【新着】ハンス・スワロフスキーBOXから交響曲3曲(ハイドン)

ちょっと気になっていた箱物が入荷。

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ハンス・スワロフスキー(Hans Swarowsky)の現在入手困難になっている音源を復刻した11枚組のCD。この中のCD1にハイドンの交響曲が3曲収められています。ハイドンの演奏のデータは以下の通り。
・交響曲70番 ウィーン・アカデミー室内管弦楽団(Akademie Kammerorchester Wien) 収録:1952年
・交響曲93番 ケルン放送交響楽団(Kölner Rundfunk-Sinfonie-Orchester) 収録:1962年2月8日–10日
・交響曲100番「軍隊」 ウィーン交響楽団(Wiener Symphoniker) 収録:1956年5月3日ムジークフェライン
レーベルは独Profil。

スワロフスキーについては、先月末にちょっと怪しいLPを取り上げたばかり。

2019/11/28 : ハイドン–交響曲 : ハンス・スワロフスキー/ウィーン響の「悲しみ」(ハイドン)

アルバムに記載された情報の信頼性が低い中、スワロフスキーだったらこう振ってくるだろうととイメージした演奏と比較して模索しながら聴いた次第。そのイメージがどれほど実際にスワロフスキーの実演に近いか確認する意味もあって、このアルバムを取り上げた次第。今回入手したアルバムはちゃんとしたレーベルなので信頼性は問題ないでしょう(笑) 

Hans Swarowsky

前の記事で紹介したスワロフスキー・アカデミーのサイトにもあこの11枚組CDのリリースがニュースとして掲載されていました。スワロフスキーは1899年生まれということで、このアルバムは生誕120周年ということで企画されたものとのこと。私はもちろんハイドン目当てで手に入れたのですが、ハイドン以外の収録内容もかなり魅力的。グルダとのモーツァルトのコンチェルト、ベルリン交響楽団とのマーラーの3番、ケルン放送響とのリヒャルト・シュトラウス、それにヨハン/ヨゼフ・シュトラウスのワルツなど食指をそそられるものばかり。詳しくはリンク先のTOWER RECORDSのページをご覧ください。

Hob.I:70 Symphony No.70 [D] (before 1779)
予想通り揺るぎない構築感に満ちた入り。音質は50年代初めとしてはそれほど悪くありません。オケは精度はほどほどですが、整然とみなぎる構築感で見事に統率が取れています。どこにも隙のない正統派の楷書体の演奏にこちらが襟を正すほど。
続くアンダンテは、さらっとした演奏。無理にメリハリをつけず音楽自体に自然体で語らせる演奏。
そして、メヌエットも堅固。これぞハイドン。全く迷いなく説得力に満ちた素晴らしい迫力。そして中間部でグッと手綱を緩めて癒しの一間。再び力感溢れるリズムの連打。
フィナーレはメヌエットを上回る構築感。フーガが展開しながら堅固な城郭の扉を次々と開け、天守に至る道程のような演奏。やはり、この力みは皆無の構築感とハイドンの演奏の王道を行くような正統的なコントロールはスワロフスキーならでは。見事です。

Hob.I:93 Symphony No.93 [D] (1791)
続いて93番。前曲より10年録音が新しい分、音は鮮度が上がり、演奏も精度が上がって、スワロフスキーらしい正統的な演奏で、まさにオーソドックスな演奏。力感が目立つというより、全体のバランスの揺るぎなさ、完成度で聴かせる演奏。緊密に書かれた1楽章の終盤にかけて徐々に盛り上げてく設計の確かさはまさに教科書通り。教科書的演奏にありがちな単調さは微塵も感じさせず、むしろスリリング。この辺りがスワロフスキーの素晴らしいところ。この完成度がアバドに引き継がれているような気がします。
続く2楽章は1楽章よりもザックリとしたオケの響きを目立たせ、劇性を強調。この楽章の本質的な聴かせどころを汲みとったということでしょう。
メヌエットは一貫したテンポでオケが気持ちよく吹き上がります。このオーソドックスな安定感と強奏でも力みのない響きはスワロフスキーならでは。そしてフィナーレも落ち着き払ってじっくりと料理。クライマックスも安定感抜群。ハイドンの音楽の美点を知り尽くした、定番の見事な料理。あまりの余裕のたっぷりさから滲み出る風格で聴かせ切ってしまいます。完璧です。

Hob.I:100 Symphony No.100 "Military" 「軍隊」 [G] (1793/4)
最後は軍隊。ちなみに軍隊にはウィーン国立歌劇場管弦楽団との同じく1956年の録音がTAXEDOからリリースされ、レビューもしています。一応念のために先のスワロフスキーアカデミーのサイトのディスコグラフィーで確認すると、、、なんと今回リリースされたCDはウィーン交響楽団と表記されているにもかかわらず、TUXEDO版と同一音源として整理されているではありませんか、、、(驚) 収録時間を見ると1楽章が、8'53(Profil)と6’59(TUXEDO)とだいぶ異なる他はProfilが各楽章2〜3秒長いだけ。1楽章の繰り返しの省略だけの違いかもしれません。いやいやスワロフスキーの演奏情報は錯綜してます(苦笑)
気を取り直して聴いてみると、やはり同じ音源のようです。若干Profil盤の方が音の鮮度が良いように聞こえる程度。今回手に入れたProfil盤ですが、1956年5月3日と収録年月日まで記載されており、収録場所もムジークフェラインとあり、情報が具体的です。念のためウィーンフィルのコンサート履歴を調べてみると、1956年の4月27日の夜まではヒンデミットの指揮で日本ツアー、28・29日はウィーンでベーム指揮のコンサート、5月7日からはクーベリック、クリュイタンスの指揮でロンドンでコンサートとなっており、5月3日前後はコンサートのスケジュールは入っていません。ウィーン交響楽団の方はは5月3日当日は夜ハインリッヒ・ホルライザーの指揮でコンツェルトハウスでコンサートが行われていますが、その1週前の4月27日にはスワロフスキーがムジークフェラインでベートーヴェン、モーツァルト、シューマンなどを振っています。私の想像では、収録目的で、ウィーン国立歌劇場管弦楽団とウィーン交響楽団の空いているメンバーがムジークフェラインに集められてこの軍隊の収録が行われ、既発売のLPやCDはネームバリューのあるウィーン国立歌劇場管として表記し、今回のProfil盤は実際は主要メンバーがウィーン交響楽団だったことから、そちらの名をとったということではないかと。断っておきますが、単なる私の想像です(笑) ということで、演奏評は以前の記事の方をご覧ください。ちなみにこの軍隊も素晴らしい演奏です。

なんだか、怪しいLPの曖昧さを払拭するつもりで取り上げたものが、払拭するどころか、軍隊に至って依然霞の中的状況のままになってしまいました。しかしながら、70番と93番はスワロフスキーの面目躍如。特に今回聴いた93番は国宝級の逸品だと思います。ご存知の通り私の93番の一推しは鋼のような弦がキレまくるカレル・アンチェル盤ですが、これは外連味たっぷりの爆演盤。スワロフスキーの93番は寺社建築における法隆寺、彫刻におけるミケランジェロ、ジャズにおけるマイルスのような、その分野の頂点のような存在。ハイドンの交響曲の最もの正統的かつ気高い演奏と言えるものでしょう。もちろん、3曲とも[+++++]といたします。

残りの10枚、順に聴いてみたいと思います。



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tag : 交響曲70番 交響曲93番 軍隊 ヒストリカル

【新着】バルト・ファン・レイン/ル・コンセール・ダンヴェルの交響曲80、81番(ハイドン)

続いて新着アルバムから。

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バルト・ファン・レイン(Bart Van Reyn)指揮のル・コンセール・ダンヴェル(Le Concert d'Anvers)の演奏で、ハイドンの交響曲80番、ピアノ協奏曲(Hob.XVIII:11)、交響曲81番の3曲を収めたCD。フォルテピアノの独奏はリュカス・ブロンデール(Lucas Blondeel)。収録は2016年8月27日、28日、ケルンの南にあるブリュール(Brühl)という街の聖マルガリータ教会(St. Margaretakirche)でのセッション録音。レーベルはouthere MUSICグループのFUGA LIBERA。

指揮者もオケもはじめて聴きます。指揮のバルト・ファン・レインは合唱指揮の出身。1981年ブリュッセル生まれで、アントワープ王立音楽院で合唱指揮を、ブリュッセル王立音楽院でオーケストラの指揮を、ハーグ王立音楽院で古楽を学び、当初はベルニウス率いるシュツットガルト室内合唱団のメンバーとして多くの録音に参加。その後合唱指揮者として活躍し、デンマークを中心に多くの合唱団を指揮。2012年にこのアルバムのオケであるル・コンセール・ダンヴェルを創設して活動しているとのこと。

フォルテピアノを弾くリュカス・ブロンデールもベルギーの人。以前ソナタ集のアルバムを取り上げていますので、略歴などはそちらをご覧ください。

2013/03/10 : ハイドン–声楽曲 : リースベト・ドフォス/リュカス・ブロンデールの「ナクソスのアリアンナ」など

このアルバム、調べてみるとおそらくバルト・ファン・レイン指揮のル・コンセール・ダンヴェルのデビュー盤でしょう。しかも選曲が渋い。ハイドンの交響曲でも80番、81番を最初に録音するとは、かなりの渋さ。激渋です(笑) 間に挟まれたピアノ協奏曲はハイドンの曲の中では一番演奏機会の多いものですが、交響曲と同時期である1784年ごろの作曲。ということでこのアルバムは1784年という、交響曲ではパリセットで一気に創作期の頂点に向かう直前に焦点を当てた選曲なんですね。解説をさらってみると、この頃にハイドンの交響曲作品がヨーロッパで出版され始め、それまでエステルハージ家のために書いていた作品がより広い聴衆に向けて書かれるようになりつつあったとのこと。これまで、パリセットの直前の曲ということでイマイチマイナーな存在だったこれらの作品に歴史的なパースペクティブの中でフォーカスしたなかなか本格的な企画ということになり、デビュー盤とはいえ企画意図は鮮明なものです。

しかも、演奏は極上です。

Hob.I:80 Symphony No.80 [d] (1784)
古楽器オケのバランスの良い響きが心地よい入り。バルト・ファン・レイン、相当耳の良い人との印象です。オケの響きが非常に美しい。教会での録音ですが残響は適度で、ハイドンの交響曲の端正な造形を絶妙なバランスで保ち、リズムもキレよく、短調の勢い良い入りながら端正なフォルムを描きます。オケが心地よく教会堂に響き渡る快感を味わえます。
アダージョに入っても響きの美しさは一貫しています。岩清水のような清らかさ。クセのないフレージングと透明感ある響きがそう感じさせるのでしょう。このハーモニーの透明感は合唱指揮で叩き上げた技かもしれませんね。しなやかなフレーズは各楽器の音色と音量が非常に緻密にコントロールされているからでしょう。
メヌエットは穏やかながらフレーズごとの表情の微妙な変化が巧みで、爽やかなのに実に濃い音楽が流れます。
フィナーレは非常にデリケートなフレージングで入り、すぐにめくるめくように盛り上がる楽しい曲調ですが、メヌエット同様、この表情付けが非常に巧みで痛快そのもの。優れたハイドンの交響曲の演奏が皆そうであるように力みは皆無。この軽さと爽やかこそハイドン。見事。

Hob.XVIII:11 Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [D] (1784)
今までこの並びで聴いたことがなかったので、実に新鮮。この爽やかさ、前曲の余韻と調和して見事な繋がり。早いパッセージの爽やかさはバルト・ファン・レインならでは。ピアノで演奏されることが多い曲で、フォルテピアノの入りはちょっと音量不足気味に聴こえなくはないですが、聴き進むと逆にフォルテピアノのキレのいい音階がさらに爽やかさを強調するようで、これはこれでいい組み合わせ。ソロとオケが見事に噛み合って、協奏曲として火花を散らすというよりアンサンブルの見事さを狙っているよう。前曲同様、オケは極上、そしてフォルテピアノはキレキレで痛快極まりない素晴らしい。極上の録音で聴く極上の演奏にとろけそう。この演奏で聴くとモーツァルトのコンチェルト以上に華麗な響きを楽しめます。カデンツァも古典的な曲調を見事なテクニックで披露。
期待の2楽章は入りから絶美。ここではオケは裏方にまわり、ブロンデールの雄弁な表現力を際立たせます。古楽器らしく流れよりもリズムの刻みを若干強調することで、叙情に流れがち音楽が引き締まります。この楽章のカデンツァへの入りとオケへの引き継ぎの自然さが秀逸。ゾクゾクします。
フィナーレは期待通り極上。ブロンデールのタッチのキレは最高。オケが柔らかく雄大に響いて実に心地よい響き。最高。

Hob.I:81 Symphony No.81 [G] (1784)
またまた、全曲の余韻といい繋がり。湧き上がるオーケストラの美音。めくるめくような音の狂宴。このワクワク感の演出は見事。奏者全員がノッてます。古典の枠組みの中で音を楽しむという本来のあるべき姿を求めたような音楽。ハイドンの音楽の楽しさを理想的に実現したような素晴らしい演奏。この曲を書くときのハイドンの心境を共有したような気分に浸れます。ウィーンやヨーロッパの聴衆が熱狂したことがよくわかります。
続くアンダンテもしっとりとしたメロディーをバルト・ファン・レインが極上に仕立ててきます。メロディーを描くフルートの音色が実に美しい。中間部の鮮烈な響きも落ち着きがあってバランスを保ちます。
メヌエットは音楽自体に語らせるように、表情を抑えて入りますが、中間部のメロディーの朗らかさを引き立てるためでした。節度ある微妙な変化が聴き手の脳を刺激します。そしてフィナーレはやはりこのオケのバランスの良い巧さが光ります。よく聴くと弦のボウイングにもかなりの表情があり、緻密にコントロールされた快活さであることがわかります。

いやいや、これは素晴らしいアルバムです。一見創作期の谷間に見える時期の作品ではありますが、このアルバムの演奏で聴くと、パリセット以降の作品に劣るどころか、ハイドンの創作の変化とハイドンらしい晴朗な構成感を味わえる佳作であることがよくわかります。演奏のレベルは非常に高く、しかも個性で押し通すような演奏ではないため、ハイドンの作品を極上の味つけで味わえる王道を行くもの。交響曲の2曲は比較的録音が少ない中、キラリと光る名盤と言っていいでしょう。協奏曲の方も古楽器によるベスト盤と断じます。ということで評価は全曲[+++++]といたします。おすすめです!

これは、更なる録音を期待せざるを得ません。



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tag : 交響曲80番 交響曲81番 ピアノ協奏曲XVIII:11

ハンス・スワロフスキー/ウィーン響の「悲しみ」(ハイドン)

11月も月末が近くなってまいりましたが、旅行記にかまけて、肝心のハイドンのレビューが停滞しておりました。本記事より正常化いたしますが、ネタはちょっと訳ありのLPです。

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ハンス・スワロフスキー(Hans Swarowsky)指揮のウィーン交響楽団の演奏で、ハイドンの交響曲44番「悲しみ」などを収めたLP。収録に関する情報は記載されておらず、LPのレーベルにPマークが1974年とあるのみ。レーベルはニューヨークのOLYMPIC RECORDS。

スワロフスキーのハイドンはなかなかいい演奏があり、そのスワロフスキーが「悲しみ」振ったものということで、最近オークションで手に入れたLPですが、ちょっと怪しげなLPです。LPに書かれた収録内容は以下の通り。

HAYDN:
・Symphony No.44 (Funeral)
・Italian Overture
・Trumpet Concerto
HANS SWAROWSKY conducting The Vienna Symphony Orchestra

音盤を入手すると、まずはざっと聴いて所有盤リストに登録するのですが、トランペット協奏曲にソリストの表記がありません。ちょっと調べてみたところトランペット協奏曲は手元にあるTUXEDOのCDと同じ演奏。演奏時間もほぼ同一です。TUXEDO盤はソリストがウィーンフィルのアドルフ・ホラー(Adolf Holler)でオケはウィーン響ではなくウィーン国立歌劇場管弦楽団。ついでにItarian Overtureと書かれた方も同盤の序曲(Hob.Ia:4)と同演奏。Discogsを調べるとこの演奏が色々なレーベルからリリースされていますので、このLPの表記はおそらくウィーン国立歌劇場管弦楽団の間違いでしょう。

LPのB面に収められた曲の表記がちょっと間違っているというのは、まあありそうなこと。問題は、冒頭に置かれたアルバムのメインになる「悲しみ」です。まず驚いたのが、交響曲44番と書かれていますが、収録されているのは交響曲44番とヴァイオリンとピアノのための協奏曲(Hob.XVIII:6)の2曲なんですね。レーベル面の表記は交響曲44番のPart1が交響曲全曲、Part.2が協奏曲の1楽章、盤をひっくり返してPart.3が協奏曲の2、3楽章なんですね。

このようにこのアルバムの表記は相当適当です。このLPのOLYMPIC RECORDSというレーベルの信頼性にも関わる適当さ。そこで、Discogsでこのレーベルがリリースしているアルバムを調べてみると、クラシック以外も色々あり、クラシックはThe Classical Collection、The Opera Collectionというシリーズが1973年から75年くらいまでにかなりの枚数がリリースされています。このアルバム自体は掲載されていません。それ以上のことはあまりよくわかりません。

そこで今度はスワロフスキーのディスコグラフィーを探すと、ありました。しかも由緒正しいものです。

Hans Swarowsky

ハンス・スワロフスキーアカデミーのウェブサイトです。

ご存知の通り、ハンス・スワロフスキーは指揮者としても有名ですが、指導者としての方が有名ですね。師事した指揮者はアバド、メータ、ヤンソンス、ワイルなど楽壇のトップクラスがずらり。このアカデミーのプレジデントはなんと、マンフレート・フス。そして名誉総裁はついこの間、ベルリンフィルと来日したズビン・メータです。このサイトは、スワロフスキーの偉業を称える情報が盛り沢山。ディスコグラフィー、コンサート記録、コンサートプログラム、写真、手紙などが全て整理されて掲載されています。

肝心のディスコグラフィーで作曲家別のハイドンのページにはこのアルバムが掲載されていました。しかも、トランペット協奏曲などもウィーン交響楽団とのアルバムの表記のまま掲載されています。また「悲しみ」の方も同様。オフィシャルサイトが掲載していますが、ヴァイオリンとピアノ協奏曲には触れていませんので、中身を検証しての掲載ではないでしょう。

ということで、このアルバムの「悲しみ」について、確たる情報は見つかりませんでした。果たして、スワロフスキーがウィーン交響楽団を振ったものなのでしょうか。録音があるということはコンサートでも取り上げているケースも多いと思い、コンサート記録を探してみることにしました。

そこで、ウィーン交響楽団のウェブサイトをみると、なんと、1900年以降の全てのコンサートの記録が検索できるではありませんか! そこで"Swarowsky Haydn"で検索すると36件の記録があります。残念ながら「悲しみ」やヴァイオリンとピアノのための協奏曲が演奏された記録はありませんでしたが、スイトナーがピアノを弾いた協奏曲(Hob.XVIII:11)や86番の演奏があるなど今から思うと夢のようなプログラムがならび、しばしうっとり(笑)

トランペット協奏曲と同様、ウィーンフィル(ウィーン国立歌劇場管弦楽団)の演奏である可能性も捨てきれないということで、ウィーンフィルのウェブサイトで同様の検索をすると、2件の記録があり、こちらも「ロンドン」と「雌鳥」のみでした。

色々調べた割には裏は取れず仕舞い。

私の想像というか仮説は、「悲しみ」はウィーン交響楽団のとの演奏で、穴埋めに既出のウィーン国立歌劇場管とのトランペット協奏曲を差し込み、あんまり詳しい情報を載せず、ウィーン交響楽団とだけ記載したとの説。隠し球のヴァイオリンとピアノのための協奏曲もウィーン交響楽団との録音で、担当者が曲名が分からなかったので苦肉の策で、交響曲の一部と誤魔化して収録したというものです。上司からシリーズの拡大を急かされた担当者のやっつけ仕事説です。

色々調べても確たることはわからずですが、色々想像して調べることは楽しいです(笑) どなたかこの演奏について情報がある方がいらっしゃいましたら、是非お知らせいただきたいものです。

ということで肝心の演奏です。ここまで調べてわざわざ取り上げたのは、もちろん演奏が素晴らしいからに他なりません。

Hob.I:44 Symphony No.44 "Trauer" 「悲しみ」 [e] (before 1772)
針を落とすとそれなりに鮮明でみずみずしい音が聴こえてきますが、若干ピークがびりつき気味。これはアルバムのコンディションの問題でしょう。演奏は非常に彫刻的なフォルムの美しい演奏。1楽章の入りのテンポは心地よい速さ。この端正なバランスの良いフォルムはスワロフスキーが振っているのではと思わせます。この時期のハイドンの曲に特有の憂いを帯びた響きが素晴らしいですね。
メヌエットは端正そのもの。どこにも隙なく揺るぎないながら、響きには素朴さが漂い、完璧な演奏。それによって中間部でのしなやかさが際立つ見事な演奏。
素晴らしいのは3楽章のアダージョ。なんという癒しに満ちたフレージング。ゆったりと刻まれる音楽ですが、おおらかな起伏が実に心地よい。時に光が射し、時に陰り、琴線に触れられる美しすぎる音楽が流れます。最後にさらにゆったりとテンポを落として終わりったかと思うと、実に自然に険しい響きのフィナーレに移ります。現代の機能的なオケとは異なり、アンサンブルがキレキレな訳ではありませんが、音楽としての堅固さと、やはり彫刻的なフォルムの端正さから生み出される味わい深い迫力が見事。いやいや、これは絶品です。

Hob.XVIII:6 Concerto per violino, cembalo e orchestra [F] (1766)
続く、ヴァイオリンとピアノのための協奏曲もフォルムの端正さは変わらず。ヴァイオリンとハープシコードのソロはかなりの腕前。特にヴァイオリンの艶やかで存在感のある音色は印象的。音だけで奏者を当てられられるほどの耳と知見は持ち合わせておりませんので、想像の余地があることを楽しみながら聴くことにしました。こちらも2楽章が素晴らしいんですね。ヴァイオリンの美音にもう、夢見心地。古き良き時代の素晴らしい音楽に酔いしれます。ハープシコードは控えめなんですが、それがなんとも奥ゆかしい。

レビューでしっかりと聴き込んでみると、私の仮説通りに違いないとの確信を得ました。が、これは私が思っているだけで、全く違う奏者の演奏である可能性も捨てきれません。ただしハンス・スワロフスキーアカデミーのサイトにも掲載された演奏ということで、多少の説得力はあるかもしれませんね。もちろんこの2曲の演奏は[+++++]といたします。所有盤リストには録音年不明で掲載しました。

(参考)
2017/05/05 : ハイドン–交響曲 : ハンス・スワロフスキーの交響曲集(ハイドン)



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tag : 悲しみ トランペット協奏曲 ヴァイオリンとピアノのための協奏曲XVIII:6

【新着】イヴァン・イリッチのピアノによる交響曲集(ハイドン)

しばらくメジャー系のアルバムを取り上げていましたが、そろそろマイナー系が恋しくなってきました(笑)

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イヴァン・イリッチ(Ivan Ilić)のピアノによる、ハイドンの交響曲92番「オックスフォード」、75番、44番「悲しみ」の3曲を収めたアルバム。収録は2019年2月28日から3月2日にかけて、イングランドのロンドン北西の海沿いの街、サフォーク(Suffolk)のポットン・ホール(Potton Hall)でのセッション録音。レーベルは英CHANDOS。

ハイドンの交響曲をピアノで演奏したアルバムは、今までにも何枚か聴いていますが、いずれも2楽章など単一楽章を演奏したものばかり。ハイドンのピアノソナタ全集を録音した、ヤンドーやデルジャヴィナなどのものが知られていますが、4楽章をフルにピアノで演奏したものを聴くのは私ははじめて。確認のため所有盤リストを検索してみると、やはり手元にはありませんでした。収録曲も、オックスフォードや悲しみなどよく知られた曲に混じって75番という超マイナー曲が含まれているのが気になります。ということで、これは非常に珍しいアルバムであると言っていいでしょう。

演奏してるイヴァン・イリッチもはじめて聴く人。それもそのはず、このアルバムが彼の5枚目のアルバムで、前4枚はゴドフスキー、モートン・フェルドマン、アントン・ライヒャなど知る人ぞ知る作曲家の作品を再発見に近い形で取り上げるというコンセプトのアルバムばかりです。今回リリースされたのは、作曲家こそメジャーなハイドンですが、名曲の宝庫であるソナタではなく、これまた知る人ぞ知る、交響曲のピアノ版という超変化球を投げてきました。この人、相当マニアックです(笑)

そのピアノ独奏版への編曲(トランスクリプション)は、ドイツの音楽家カール・ダーヴィト・シュテークマン(Carl David Stegmann)によるもの。シュテークマンはハイドンより19歳若く、1751年の生まれで、テノール歌手、オルガン奏者、指揮者、作編曲家として活躍した人とあります。そしてこのアルバムの3曲は全曲世界初録音とのこと。

このような編曲が行われた背景がライナーノーツの触りに記載されていました。ハイドンが活躍していた時代には録音もラジオもなかったため、音楽愛好家にとって曲を知ったり深く理解する唯一の方法は原曲をメロディーやハーモニーをほぼそのまま他の楽器、例えば多くの人が演奏できるピアノ向けに編曲して演奏することがだったとのこと。当時ヨーロッパで絶大な人気を誇ったハイドンの交響曲がピアノ独奏版に編曲されるニーズがあったのは想像に難くないでしょう。現在では数多の録音が流通しているため、こうした原曲のまま他の楽器に移し替えるというニーズはなくなりつつありますが、そうした背景を知ってこの録音を聴くことで、このピアノ独奏版の交響曲という特殊な演奏の深みを味わうことができそうです。

と、ここまで書いて思い出しましたが、そういえばデニス・ラッセル・デイヴィスと滑川真希の連弾による天地創造と四季のアルバムをだいぶ前に取り上げましたね。

2010/09/13 : ハイドン–オラトリオ : ピアノ連弾による四季と天地創造2
2010/09/12 : ハイドン–オラトリオ : ピアノ連弾による四季と天地創造

かなり前のことゆえうろ覚えでしたが、確認してみると、こちらはだいぶ時代が下って、ツェムリンスキーが編曲したものということで、背景は異なるものでした。

さて、肝心の演奏です。

Hob.I:92 Symphony No.92 "Oxford" 「オックスフォード」 [G] (1789)
CHANDOSがよく使う録音会場だけにピアノの響きの艶やかさが印象的な録音。交響曲の充実した響きと比べてしまいがちですが、ピアノという単一の音色の楽器にしてはニュアンスが多彩で、フレーズごとに音楽がスルスルと流れていく快感が味わえます。曲はよく知っている曲だけに、その響きのエッセンスをトレースするように聴こえてきました。音量を少し上げて聴くと迫力も十分。脳内でオケの響きを想像しながら聴くようになり、なんとなくオーケストラ版を聴くよりも脳が活性化する感じ(笑) 表情が豊かなので、聴きごたえ十分。
かっちり多彩な1楽章に続いて、2楽章のカンタービレ。この美しいメロディーはピアノに合いますね。中間部の重量感こそないものの、メロディーラインのひらめきを純粋に味わえるというメリットがありますね。
意外にしっくりきたのがメヌエット。ピアノのキレの良さが曲本来の軽快な印象を浮かび上がらせます。トリオのしっとりとした表情もしっかり対比が効いていて効果的。メヌエットのメロディーと構成の美しさを再認識。
そして、有名なフィナーレ。どうしても脳内には朝比奈隆盤の夢見心地で弾む入りのメロディーが浮かびます。イリッチはリズムをキリリと引き締め、畳み掛けるようにきっちりと音を重ねていきます。やはりここはハイドンのフィナーレの見事な構成感を浮かび上がらせたいのでしょう。オーケストラよりもリズムが明快なのは鍵盤楽器ならではのこと。展開の妙を見事な指捌きで落ち着いて仕上げてくるあたり、やはりテクニックは万全。全く破綻なく最後まで推進力を保つところも見事。

Hob.I:75 Symphony No.75 [D] (before 1781)
序奏のシリアスな陰影と主題に入ってからのメロディーの展開の面白さが、この曲を選んだ理由でしょうか。リズムのキレは前曲の終楽章から変わらず、推進力抜群。なんとなく気づいてきたんですが、この人、強音でも音が全く濁らず、力みもありません。交響曲のスケールを音量で表現しようとすると力みそうなものですが、一貫してクールに攻めます。それはハイドン、すなわち古典の曲だからでしょう。この軽妙さと端正さがハイドンの面白さと知ってのことでしょう。1楽章は小気味良くまとめますが、それこそ狙い通りなんでしょうね。
2楽章は抑制を効かせて実に穏やかな表情が美しい。ハイドンの慈しみ深い穏やかな心情に触れるよう。変奏が進むにつれて、光が射し、表情に明るさが加わっていきます。メヌエットでも小気味良いタッチは健在。音を転がしながらメロディーを作っていく感じ。そのままさらりと終楽章に続き、軽やかに終わります。

Hob.I:44 Symphony No.44 "Trauer" 「悲しみ」 [e] (before 1772)
一番気になっていた曲。あの濃密な曲想をどう料理してくるのでしょうか。1楽章の疾走するような入りは、軽やかと鮮やかなタッチで有無をも言わせぬしなやかさ! 響きは異なるもののこの曲独特の雰囲気をよく表現しています。そして意外にダイナミックな印象もあります。曲が進むにつれて入組む音符の多さと超絶技巧を要するような混濁を経ながら、落ち着いて仄暗い情感を表出していきます。いやいやこれは見事。時折指が絡まりそうになる瞬間がありますが、これがかえってスリリングでいいですね。
メヌエットはあえて淡々とした演奏で1楽章との対比をしっかり印象付けます。そして原曲では美しさの限りを尽くしたアダージョですが、ここも淡々としたままで、ちょっと驚きますが、逆に見透し良くハイドンの美しいメロディーが堪能できて結果的にイリッチにしてやられた感じ。じわじわと癒されていきます。
この曲のフィナーレは力強さと疾走感に包まれる名曲ですが、イリッチはその両方を見事に表現してきます。アルバムの最後にふさわしくぐっと踏み込んでクライマックスを築いてきました。いやいや見事!

イヴァン・イリッチによる、ハイドンの交響曲のピアノ独奏版世界初録音ですが、これは面白い! 実に玄人好みのアルバムで、演奏も見事。単にピアノで弾いたというレベルではなく、原曲のメロディーやハーモニーをなるべく変えないように編曲されたものを、ピアノという楽器の響きの特性を踏まえて、原曲の面白さとはちょっと違うところにしっかりとスポットライトを当て、しかも不自然でなく、また軽妙かつ端正なハイドンの音楽の本質をしっかりと踏まえたものになっています。ハイドン入門者向けとは言えませんが、色々聴いてきたハイドン通の皆さんにこそ聴いていただきたいアルバムだと言えるでしょう。評価は3曲とも[+++++]とします。



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tag : オックスフォード 交響曲75番 悲しみ

【新着】クレンペラー/バイエルン放送響の「時計」正規盤(ハイドン)

先日虎馬さんから情報をいただいていたクレンペラーの「時計」ですが、ようやくアルバムが手に入りました!

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オットー・クレンペラー(Otto Klemperer)指揮のバイエルン放送交響楽団(Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks)の演奏で、ハイドンの交響曲101番「時計」とブラームスの交響曲4番を収めたCD。ハイドンの収録は1956年10月18日、19日、ミュンヘンのヘラクレスザールでのライヴ。レーベルはバイエルン放送響の自主制作、BR Klassik。

これまで、この演奏ははライヴ系のレーベルからいくつかのなどで知られていた演奏ですが、ご本家BR Klassikからようやく正規盤がリリースされたというもの。ただし、それらの演奏記録は1956年10月19日のライヴとうことですが、今回リリースされたものは前記の通り10月18日と19日というもの。果たして既発盤とどのような違いがあるのかが興味のポイントでしょう。

クレンペラーがバイエルン放送響を振ったのはオイゲン・ヨッフムの招きにより1956年4月のこと。その後1969年5月までの間にミュンヘンで11回のコンサートを振ったとのこと。このアルバムのライナーノーツの記載によれば、このアルバムのハイドンの録音は1956年10月18日、19日でマーラーの4番との組み合わせ。おそらくコンサート自体はこの2日間に行われたのでしょうが、録音が19日のものか、あるいは2日間の録音から編集されたものかはわかりません。

Hob.I:101 Symphony No.101 "Clock" 「時計」 [D] (1793/4)
この演奏自体は流れの良い楷書体の立派な演奏で、後年のEMIのスタジオ録音とも別の良さがあります。1楽章はクレンペラーらしい雄大な感じがありながらもきびきびとスタイリッシュに進む快感が満ちています。自然に吹き上がるオケの魅力とこの1楽章の端正な造形美が両立する素晴らしい演奏。
続く時計のアンダンテはまさに中庸の美学。オーソドックスなのに彫りが深く、素晴らしい立体感。流石にバイエルン放送響、木管の巧さも絶妙です。そして展開部でオケのパワーを見せつけたかと思うと、音量を落として孤高な印象も残します。テンポをあまり動かさずにこれだけ表情の変化をつけるのは流石。
メヌエットはクレンペラーらしく豪快で堅固。リズムをあえて重くして、中間部の軽やかさを引き立てます。そしてフィナーレは1楽章のスタイリッシュさが戻ってきました。オケをグイグイ煽ってハイドンの書いた音楽が鮮やかに広がります。晩年テンポをかなり落とした演奏が多かったクレンペラーですが、この快速のフィナーレは痛快。これをナマで聴いたらさぞかし素晴らしかっただろうと想像してしまいます。いやいや見事。



さて、これまであんまり聴き比べ的なことはやってきていませんが、このアルバムの真価をを明らかにするためには聴き比べ的アプローチも必要ということで、聴き比べ情報も付記しておきましょう。

まずは比較対象を開陳。手元にはクレンペラーがバイエルン放送響を振った時計のアルバムがいくつかありますので、所有盤リスト掲載順に列記しておきます。

(1) (????) [8'26/9'08/7'35/4'22] DISQUES REFRAIN DR 910002-2 ※演奏日の記載なし
(2) (December 1950/Live) [8'12/8'53/7'23/4'14] Couplet CCD-3012 ※CD-R
(3) (18, 19 October 1956/Live) [8'20/8'53/7'25/4'23] BR KLASSIK 900717 ※今回のアルバム
(4) (19 October 1956/Live) [8'12/8'53/7'23/4'14] MEMORIES REVERENCE MR 2266/2277

また、以前謎めいたCouplet盤を取り上げた時にコメントをいただいたライムンドさんのブログよりGolden Melodram盤の記録を転記しておきます。
(5) (19 October 1956/Live) [8'10/8'44/7'18/4'10] Golden Melodram

タイミングだけみると(2)はタイミング的に(4)と一緒なので結局10月19日の演奏なんでしょう。しかも(2)のハイドン以外の曲が1950年10月の演奏なので、ハイドンの演奏日の誤記と考えるのが自然です。(5)のGolden Melodram盤もタイミング的には近いですね。楽章間の時間のとりかたでこの程度はずれるでしょう。(1)はどの楽章も一律に少し演奏時間が長いんですが、1楽章を何度か聞き比べると、ちょっと音程が低いような気がしないでもありません。テープ速度の問題でしょうか。(5)は実際に聴いていませんが、おそらくここにリストアップした演奏は同一の演奏のような気がします。

音質面ではこのBR KLASSIK盤が既発盤とどう違うのかが気になります。もちろん全てモノラルです。
(1)は書いた通り、少しテンポが遅く感じます。それゆえ雄大な感じもあり、音質は自然ではありますが高音が少し詰まって聴こえます。演奏の印象も雄大な感じが強くなります。
(2)が意外にもなかなかいい録音。今回色々と聴き比べてみると、繊細感とバランスがなかなかいい具合。
(3)の正規盤は(2)よりもさらに繊細でダイナミックですが、ヴァイオリンだけちょっと浮かび上がるようなところがあったりかすかに位相がずれているような微妙な違和感があります。色々加工して仕上げてきているような感じ。
(4)は精細感は劣るものの自然さは勝ります。低音が少しボンつく感じはありますが、ライヴ盤としては聴きやすい感じです。

ということで、今回リリースした正規盤もなかなかのところですが、音質面では一長一短で買い直し必須とまでは言い切れないところ。
ということで、当ブログの結論は以下の通り。

このバイエルン放送響とのライヴは絶品。評価は[+++++]。
クレンペラーファンの方は既発盤を含めて全部買う価値があります。既発盤を持っている方は音質面では無理して買い直す必要はありません。なお正規盤でなければ認めないというコンプライアンス意識の高い方で密かに既発盤を持っている方は、既発盤は投げ捨て、正規盤に買い換えましょう!

※ハイドンの演奏コレクターである私はGolden Melodram盤が欲しくなってきました(笑)





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【新着】絶品! エンリコ・オノフリ/セビリア・バロック管の「悲しみ」(ハイドン)

8月中にもう1枚!

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エンリコ・オノフリ(Enrico Onofri)指揮のセビリア・バロック管弦楽団(Orquesta Barroca de Sevilla)によるハイドンの交響曲44番「悲しみ」などを収めたアルバム。収録はスペイン、セビリアのエスパシオ・サンタ・クララ(Espacio Santa Clara)でのセッション録音。レーベルはベルギーのPassacaille。

少し前に手に入れていたアルバム。「18世紀アンダルシアの葬送音楽」とタイトルがつけられています。その冒頭にハイドンの「悲しみ」が置かれていますが、気になるのは「セビリア大聖堂ヴァージョン」との注記。
これは、セビリア大聖堂の音楽監督を勤めていたドミンゴ・アルキンボ(Domingo Arquinbau)のサインが残る写譜にハイドンのオリジナルとは異なるダイナミクスとアーティキュレーションが書き込まれたもので、おそらく当時の実際の演奏に使われたものと思われるもの。
ライナーノーツの英文を紐解くと、ハイドンの音楽はイベリア半島にも広く伝わっており、コルドバ大聖堂にはハイドンの弦楽四重奏曲や交響曲の楽譜の写しが伝わっていたとのこと。セビリア大聖堂にも、この交響曲44番の他、52番、53番、82番、92番などが伝わってたとのことですが、1825年の大聖堂の楽譜リストにはこれらの記録は残っておらず、どのようにしてセビリア大聖堂に伝わったのかはわからないようですが、1814年、独立戦争終結時に英国軍司令官ウェリントン公爵がスペイン議会に送った楽譜類がアルキンボの手に渡ったものと考えられるとのこと。

ということで、このセビリア大聖堂ヴァージョンはハイドンが活躍していた18世紀にスペインでどのように演奏されていたかを知る手がかりとなるというわけです。

指揮のエンリコ・オノフリのアルバムは初めて聴きます。1967年イタリア、ラヴェンナ生まれのヴァイオリニストで、ミラノ音楽院出身。バロックヴァイオリンの名手として知られる人で、アーノンクールのウィーン・コンツェントゥス・ムジクスやジョルディ・サヴァールのオケなどで活躍した他、なんとアントニーニ率いるイル・ジャルディーノ・アルモニコのソリストとして活躍したとのこと。近年は自身で立ち上げた「アンサンブル・イマジナリウム」を率いる他、指揮者としても活躍していますね。ネットを検索してもこのアルバム以外にハイドンの録音はない模様です。

Hob.I:44 Symphony No.44 "Trauer" 「悲しみ」 [e] (before 1772)
録音会場のエスパシオ・サンタ・クララはホールというよりは美術館のようなスペースのようです。残響は多めです鮮明さはあり、よく響く小さなホールでの演奏を間近で聴く感じの録音。古楽器による演奏ですが、アーティキュレーションは実に自然。ピノックのインテンポの演奏に近いタイトな演奏ですが、しなやかさもあり、キビキビとしたこの曲の魅力をしっとりとした雰囲気も加えて伝えます。アントニーニはまだこの曲を録音していませんが、アントニーニのエキセントリックに冴える感じまでは行かず、オーソドックスな古楽器演奏の魅力がポイントでしょう。ヴァイオリニストらしく、弦楽器が主体で管楽器は響きに色付けを乗せるような役割。
続くメヌエットも、弦楽器の美しい響きで音楽を作っていきます。響きが実によくコントロールされていて、音楽がマスとなって一体的に響きます。ハーモニーのバランスを非常に綿密にとっているのでしょう。
聴きどころは3楽章のアダージョでした! 実にしっとりとした音楽が流れてハッとさせられます。生成りの響きというか、これぞ古楽器の音色の魅力と唸らされます。つぶやくように音符一つ一つに神経を張り巡らし、語っていきます。なんとなく当時のスペインの聖堂で演奏しているイメージが浮かんでくるではありませんか。遠くウィーンから伝わった音楽がセビリアであたたかく響きわたります。当時の奏者の気持ちがわかるような気がします。至福のひととき。この楽章、どれだけ多くの人の心を癒したのでしょうか。沁みます。
一転、険しさを強調するように終楽章に入ります。弦楽器のボウイングの荒ぶる様子が素晴らしい迫力で迫ってきます。ここぞとばかりに攻めに入り、ハイドンの音楽の険しさを知らしめて曲を終えます。いやいや素晴らしい!

この後にはスペインの18世紀の音楽が4曲続きますが、どの曲も古楽の癒しに包まれる幸せな音楽。葬送音楽ではありますが、死に際して演奏される音楽の澄み渡る心境を堪能できる名曲揃いで、ハイドン以外も楽しめる素晴らしい選曲です。

初めて聴くエンリコ・オノフリのハイドンですが、これは絶品です。キビキビとした入り、磨き込まれたメヌエット、癒しに満ちたアダージョ、そして荒れ狂うフィナーレとこの曲の素晴らしさを存分に伝える名演奏と言っていいでしょう。この曲には名演奏が多いですが、私はイチオシとします。特にアダージョの美しさは深く心に残りました。評価はもちろん[+++++]とします。



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tag : 悲しみ 古楽器

【新着】飯森範親/日本センチュリー響の交響曲集第8巻(ハイドン)

淡々とリリースが続くこのシリーズ、8巻目になりました。このところリリースピッチが上がってきましたね。

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飯森範親(Norichika Iimori)指揮の日本センチュリー交響楽団の演奏で、ハイドンの交響曲60番「迂闊者」、交響曲54番の2曲を収めたSACD。これで8巻目になります。収録は2017年8月11日、大阪のいずみほホールでのライヴ。レーベルは日本のEXTON。

順調に巻を重ねてきているこのシリーズ。当ブログではこれまでリリースされた8巻中、この記事を含めると6巻を記事にしています。過去の記事はリンク先をご覧ください。

2019/02/26 : ハイドン–交響曲 : 【新着】飯森範親/日本センチュリー響の交響曲集第6巻(ハイドン)
2018/06/29 : ハイドン–交響曲 : 【新着】飯森範親/日本センチュリー響の交響曲集第4巻(ハイドン)
2018/03/26 : ハイドン–交響曲 : 【新着】飯森範親/日本センチュリー響の交響曲集第3巻(ハイドン)
2017/07/19 : ハイドン–交響曲 : 【新着】飯森範親/日本センチュリー響の交響曲集第2巻(ハイドン)
2016/11/19 : ハイドン–交響曲 : 【新着】飯森範親/日本センチュリー響の交響曲集第1巻(ハイドン)

このシリーズもライヴながら演奏、録音ともに非常に高い水準を保っていて、安心して曲を楽しむことができます。日本でのハイドンの素晴らしい音楽の知名度アップに大きく貢献しているだけに応援しなければなりません!

今回はシュトルム・ウント・ドラング期後の1774年頃に書かれた2曲を組み合わせた玄人好みの選曲。ハイドンの交響曲分野の前半の頂点は「告別」や「悲しみ」「受難」など踏み込んだ感情表現を持つ数々の名曲を生んだシュトルム・ウント・ドラング期にあることはご承知の通り。その後、交響曲の作風は大きく変わり、親しみやすくより明快な表現に変わっていきます。これは中野博詞さんの「ハイドン交響曲」によると、エステルハージ家や侯爵の好みを反映したことや、この頃からハイドンがオペラをはじめとする劇音楽に関心が移っていったことなどに起因するとされています。今回の2曲はまさにハイドンの交響曲の創作の転換を象徴する選曲になっているということで、実に興味深い選曲です。

Hob.I:60 Symphony No.60 "Il disrratto" 「迂闊者」 [C] (before 1774)
ハイドンは1773年に作曲・上演した歌劇「裏切られた誠実」"L'infedeltà delusa"以降、多くの歌劇を作曲するようになるなか、翌1774年にカール・ヴァール(Karl Wahr)一座がジャン=フランソワ・ルニャール作の喜劇「ぼんやり者」をエステルハーザで上演することになった際、ハイドンがこの劇の付随音楽として序曲・各幕の間の間奏曲4曲と終曲を作曲。これを交響曲の形にまとめたものがこの曲。ハイドンの交響曲では唯一6楽章構成で、交響曲というよりは劇音楽のような構成。
冒頭の序曲に当たるアダージョからホール内に心地よくオーケストラが響き渡ります。このシリーズの初期のリリースでは録音もばらつきがあり、ちょっと人工的なニュアンスもあったんですが、ここ数巻は安定してホール内の響きを非常にうまくまとめていますね。音量を上げて聴くとまさにホールで聴いているよう。主題に入ると快活なメロディーの魅力炸裂。金管を含めたオケの響きが非常によく溶け合い非常に自然。オケもアクセントとリズムがキレキレで血湧き肉躍る痛快な演奏。クッキリとコントラストがついて、特にティンパニのリズム感が尋常ならざるレベル!
続くアンダンテでは弦楽器がこちらもイキイキとしたフレージングで聴かせます。この日のオケはリズムが冴え渡りまくって、音楽が弾みます。時折テンポをぐっと落とすのも効果的。3楽章のメヌエットは流麗な力感と中間部の民謡風のメロディーの対比が見事。そして4楽章はまさに劇中音楽を交響曲のフィナーレにアレンジした感じで目くるめくように展開しますが、ここで終わらないのがこの曲。ちょっと唐突に美しいメロディーのアダージョが続きますが突如軍隊調のファンファーレが挟まります。このあたりの場面展開はまさにオペラのよう。終楽章は有名な音程が乱れた混沌とした響きをチューニングして正す場面がありますが、おそらく飯森さんの咳払いで注意を促すという演出に客席からも笑いが漏れ聞こえます。交響曲としてはおふざけにあふれた珍曲ではありますが、格調高い諧謔的な面白さもあり、ハイドンのユーモアを見事に浮かび上がらせた名演奏でした。このシリーズは拍手はカットされていますが、この曲は拍手があったほうが臨場感があったでしょう。

Hob.I:54 Symphony No.54 [G] (2nd version) (1776)
こちらも同じく1774年に書かれた曲。今まで知りませんでしたが、ザロモンセット以前では最大編成の曲とのこと。4楽章構成ですが、所有盤リストに演奏時間を登録する際に2楽章が19分33秒と異常に長いのに気づきました。この曲の他の演奏で一番長いのがファイの13分弱ということで、ぶっちぎりで最長になります。Wikipediaには「演奏時間も長く、全てのリピートを実行すると20分近くを要する」と記載されていることから、繰り返しを全て実行しているのでしょう。
1楽章は穏やかな曲調の序奏から入り、展開も穏やか平明。シュトルム・ウント・ドラング期のあの深い情感はもうありません。その代わり堅牢な構築感、気高い優雅さなどに満ちています。この急激な変化はやはり侯爵の好みの影響と考えるのが自然な気がします。演奏はこの堅牢さと気高さを十分に反映して、前曲のリズムのキレとは表現を変えてきて堂々たる響きを作って曲に合わせてきました。
続く長大な2楽章はハイドンには珍しいアダージョ・アッサイ。ヴァイオリンとオーボエによるしっとりとしたメロディーがゆったりと流れます。今まで地味な曲に聴こえていたこの楽章も、よく耳を澄ますとハイドンの創意が新たな次元に入った音楽のように聴こえてきました。メロディーに多くを語らせていた音楽から気配の描写のような時代を先取りした音楽を模索しているよう。この楽章、一貫して少ない楽器のハーモニーの美しさを際立たせようとするような繊細な演奏が素晴らしいですね。気配が伝わります。
ハイドンの交響曲の聴きどころはやはりメヌエット。創作の方向が変わったこの曲でもメヌエットの面白さは健在。メロディーと舞曲のリズムが織りなす音楽の面白さはハイドンならでは。中間部は癒しに満ちた音楽で箸休め。オケはメヌエットの面白さを再びキレキレのリズムで見事に表現しています。
フィナーレは1楽章を受けて気高く流麗な音楽。コントラストよりも軽快しなやかに演奏することで晴朗なハイドンの音楽の面白さが際立ちました。ここでもティンパニが効果的。めくるめくようなスリリングな展開でフィニッシュ。

いやいや素晴らしい! このシリーズ、当初は音というか響きを磨き込むような演奏と感じることもあったんですが、ここに至って、音楽をしっかりと彫り込み、ハイドンの創意の真髄に迫らんとする気合いを感じるようになってきました。交響曲の中ではマイナーな2曲ですが、これは見事。この2曲の魅力を再認識いたしました。ということで、評価はもちろん両曲とも[+++++]といたします。オススメです!

(追伸)
Haydn2009さん、ご入院とのこと。お大事に! 快癒されましたらまたオフ会やりましょう!

(追記)
毎日クラシックのcherbinoさんからご指摘いただきましたが、交響曲54番にはバージョンがいくつかあり、この演奏は1楽章に序奏があり、フルート、トランペット、ティンパニが加わっていることから1774年の後1776年に改定された第3版でした。所有盤リストの方はホグウッド盤の順番に合わせて整理してあり、ホグウッド盤では第3版を2nd versionとして記載されているため、リストもそれに合わせて変更しました。cherbinoさん、ありがとうございました!



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tag : 交響曲54番 迂闊者

アントニ・ロス=マルバ/オランダ室内管の交響曲2番(ハイドン)

こちらも最近入手したLP。

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アントニ・ロス=マルバ(Antoni Ros-Marbà)指揮のオランダ室内管弦楽団(The Netherlands Chamber Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲2番などを収めたアルバム。ハイドンの収録は1982年11月6日、アムステルダムコンセルトヘボウでのライヴ。レーベルはオランダ室内管の自主制作nko(Het Nederlands Kamerorkest)。

このアルバム、もちろん指揮者のアントニ・ロス=マルバ目当てで入手したもの。私はロス=マルバはお気に入り。ロス=マルバのアルバムは過去に3度取り上げていますので、まずは御一読下さい。

2015/02/15 : ハイドン–協奏曲 : イザベル・ファン・クレーンのヴァイオリン協奏曲(ハイドン)
2013/03/31 : ハイドン–協奏曲 : グラン・カナリア・フィルのトランペット協奏曲、2つのホルンのための協奏曲
2011/01/22 : ハイドン–管弦楽曲 : ロス=マルバ/カタルーニャ室内管弦楽団の十字架上のキリストの最後の七つの言葉

先鋭的な演奏も、流行の最先端も、火花バチバチの演奏も嫌いではありませんが、私の歳になると、豊かな響きでゆったりと歌う演奏の良さが身にしみてきます(笑) ロス=マルバの振るオケはまさにそうした豊かな音楽が溢れ出てくる演奏で、特にグラン・カナリア・フィルの演奏などは見事の一言。そのロス=マルバの振る未知のハイドンのLPをオークションで発見した時には、もちろん過呼吸な状態になり、速攻手に入れたのは言うまでもありません。到着して、所有盤リストに登録する際に色々調べてみると、極上の響きを誇るコンセルトヘボウでのライヴではありませんか。ということで、いつものようにVPIと必殺美顔ブラシで丁寧にクリーニングして、針を落としてみると、期待通りの素晴らしい響きが流れ出しました!

Hob.I:2 Symphony No.2 [C] (before 1764)
B面最初がハイドン。もちろんハイドンから聴きます。交響曲2番ということで、ごく初期のシンプルな曲。期待通り、1楽章は晴朗かつ愉悦感たっぷりの音楽が弾みます。そしてドラティを思わせるキレの良いフレージングも見事。初期のハイドンの交響曲の魅力が万全に表現されています。ロス=マルバの真骨頂は続くアンダンテ。適度に彫りの深い表情ながらほんのりと華やかさ香る演奏。シュトルム・ウント・ドラング期を予感させるかすかな翳りも重なり、実に味わい深い演奏に痺れます。最後にしっかりテンポを落とすマナーもいいですね。そしてフィナーレも華やかさを失わず、華麗に躍動。奏者がリラックスして実に楽しげに演奏しているのがわかります。短い曲ですが、お客さんからは暖かな拍手が降り注ぎ、この短い曲を心から楽しんだ雰囲気に包まれます。

この後に続くラヴェルの「クープランの墓」がまた絶品。ハイドンのレビューで取り上げたんですが、ラヴェルの気品に満ちたしなやかさに耳を奪われます。まるで詩情溢れる絵巻物を眺めるがごとき至福のひととき。ハイドンの華やかさもこのラヴェルの気品もスペイン生まれのロス=マルバの魔術にかかった奏者が完璧にリラックスして音楽を生み出していきます。A面のクリスティアン・バッハのシンフォニア(Op.18 No.2)は典雅の極み、リヒャルト・シュトラウスの「カプリッチョ」からの弦楽合奏はもはや夢の国。ロス=マルバという人、バトンテクニックというレベルではなく、奏者から自然で豊かな音楽引き出す魔術師のような人なのでしょう。

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アントニ=ロス・マルバ/オランダ室内管によるハイドンの交響曲は、独墺系の指揮者とは異なるハイドンの魅力を見事に引き出す素晴らしい演奏でした。ライヴにも関わらず極上の音楽が流れ、この日の聴衆もマルバの魔術に酔いしれたことでしょう。このアルバムも宝物になりました。評価は[+++++]とします。



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tag : 交響曲2番

【新着】ローター・ツァグロゼク/ベルリン・コンツェルトハウス管の88番(ハイドン)

先日読響を振ったコンサートでその真価に触れた、ローター・ツァグロゼク。コンサート会場で先行発売されていたCDを手に入れたものの、色々忙しくそのままになっておりましたが、当ブログによくコメントをいただくだまてらさんから記事にせよとの指令をいただきましたので、記事を起こすことに相成りました(笑)

だまてらさん、遅くなりました!

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ローター・ツァグロゼク(Lother Zagrosek)指揮のベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団(Konzerthausorchester Berlin)の演奏で、ブルックナーの交響曲9番とハイドンの交響曲88番の2曲を収めたアルバム。ハイドンの収録は2007年5月5日、6日ベルリンのコンツェルトハウスでのライヴ。レーベルはAltus。

冒頭に触れた読響を振ったコンサートの記事はこちら。

2019/02/23 : コンサートレポート : 爆演! ローター・ツァグロゼク/読響のリーム、ブルックナー(サントリーホール)

このコンサートはリームもブルックナーも素晴らしかったんですが、最も素晴らしかったのはツァグロゼクの指揮。ブルックナーは完全に暗譜でオケを緻密に先導し、指揮者の意図がオケの隅々にまで行き渡る見事なコントロール。クライバーの煽りとも、マゼールの魔法のタクトのような緻密さとも異なりますが、そのコントロール能力は両者以上とみました。まさに自身の体から湧き出る音楽がオケに乗り移ったような見事な指揮ぶりに圧倒され、そして、ブルックナーの7番も引き締まった実に見事な演奏でした。

そのツァグロゼクの来日に合わせてリリースされた2枚のアルバムのうちの1枚にハイドンの88番が含まれるということで、普段コンサート会場で売っているCDを買うことはありませんし、サイン会に並ぶ風習もないながら、これはちょっと気になるということで手に入れたもの。

ブルックナーの9番にハイドンの88番ということで、収録日の異なる2曲を合わせてありますが、通例ハイドンが先と思いきや、1曲目はブルックナー。これは予想通り、ツァグロゼクの面目躍如、緊張感みなぎる素晴らしいライヴ。精緻なコントロールで淀みなく流れ、深々とした弦の響きの美しさに圧倒される見事なものでした。一般の方はこちらがメインでしょう。

Hob.I:88 Symphony No.88 "Letter V" 「V字」 [G] (1787?)
ブルックナーの荘厳な終結のジワリとした拍手の後に、ハイドンの端正な音楽が新鮮に響きます。メロディーを軽やかつクッキリと浮かび上がらせる手腕は見事。ハイドンでもツァグロゼクの類まれなコントロールが活きています。キリリと端正ながら躍動感もあり、まさに王道を行く感じ。
一転して2楽章のラルゴは、癒しに満ちたコミカルさというこの曲の雰囲気を非常にうまく表現しています。一般的なしなやかな演奏とは異なり、ざっくりとした肌触りがあり、そのざっくりさが朴訥さを感じさせるところがユニーク。表現が適度な範囲に収まっているところが古典の範疇。
メヌエットは流石に手堅くまとめます。オケが気持ちよく吹き上がり、ここでも適度な表現が心地良いですね。メヌエットで攻めてくる演奏も多いですが、ここは攻めどころではないと見切っているよう。
もちろん、88番の攻めどころはフィナーレ。コミカルなメロディーがフレーズごとに微妙に表現を変えながら展開していく面白さは手に汗握るもの。迫力とは無関係な音楽を聴く楽しみを味あわせた後、オケが牙を剥きます。鮮やかに吹き上がるオケはツァグロゼクが緻密にコントロールしているのでしょう。緩急硬軟自在の見事な演奏。力みなく整然と展開する音楽はハイドンの音楽の本質をズバリと突くもの。いやいや素晴らしい! 会場からもブラヴォーが飛び交う見事な演奏でした。

88盤にはライナーやセルのようにオケをグイグイ鳴らしきる名演もありますが、このツァグロゼクのように八分の力でこなす方が粋かもしれませんね。コントロールを隅々にまで行き渡らせながら、ハイドンの交響曲の面白さをさらりと聴かせる、まさに円熟の技とはこの演奏のことでしょう。ブルックナーではコントロールの向こうに神々しい深い響きを聴かせたかと思うと、ハイドンでは軽やかに粋なところを聴かせる見事な描き分け。このアルバムからはツァグロゼクの芸の幅広さも伝わりました。ハイドンの評価は[+++++] とします。



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tag : 交響曲88番 ブルックナー

【新着】ジョヴァンニ・アントニーニの交響曲全集第7巻(ハイドン)

これは取り上げないわけには参りません。

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ジョヴァンニ・アントニーニ(Giovanni Antonini)指揮のバーゼル室内管弦楽団(Kammerorchester Basel)の演奏で、ハイドンの交響曲67番、65番、9番、モーツァルトの劇付随音楽「エジプトの王タモス」(K.345/336A)から管弦楽のための5つの楽章の合わせて4曲を収めたCD。このアルバムはアントニーニによるハイドンの交響曲全集の第7巻。収録は2017年10月2日から6日にかけて、前巻と同じスイスのバーゼル近郊のリーエンという街にあるランドガストホフ・リーエン(Landgasthof Riehen)でのセッション録音。レーベルはレーベルはouthereグループのALPHA-CLASSICS。

毎巻リリースを楽しみにしているこのシリーズ。中でも今回は待ち遠しかった! というのも、昨年10月にアントニーニが読響に客演したコンサートを2つとも聴いて、アントニーニの真価に打たれてしまったからに他なりません。

2018/10/21 : コンサートレポート : アントニーニ/読響による「軍隊」など(東京芸術劇場)
2018/10/18 : コンサートレポート : アントニーニ/ムローヴァ/読響によるハイドン・ベートーヴェン(サントリーホール)

コンサートの模様は記事をご覧ください。特にサントリーホールでの初日の最初の歌劇「無人島」序曲でアントニーニの繰り出す音楽に圧倒されました。読響から聴いたこともないようなタイトな響きを引き出すあたり、やはり響きに対する鋭敏な感性は並ではありませんでした。これまでリリースされている全集の中でも、間違いなくドラティを超えてくる完成度を誇り、こちらもこれまでリリースされた全ての巻を取り上げ、皆勤賞で迎えております。

2018/07/07 : ハイドン–交響曲 : 【新着】ジョヴァンニ・アントニーニの交響曲全集第6巻(ハイドン)
2017/11/22 : ハイドン–交響曲 : 【新着】ジョヴァンニ・アントニーニの交響曲全集第5巻(ハイドン)
2017/04/18 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第4巻(ハイドン)
2016/10/09 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第3巻(ハイドン)
2015/06/08 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第2巻(ハイドン)
2014/11/08 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第1巻(ハイドン)

毎巻テーマを設定して選曲されていますが、今巻は"Gli Impresari"。これは直訳すると「管理者たち」で、販促文を見ると「劇場監督たち」とあります。モーツァルトの曲も含めて、この巻に収められた曲はいずれも当初交響曲ではなくオペラなどの曲として書かれた経緯があるとのことです。どの曲も録音が少ない曲ということで、この演奏も貴重なもの。いつも通りキレキレ極上の演奏で味わえるということで貴重なものと言えるでしょう。

Hob.I:67 Symphony No.67 [F] (before 1779)
コミカルなメロディーが心地よく鳴ったかと思うといきなりフルスロットルでタイトな響きが畳み掛けてきます。入りからアントニーニの才気が炸裂! グイグイ畳み掛けてくるエネルギーをコミカルなメロディーで鎮めるハイドンの才気を完全に汲み取っての演奏に圧倒されます。シュトルム・ウント・ドラング期以降パリセットまでの間の曲は今ひとつ目立たぬ存在ながら、この演奏を聴くとはち切れんばかりの才気が仕込まれていることがわかります。1楽章の終わりのホルンの割れた響きを際立たせるところも見事。
続くアダージョは音量を落としてはいるのですが、耳をそばだてて聴くようにくっきりとコントラストをつけて、ちょっと音量が上がるとハーモニーの美しさや木管の響きの美しさに聴き惚れるように仕立てます。ゾクゾクするような気配に包まれながら響きに聴き入る至福の境地。
静けさを断ち切るように速めのテンポでのメヌエットに入りますが、トリオの部分はオケからグラスハーモニカのような不思議な音色を引き出します。これはコル・レーニョ・デラルコ奏法と言って、弓の背の部分で弾いているとのこと。
そしてフィナーレはギャラントな響きを引き出してオケの響きの美しさを際立たせますが、この楽章でも中間部の聴かせどころを丹念に描いて、ハイドンが仕込んだ展開の面白さこそこの楽章の真髄と言わんばかりに音楽のフォルムをデフォルメを効かせて描きます。67番がこれほど創意にあふれた曲だと改めて気づかされる驚異の名演奏と言っていいでしょう。

Hob.I:65 Symphony No.65 [A] (before 1778)
番号は前曲に近いですが、作曲年代は1772年ごろと告別交響曲と同じくシュトルム・ウント・ドラング期の最盛期のもの。曲想を汲んでか、入りからしなやか流麗な演奏。弦楽器のハーモニーの美しさで聴かせます。しなやかに聴こえるものの、くっきりとデュナーミクをコントロールして、しなやかな音楽の流れもしっかりとしたコントロールによって造られていることがわかります。
続くアンダンテはいつもながらハイドンのアイデアの豊富さに驚く曲。鳥のさえずりのように自在に駆け回るメロディー。どのようにしてこのようなメロディーを思いつくのか、そしてアントニーニもこの不思議な曲を、まるでハイドン自身が振るような説得力で描きます。ホールに漂うオケの響きの余韻の美しさも鳥肌もの。
メヌエットは短いものですが、リズムの面白さに趣向を凝らし、トリオでさっと雰囲気を変える見事な展開に驚きます。全く手抜きなし。
そしてフィナーレではホルンの鮮やかな号砲がアクセントとなって始まり、低音弦のダイナミックな動きとホルンが掛け合ううちにクライマックスを迎えます。

Hob.I:9 Symphony No.9 [C] (1762?)
最後に初期の曲を持ってきました。メロディーラインは面白いものの、前2曲と比べると明らかに構成は単純。アントニーニも曲に合わせて力を抜いて流すようにリラックスした演奏。これが功を奏して気楽に楽しめるようまとまります。
聴きどころは2楽章のアンダンテ。シンプルながら独特の雰囲気のメロディーと木管の音色が相まって実に趣深い音楽が流れます。単調だからこそメロディーがくっきりと引き立つわけですね。そのあたりを見極めたアントニーニのさっぱりとしたコントロールセンスが光ります。
3楽章のメヌエットも一貫して速めのテンポでさっぱりと仕上げます。力の抜き方にも巧みさが垣間見えます。

第7巻までこぎつけたジョヴァンニ・アントニーニのハイドンの交響曲全集。全く隙のない完璧な仕上がり。いつも通りプロダクションも丁寧で、アーティスティックな写真と充実した解説がつけられ、毎巻手に入れる楽しみもあります。録音も古楽器オケの響きの厚みをしっかりと感じられる素晴らしいもの。このシリーズ、完結すればおそらく史上最高のハイドンの交響曲全集となることでしょう。もちろん評価は全曲[+++++]とします。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 交響曲67番 交響曲65番 交響曲9番

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Author:Daisy

ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

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