ルクセンブルク四重奏団のOp.20のNo.5

ブログをやっていて本当に良かったと思う事があります。今日はそんなことをじんわり感じた一枚。

Luxembourg20_5.jpg

ルクセンブルク四重奏団(Quatuor de Luxembourg)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.20のNo.5、ハンス・クラーサ(Hans Krása)、ユレ・クリューガー(Jules Krüger)、ラフマニノフ、ヴェーベルンの弦楽四重奏曲を収めたアルバム。収録は2001年7月16日から18日にかけて、ルクセンブルクのヴィラ・ロヴィニーのホールでのセッション録音。レーベルはJCH PRODUCTIONというルクセンブルクのレーベル。

このアルバム、以前当ブログで取りあげたルクセンブルク四重奏団の第1ヴァイオリンの矢口統(おさむ)さんから連絡をいただき送っていただいたアルバム。まずは以前取りあげた記事を紹介しておきましょう。

2011/10/31 : Haydn Disk of the Month : Haydn Disk of the Month - October 2011
2011/10/02 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : ルクセンブルク四重奏団のOp.20 No.2

前記事を読んでいただければわかるとおり、まったく未知であったこの四重奏団の素晴しいハイドンの演奏を聴いたときの衝撃は忘れられません。ハイドンの晴朗なメロディーをそのまま音にしたような伸び伸びとした演奏。以前取りあげたアルバムは2011年10月のHaydn Disk of the Monthにも選定した素晴しいアルバムでした。

前記事ではウェブなどの情報からルクセンブルク四重奏団は活動していないのではないかと書きましたが、矢口さんによれば現在もメンバーが替わって活動しているとのこと。設立から14年目になるそうです。前アルバムの録音が2000年7月。今日取り上げるアルバムの録音が2001年の7月ということで、すぐ翌年の録音ですので、このアルバムの演奏も期待できそうです。メンバーは前アルバムとはヴィオラが替わっています。

第1ヴァイオリン:矢口統(やぐちおさむ)
第2ヴァイオリン:Mihajlo Dudar
ヴィオラ:Kris Landsverk
チェロ:Vincent Gérin

アルバムの構成も前アルバム同様、冒頭にハイドンを置き、その後にルクセンブルクの作曲家を含む歴史のパースペクティヴを感じさせる配置。ハイドンの曲を並べたアルバムもいいのですが、こうしたハイドン以外、特に現代曲を含む配曲は聴く方も感覚が鋭敏になります。

Hob.III:35 / String Quartet Op.20 No.5 [f] (1772)
Op.20でも最も好きな曲。短調のこの曲の陰りよりは、晴朗な響きの方に焦点を合わせた演奏。第1ヴァイオリンの矢口さんの演奏は、実に鮮やかな弓さばきで、ハイドンの名曲のメロディーの自然なヴォリューム感を表現していきます。構えも溜めもなく流れるように自然な演奏。エッジをキリッと立てたり、各楽器の演奏を無理矢理合わせる感じはなく、4人のアンサンブルが自然に溶け合い、じわじわと盛り上がっていく演奏。録音は超自然。デジタル録音の長所が活きた、自然な弦楽器の感触がリアルに伝わります、ほのかな残響と適度な距離感が実に心地よい響きを作っています。
2楽章はメヌエット。矢口さんのヴァイオリンは高音域より中音域の深みのある音色に特徴があり、このメヌエットでは矢口さんの鳥がさえずるような自然かつ洒脱な弓さばきのヴァイオリンの美音が聴き所。アンサンブルは非常にリラックスして演奏を楽しんでいるよう。時折聴かせる弱音の消え入るような響きの美しさも流石です。
つづくアダージョに入っても自然さと軽妙な弓さばきは変わらず、ハイドンの名旋律の魅力をさりげなく聴かせていきます。実に鋭敏な弓さばきによって陰影ではなく、メロディーの美しさが際立ちます。カッチリと弾いてくるクァルテットが多い中、この自然かつ軽妙な弓さばきで全員の息がピタリと合って、音が精妙に重なり合う事で音楽深まります。
フーガ風のフィナーレは音量も表現もかなり抑えて、弓使いの繊細さが極まります。終盤に至って、踏み込んでは来ますが、知情のバランスの適切な範囲まで。このさりげなさが深みにつながっています。

つづくハンス・クラーサの「主題と変奏」はコンゴルド風の明るさと現代性の混在したなかなか面白い曲。ハイドンノフィナーレも次の曲へのつながりを意識しての演奏のように感じます。個人的にはこのハンス・クラーサとヴェーベルンの弦楽四重奏のための緩徐楽章が気に入りました。

ルクセンブルク四重奏団のハイドンのOp.20のNo.5などを収めたアルバムですが、前に紹介したアルバム同様、ハイドンの特にシュトルム・ウント・ドラング期の創意とほの暗さを併せ持つ曲の真髄に迫る、自然な弓使いの妙を楽しめる演奏でした。曲に没入せず、晴朗な心境での演奏なのでしょう、聴いているこちらも穏やかな気持ちで音楽を楽しめる演奏でした。録音も良く、部屋のなかにクァルテットが出現したようにリアルに各奏者の音の重なりの面白さを楽しめます。評価はもちろん[+++++]とします。弦楽四重奏が好きな方にはオススメの一枚です。

ちなみにもう一枚、ハイドンのOp.20のNo.6などを収めたアルバムも手元に届いており、こちらも近いうちにレビューしたいと思ってます。ただし、このアルバム、調べた限りHMV ONLINEをはじめとしてamazon、TOWER RECORDS、iTunesなどでも取扱いがないようです。どちらかの業者の方、輸入できないでしょうね〜。

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tag : 弦楽四重奏曲Op.20 ヴェーベルン

テンシュテットの軍隊ライヴ、爆演!

今日はテンシュテットの軍隊です。

IMG_0904.jpg

クラウス・テンシュテット(Klaus Tennstedt)指揮のボストン交響楽団の演奏で、ハイドンの交響曲第100番「軍隊」のライヴ。1977年1月8日のボストンシンフォニーホールの演奏会の模様を収めたCD-Rです。レーベルは”A DERANGED BAT COLLECTION”というレーベル。

テンシュテットの録音にはライヴを中心にハイドンの録音はそこそこあり、これまでもいろいろ取り上げてきましたが、気合いの乗ったものもちょっとかすり気味のものもあり、やはり聴いてみたくなるのが不思議なところ。今回のアルバムは最近オークションで入手。はたして軍隊の爆演に出会えるでしょうか。
これまでに取り上げたテンシュテットの演奏のリンクを張っておきましょう。

ハイドン音盤倉庫:テンシュテットの57番
ハイドン音盤倉庫:テンシュテットの天地創造
ハイドン音盤倉庫:テンシュテットの王妃
ハイドン音盤倉庫:テンシュテットの太鼓連打

このアルバムは1日のコンサートを収めたものなので、他に2曲、冒頭にヴェーベルンのパッサカリア、そして軍隊をはさんで、シューベルトのザ・グレートと言う流れ。コンサートの冒頭にヴェーベルンの短い作品をおいて、ハイドンに入るという絶妙のプログラム。ヴェーベルンで脳を覚醒させて、ハイドンに入ると言う至福の構成。このセンスはすばらしいですね。

ヴェーベルンといえばブーレーズの超冷静な演奏の印象が強いんですが、テンシュテットのヴェーベルンは、叙情的な印象ですね。77年のライヴということで録音はそこそこいい状態です。終盤のフォルテッシモの爆発は流石の迫力ですね。最後の消え入る静寂から温かい拍手。良いですね。実演では脳が初期化されるでしょうね。

続いて軍隊。ヴェーベルンの消え入るところの余韻が残っているところに、非常に柔らかい弦の音色で1楽章が始まります。テンシュテットが手綱を押さえ気味にオケをコントロール。主題に入り押さえながらもリズムが立って、生き生きとした推進力を帯びてきます。フォルテが柔らかいのが特徴でしょう。1楽章も後半に入り、だんだんオケが熱を帯びてくるのがわかります。柔らかいのに熱いオケ。マグマの胎動が聴こえてくるような不気味な迫力があります。1楽章の最後は9分の力ではありますが素晴しいふけ上がり。
2楽章は木質系の弦の音色と木管楽器の絡みが美しいはじまり。徐々に打楽器が加わって、にぎやかさを加え、大きなうねりの繰り返し、ティンパニと打楽器が期待通りの爆発。
3楽章のメヌエットが私の一押し、冒頭の一音から漲る力感。これぞテンシュテットでしょう。小節を利かせてフレーズのメリハリを浮かび上がらせますがかなり筋肉質なところがテンシュテットの真骨頂でしょう。本来舞曲であるメヌエットですが、これほどの迫力では踊ることはできませんね。
フィナーレはいきなり快速で入ります。想像したより遥かに速い。ただし、つんのめるような部分はなくオケも嵐のような超快速のテンシュテットに完全に追随。最後はフルスロットルで大爆発! 波動砲の衝撃でガミラスが吹き飛んだような大迫力で、嵐のような会場の拍手をさそいます。久々のテンシュテットの爆演ですね。

評価は[+++++]をつけざるを得ませんね。これはテンシュテットのハイドンの交響曲の代表的演奏と位置づけることが出来るでしょう。ライヴならではの迫力溢れる演奏で、同日ながら冒頭のヴェーベルンよりもいい音で録られており、録音も悪くありません。軍隊の爆発に撃たれたい方、必聴のアルバムです。

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tag : 軍隊 ライヴ録音 ヴェーベルン CD-R

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Daisy


Author:Daisy

ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

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