バルトルト・クイケン/オーケストラ・リベラ・クラシカ第44回定期演奏会(石橋メモリアルホール)

11月3日から8日まで約1週間、関西方面に旅に出ておりました。この後いつものように旅行記をアップします。そして帰着翌日の9日はチケットを取ってあったコンサートへ。

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オーケストラ・リベラ・クラシカ 第44回定期演奏会

皆様ご存知のとおり、オーケストラ・リベラ・クラシカ(OLC)はハイドンを集中的に取り上げているオケですが、私は前回の定期公演で初めて顔を出しました。その件は前回のレポートをお読みください。

2019/06/29 : コンサートレポート : 鈴木秀美/リベラ・クラシカ第43回定期演奏会(三鷹市芸術文化センター)

そして前回に続いて今回もチケットを取りましたが、お目当てはフラウト・トラヴェルソの名手、バルトルド・クイケンに他なりません。バルトルトのハイドンは冴え冴えとした名演ばかり。

2015/08/28 : ハイドン–室内楽曲 : 【新着】クイケン兄弟によるフルート三重奏曲集(ハイドン)
2015/07/19 : ハイドン–室内楽曲 : クイケン三兄弟によるフルート三重奏曲集(ハイドン)
2011/11/23 : ハイドン–室内楽曲 : クイケン・アンサンブルによる「ロンドン・トリオ」

フルートものには格別に造詣が深い当ブログのご意見番Skunjpさんをして「消え際の天才」と称されるバルトルト・クイケンのフルートを生で聴く千載一遇のチャンスということでチケットを取った次第。

この日のプログラムは以下のとおり。

ハイドン:交響曲第4番 ニ長調(Hob.I:4)
モーツァルト:フルート協奏曲 第1番 ト長調(K.313)
(休憩)
ヨハン・クリスティアン・バッハ:フルート協奏曲 ニ長調(W. C 79)
ハイドン:交響曲第104番「ロンドン」 ニ長調(Hob.I:104)

通常は協奏曲を1曲のところ、休憩前後に2曲の協奏曲がおかれるプログラム。そしてハイドンの交響曲は4番と104番「ロンドン」。ロンドンが取り上げられたということで、もうかなりの数の交響曲が演奏されたかと思いきや、配布されたプログラムによると、2002年に始まったこれまでの44回の公演で演奏されたのがハイドンの交響曲の半数くらいとのこと。加えて、このOLCの公演は鈴木秀美さんの体調や経済的理由により1年間お休みとなることが記されていました。104曲という数はそれだけインパクトのある数ということなんでしょう。

会場の石橋メモリアルホールは今回初めての訪問。もともと1974年に室内楽用のホールとしてオープンしたものが、2010年に建て替えられたものとのこと。上野学園の高層ビルの低層階に設けられたもので、設計は現代建築研究所。

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ホワイエは現代建築研究所らしく整然として白を基調としたクリーンな印象。ホワイエの要所の壁面にバブル全盛期に流行ったスタッコアンティコ風の仕上げの壁面があり妙に懐かしい気持ちになった次第(笑)

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この日の席は2階右側のバルコニー席から見下ろす感じ。

開演は15時。お客さんの入りは9割くらい。

1曲目のハイドンの交響曲4番では鈴木秀美さんは指揮台ではなく、オケの中央でチェロを演奏しながらの指揮。この曲は番号どおりごく初期の交響曲でおそらくモルツィン伯爵家の音楽長時代に作曲されたもの。メヌエットが終楽章にくる3楽章構成の小交響曲。編成はヴィオラ以下を1名に絞った小編成の弦楽器とホルン、オーボエが各2本。ホールの天井面が巨大な平面なせいか、オケの響きがやや鋭利に聴こえる感じ。演奏は快活そのもので、心配されたリズムも重くなく、素直に楽しめる演奏。1楽章はう少しテンポが速ければより爽快になるじゃないかしらと思いながら聴きました。なかなか良かったのがアンダンテ。不思議な音階のリズムに乗って静謐なメロディーが重ねられる初期のハイドンの独創的な音楽。生で聴くと楽器のメロディーの受け渡しの視覚的な情報もあって音楽の構造がよくわかりました。フィナーレのメヌエットはナチュラルホルンが重ねる響きが美しく聴き応え十分。鈴木秀美さんは中央でチェロでいきいきとオケをリードします。1曲目でしたがオケの精度も悪くなく、見事な演奏に拍手喝采。

続いて、お目当てのバルトルト・クイケンのソロによるモーツァルトのフルート協奏曲。この曲を聴くのは実に久しぶり。刷り込みはパイヤールが伴奏したランパル盤。1991年のモーツァルトのアニヴァーサリーイヤー前後によく聴いていました。ランパルの豊穣な音色とパイヤールの華やかな伴奏で実に華麗な演奏。ところがこの曲をクイケンが吹くと、一瞬にして峻厳な深みを感じさせるクイケンの世界に引き込まれます。もちろんフルートとフラウトトラヴェルソの違いはあるものの、ハイドンの名盤で聴かせたフワッとして慎み深いバルトルトの独特の世界が現れます。協奏曲のソロなのにことさら目立とうとするのではなく、淡々としながらも異常に冴え渡る感覚はこの人ならでは。あまりの素晴らしさにこちらの耳も冴え渡ります。各楽章のカデンツァはシンプルそのものでこちらもあっさりしたものですが、音色の深みは底知れず。絶品でした。

そして、休憩後はバルトルトの希望でプログラムに入れられたヨハン・クリスチャン・バッハのフルート協奏曲。モーツァルトやハイドン に大きな影響を与えたとされるクリスチャン・バッハは割と好きで手元にアルバムもかなりの数があります。この曲になって鈴木秀美さんの指揮も随分と穏やかになり、オケが実にしなやかになります。バルトルト・クイケンのフラウトトラヴェルソはモーツァルト以上に冴え渡り、もはや天上の音楽を聴くが如き至福の領域に。まるで清水の流れのように全く淀みのない清透なメロディー。速いパッセージでの音階も全く抵抗を感じない鮮やかさ。そしてフワッと自然に音が消え入る消え際の美しさ。クイケンの演奏は目眩くようなクリスチャン・バッハの作品によりマッチして、幽玄な世界に到達。こちらも絶品の演奏でした。もちろんお客さんもこの日1番の拍手でたたえました。何度かのカーテンコールの後、アンコールに演奏されたのはヨハン・セバスチャン・バッハのラルゴ。クリスチャンの華やかさから一変、まるで尺八でも聴くような求道的な張り詰めた演奏にお客さんものまれる素晴らしい演奏。いやいや、わざわざ聴きにきた甲斐がありました。やはりバルトルト・クイケンは素晴らしかったです。

クイケンの演奏の興奮も冷めやらぬ中、ステージ上の座席を増やして、最後のロンドン。序奏から大迫力で入りますが、何しろリズムが重い。ロンドンは名曲ではありますが、力任せの演奏はちょっとくどくなりがち。アクセントをかなり溜めがちなところがその印象を強くしていると思います。冒頭の4番やクリスチャン・バッハで鮮やかな演奏を聴かせていただけに、惜しいところ。クイケンのクリスチャン・バッハにブラヴォーと掛け声をかけたお隣の男性、2楽章の終わりで席を立ち帰ってしまわれました。

終演後、鈴木秀美さんから、OLCのコンサートを1年お休みすることなどが告げられた後、アンコールはオックスフォードのメヌエット。ザロモンセットの最後のロンドンの後に何を演奏しようかと考え、ハイドンがロンドンへの第1回旅行の最初にオックスフォードで演奏した曲を選んだとの説明に続いて演奏されました。畳み掛けるような前のめりの演奏でリズムもキレて迫力十分。これは素晴らしかった。

この日のコンサート、ハイドンの交響曲をコンサートで全曲演奏することがいかに大変なことかを実感させられるコンサートでした。鈴木秀美さんの体調不良もあるとのことですが、経済的理由もあると付け加えられており、商業的に100曲以上の交響曲を演奏、録音することはやはり大事業。前回のコンサートに初見参し、今後は顔を出そうということで出かけたコンサートでしばらくお休みになってしまうという巡り合わせからそう感じた次第。

さて、生で二度体験したOLCですが、勢いに乗った時の良さも体験したので、未入手のアルバムを集めて色々聴いてみようかと思います。



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tag : 交響曲4番 ロンドン オックスフォード モーツァルト ヨハン・クリスチャン・バッハ

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Author:Daisy

ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

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(2019年12月31日)
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