとなっており、5月3日前後はコンサートのスケジュールは入っていません。ウィーン交響楽団の方はは5月3日当日は夜ハインリッヒ・ホルライザーの指揮でコンツェルトハウスでコンサートが行われていますが、その1週前の4月27日にはスワロフスキーがムジークフェラインでベートーヴェン、モーツァルト、シューマンなどを振っています。私の想像では、収録目的で、ウィーン国立歌劇場管弦楽団とウィーン交響楽団の空いているメンバーがムジークフェラインに集められてこの軍隊の収録が行われ、既発売のLPやCDはネームバリューのあるウィーン国立歌劇場管として表記し、今回のProfil盤は実際は主要メンバーがウィーン交響楽団だったことから、そちらの名をとったということではないかと。断っておきますが、単なる私の想像です(笑) ということで、演奏評は以前の記事の方をご覧ください。ちなみにこの軍隊も素晴らしい演奏です。

なんだか、怪しいLPの曖昧さを払拭するつもりで取り上げたものが、払拭するどころか、軍隊に至って依然霞の中的状況のままになってしまいました。しかしながら、70番と93番はスワロフスキーの面目躍如。特に今回聴いた93番は国宝級の逸品だと思います。ご存知の通り私の93番の一推しは鋼のような弦がキレまくるカレル・アンチェル盤ですが、これは外連味たっぷりの爆演盤。スワロフスキーの93番は寺社建築における法隆寺、彫刻におけるミケランジェロ、ジャズにおけるマイルスのような、その分野の頂点のような存在。ハイドンの交響曲の最もの正統的かつ気高い演奏と言えるものでしょう。もちろん、3曲とも[+++++]といたします。

残りの10枚、順に聴いてみたいと思います。



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ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

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登録曲数:1,365
登録演奏数:11,529
(2019年3月31日)
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