ロト/読響の十字架上のキリストの最後の7つの言葉(サントリーホール)

昨日7月1日は、読響のコンサートにサントリーホールへ行ってきました。

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読売日本交響楽団:第550回定期演奏会

昨年末N響で第九を振って、日本でもちょっとメジャーになったフランソワ=グザヴィエ・ロト。その話題のロトが読響に客演しハイドンの十字架上のキリストの最後の七つの言葉を振るということでチケットをとってあったもの。もちろんハイドン目当てもあってこのコンサートのチケットをとったんですが、実はハイドン以外もブーレーズのノタシオンにベルクのバイオリン協奏曲と魅力的なプログラムということで、正直にいうと本当はブーレーズ目当てでとったもの。

当ブログのコアな読者の皆さんならご存知のことと想いますが、ブーレーズとかデュティユーとかメシアンとか嫌いではありません。数年前のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンで来日したアンサンブル・アンテル・コンテンポランの精緻な演奏に圧倒されて以来、ブーレーズにも目がありません。ハイドンは録音でもそこそこ楽しめますが、ブーレーズの生の演奏の衝撃は録音とは異次元でした。キリスト教徒が実は仏像も大好きみたいな変な流れになってしまいましたが、もちろんロトのハイドンとはいかなるものかという興味もあります。

いつもながらギリギリまで会社で仕事と奮闘しつつ、エイやと仕事をぶん投げサントリーホールに向かいます。こうした流れが定着しているせいか、嫁さんがホール内のドリンクコーナーでサンドウィッチと赤白ワインを注文して待っててくれます。

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開演まであまり間がないのでサンドウィッチをワインでさらりとかきこんで、いざ座席へ。

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座席は最近定番のRA席の1列目。オケを上から俯瞰できるお気に入りの席です。ステージ上には1曲目のブーレーズのノタシオンに合わせて大オーケストラの布陣。特に後方にパーカッション群がずらりと並び壮観です。

ほどなく開演時間となり、オケのメンバーが入場してきます。この日の観客の入りは6割ほどでしょうか、読響にしては珍しく空席が目立ちます。スクロヴァチェフスキのブルックナーなどでは満席となりますので、やはり現代音楽とハイドンでは興行的にはなかなか厳しいのでしょうか。

オケと大勢のパーカッション担当が入場したところで、フランソワ=グザヴィエ・ロト登場。気のいいフランスのおじさんという感じ。派手な色のネクタイにスーツというあんまり指揮者っぽくないいでたちで、ブーレーズの超巨大な指揮者用楽譜の前に立ち、指揮棒無しで振り始めます。

解説によればノタシオンはもともと1945年にピアノのための12のノタシオンが作曲され、それから31年後の1976年、バイロイトで指輪を振ったブーレーズはノタシオンにオーケストレーションを施すことを思い立ち、1978年に1番から4番を完成、その後1984年に改定、また最後に7番が加わり5曲となったもの。作曲者により1、7、4、3、2あるいは1、3、4、7、2の順番で演奏されるよう推奨され、この日は前者での演奏。

ロトは大きな身振りでオケに指示を出しながらブーレーズの精緻すぎる楽譜を巧みに音にしていきますが、冒頭から読響はちょっとリズムが重め。ただしRA席とオケを上から俯瞰するように眺めながら各楽器が巧みに音を紡いでゆく様子を見るのはまことにスペクタクルで、実に興味深い。各楽器が決して同じフレーズを演奏しないのにリズムの骨格だけは共有しながら巨大な音楽を作っていく、ブーレーズ独特の音楽の人間離れした造りは圧巻。音だけで聴くのとは別格の面白さです。やはりアンサンブル・アンテル・コンテンポランの研ぎたてのカミソリのような超精緻な演奏の印象が耳に残っているので、各奏者のわずかな入りのばらつきやキレきらないところが耳についてしまいます。それでも曲が進むにつれて、熱気と殺気のようなものをロトが引き出し、最後の曲を終えるクライマックスでは風圧のような迫力を伴ってオケが炸裂。生演奏ならではの迫力を味わえました。

もちろん少々入りの悪い会場からも万雷の拍手。ブーレーズがわかるコアなお客さんだからでしょうか、読響メンバーの熱演をたたえていました。いやいや、この曲を演奏するのは並のことではありません。ロトも読響には前月、幻想交響曲で初登場とのことですが、続いてブーレーズを持ってくるとはあっぱれです。

ステージ上は次のベルクのヴァイオリン協奏曲に向けて配置をかなり修正します。ヴァイオリン独奏は郷古廉(ごうこ すなお)さん。この曲も生で聴くのは初めて。録音ではクレーメル/コリン・デイヴィス盤、スターン/バーンスタイン盤、ブラッハー/アバド盤などを愛聴しています。録音ではかなり静謐で精緻な印象を持っていたのに対し、意外と大きな音量でグイグイいくのに最初は面食らいました。精緻さという狙いではなくかなり雄弁。ソロの郷古さんも悪くありませんが、オケの雄弁さにちょっとインパクト負けしていなくもない感じ。透き通るような高音の音色で最後は天上に昇華していく様子は流石なところ。もちろん拍手喝采に包まれますが、ロトはさらりとかわして引っ込んでしまいます。

休憩を挟んで、いざハイドンです。

前半のステージいっぱいに配置されたオケとたくさんのパーカッションが休憩時間いっぱいを使って片付けられ、休憩終了間際に、ステージ中央部に小さくまとまった小編成オーケストラに配置が修正されます。よく考えるとプログラムの前半に大編成オケによる難曲2曲、そして休憩後は小編成オケによるハイドンと、普通はあまり組まないプログラム。後半迫力不足に感じるリスク大な構成です。

しかし、その心配は杞憂でした。ロトが組んだこのプログラムの真意に観客もすぐに気付いたでしょう。

序奏が始まるとすぐに、実に濃密なロトの音楽に釘付けになります。大きなアクションでオケを巧みに操りながら、このハイドンの名作を劇的に、かつ洗練されたモダンな表現も織り交ぜながらグイグイ煽っていきます。この曲を完全に掌握して、音楽は迫力のみではないとでも言いたげにオケを実に巧みに操ってイキイキとした音楽を作っていくではありませんか。これには観客もいきなり引き込まれ、みなさんオケのリズムに乗りながらハイドンの書いた名旋律を味わっていました。すべて緩徐楽章の7つのソナタを緊張感を保ちながら、やはり雄弁にデュナーミクの幅を大きくとりながら描いていきます。先日聴いてよかったテルプシコルド四重奏団の演奏などは、抑えた表現の中に音楽が息づいていましたが、こちらは大きな抑揚によって陰影の濃いわかりやすい表情の音楽。くどい感じはなく、上品な深い色を主体としたダイナミックな構図の油彩のような表現。面白かったのはピチカートの印象的な第5ソナタ。ピチカートの音量を抑えると同時にテンポも落とし、その間に鳴るメロディーがくっきりと印象的に浮かびあがるところ。音色に関する鋭敏な感覚を垣間見せる表現でした。終盤の第6、第7ソナタでは大波のうねりのような盛り上がりを見せ、そして最後の地震では、炸裂ではなく古典の均衡の中での感興で聴かせるあたり、流石なセンスでした。この曲でもオケを俯瞰しながらき、金管、木管がどこで音を重ねてくるのか手に取るようにわかり非常に勉強になりました。地震の場面のみ活躍するティンパニも渾身の演奏。今日はいつもの岡田さんではありませんでしたね。

ロト渾身の十字架に会場は割れんばかりの拍手。いやいや素晴らしかった。前半のブーレーズ、ベルクはもっと素晴らしい演奏はあるでしょうが、後半のハイドンは滅多に聴く事ができない素晴らしい感動を味わわせてくれました。かなり個性的な音楽をつくってくる人ですが、フランス人らしい、カンブルランとはまた違ったエスプリを感じさせながらも、古典期としてもふさわしいバランス感覚があり、この人のハイドンは期待できます。放送で見た第九もよかったので、今度は天地創造か四季を聴かせてほしいものです。

正直ブーレーズ目当てでチケットをとりましたが、ハイドンに圧倒されたコンサートでした。

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演奏の余韻を楽しみながら外に出ると、涼しい風が吹いていました。いつものようにホール向かいのplatesでパスタセットを楽しんで帰りました。

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食べログ:プレーツアーク森ビル店

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カジュアルで美味しい良いお店です!

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Daisy


Author:Daisy

ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

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(2019年3月31日)
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