【新着】アルゲリッチ、マイスキーの協奏曲ポーランド放送ライブ(ハイドン)

久々にCDを取り上げます。しかも新譜です!

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マルタ・アルゲリッチ(Martha Argerich)のピアノによるハイドンのピアノ協奏曲(Hob.XVIII:11)、ミッシャ・マイスキー(Mischa Maisky)のチェロによるチェロ協奏曲1番(Hob.XVIIb:1)などを収めたアルバム。伴奏はアグニェシュカ・ドゥチマル(Agnieszka Duczmal)指揮のポーランド放送アマデウス室内管弦楽団(Amadeus Chamber Orchestra of Polish Radio)。収録はピアノ協奏曲が1992年4月13日、チェロ協奏曲が1993年11月26日、ポーランド放送S1コンサートスタジオでのライヴ収録。レーベルはポーランドのフレデリック・ショパンインスティテュート(Narodowy Instytut Fryderyka Chopnia)。

アルゲリッチのハイドンのピアノ協奏曲はこれまでに2種の録音があります。1980年に録音したロンドンシンフォニエッタを自身で振ったもの(伊リコルディ、EMIなど)と、1993年に録音したイェルク・フェルバーの振るハイルブロン・ヴュルテンベルク室内管との録音(DG)。いずれもアルゲリッチのキレキレのピアノが楽しめる素晴らしい録音。前者はブログを始めたばかりの頃に記事にしています。

2010/07/10 : ハイドン–協奏曲 : 連日のピアノ協奏曲、今日はアルゲリッチにノックアウト

一方、マイスキーのハイドンのチェロ協奏曲にはよく知られた1986年にヨーロッパ室内管を振った1番、2番、ヴァイオリン協奏曲のライヴ(DG)の他、1983年録音のロンドンシンフォニエッタを自身で振った1番、2番(伊リコルディ、CARRERE)の他、1986年にフェルディナント・ライトナーの振るN響に客演した時のライヴ(KING INTERNTIONAL)などの録音があります。N響との演奏は記事に取り上げています。

2013/09/23 : ハイドン–協奏曲 : ミッシャ・マイスキー/N響のチェロ協奏曲1番ライヴ(ハイドン)

アルゲリッチもマイスキーも90年代以降ハイドンの録音は見当たりません。それぞれハイドンを複数回録音していた時期の貴重なライヴということで、このアルバムには期待も高まるわけですね。

このアルバムでタクトをとるアグニェシュカ・ドゥチマルは1946年生まれのポーランドの女性指揮者。Wikipediaなどによるとスカラ座に初めて登場した女性指揮者として知られているそう。ポーランドのポズナニ州立高等音楽学校を卒業しポズナニフィルのアシスタントコンダクター、ポズナニ歌劇場の指揮者などを経験。学生だった1968年に組織したオーケストラが1977年にポーランド放送のオケとなり、のちにこのポーランド放送アマデウス室内管弦楽団と名乗るようになったとのことです。

このアルバムは、1991年に完成したポーランド放送S1コンサートスタジオのオープンを記念して音楽収録のトップに招かれたアルゲリッチが企画した一連のコンサートシリーズの中の演奏のライヴ収録です。

Hob.XVIII:11 Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [D] (1784)
この演奏を聴く前に、リコルディの録音とDGの録音をちょっと聴き直した上で聴き始めました。前2者がセッション録音なので、録音はそちらの方がいいのですが、このアルバムの演奏、ちょっと尋常でない勢いを感じます。まずはドゥチマルの振るアマデウス室内管が冒頭からちょっと暴走気味なほど前のめりの快速テンポで入ります。アルゲリッチのキレを迎え撃つ気満点のエネルギー。そのオケのエネルギーがアルゲリッチを触発したのか、アルゲリッチもこれまでの録音のキレのいい入りとは打って変わって、最初から闘志むき出しでキレキレな入り。1ラウンドのゴングが鳴ると同時に壮絶な打ち合いになった試合のごとき様相。流石に両者ともテクニックは十分とみえて音楽が破綻することなくスリリングな掛け合いが続きますが、どちらも一向にテンションを緩めず1ラウンド、もとい1楽章は見応え十分な撃ち合い。手に汗握るとはこのことです。1楽章のカデンツァは意外にさらりとこなしたのが印象的でした。
2楽章はドゥチマルも落ち着いた序奏で今度はゆったりとアルゲリッチにもリラックスするよう促すかのような入り。もちろんアルゲリッチもそれに応えて輝かしいメロディラインを落ち着いて描いてゆきます。録音のバランスが通常の協奏曲の録音よりもピアノをアップしたものだけに、クッキリと陰影の深い音楽が流れます。ドゥチマルもやや叙情的なサポートで抑揚を大きくとって感情を込めてきます。驚いたのが2楽章のカデンツァ。アルゲリッチはここぞとばかりに美音を散りばめ、きらめく夜空のようなブリリアントなカデンツァを披露。ここを聴きどころとするために、1楽章であえてさらりとこなしたのでしょう。
フィナーレは火花バチバチを期待せずにはいられません。もちろん期待通り、3ラウンドの撃ち合いに入ります。ここにきてアルゲリッチは完全に主導権を確保。キレのいいアクセントは期待通り、若干曲芸的雰囲気すら感じさせる神業の連続は流石アルゲリッチ。スリリングな演奏とはこの演奏のこと。最後はキレまくって終わり、最後のフィニッシュはブラボーと盛大な拍手にかき消されます。

怒涛の拍手にアンコールのスカルラッティのソナタ(K141)が割って入りますが、この曲もアルゲリッチのタッチのキレを聴かせる曲で全盛期のアルゲリッチのライヴの凄さを実感した次第。再び曲の余韻が拍手にかき消され、この日のS1コンサートホールの聴衆の興奮がそのまま収められています。

Hob.VIIb:1 Cello Concerto No.1 [C] (1765–67)
続いてマイスキーのチェロ協奏曲。ドゥチマル、今度はアルゲリッチの時ほどオケを煽らず、平常心の入り。ただしマイスキーの伸びのあるボウイングを引き立たせるためか、オケはあえて表情を抑え気味に入ります。特に低音弦の伴奏はリズムをクッキリと浮かび上がらせるような感じ。マイスキーも徐々にボウイングにゆとりが出てきていい感じに落ち着いた演奏。これはこれで余裕を感じさせる円熟の演奏として聴きごたえ十分。1楽章のカデンツァに入ってマイスキーのスイッチ・オン! 周りの状況がわかってマイスキーもようやくエンジンがかかってきました。
深いフレージングが印象的な2楽章はマイスキーとオケがゆったり淡々と演奏を重ねていきます。この録音もソロであるチェロを比較的大きな音量で収録し、バランスもソロ重視。後半音量を落としたところの巧みな表情付けが曲の深みを増します。この辺りは流石マイスキー。そしてカデンツァではテクニックではなく音楽が漂う魅力で聴かせる見事な手腕。
そしてフィナーレはオケの方もキレて挑んできました。明らかにリズムの刻みをクッキリとさせるオケに対し、マイスキーもそろそろ本気でボウイングのキレさせてきます。それに対しオケもボウイングが白熱。この演奏は終楽章に聴きどころを持ってきた感じ。最後はスリリングにフィニッシュ。アルゲリッチとは別の日の録音ですが、観客の盛り上がりはこの日も凄いものがありますね。拍手が手拍子に変わると、この日も拍手を止めるようにアンコールのバッハの無伴奏チェロ組曲2番のサラバンドが演奏されます。マイスキーのチェロがうなりを伴って鳴りまくる神業。最後はハイドンで熱狂した観客が静寂に包まれる神々しい雰囲気。驚いたのは、アンコールでバッハをあと2曲、都合3曲も続いたこと。ハイドン本編と同じくらいの時間アンコールを弾いていたことになります。

ポーランド放送S1コンサートホールのオープン直後の貴重なライヴ。アルゲリッチにマイスキーとスターを招いての記念コンサートだけに、聴衆の熱狂度合いも桁違い。録音を通してもその熱気が伝わってきます。当日会場に居合わせた聴衆が羨ましくもあります。この録音は25年以上経ってリリースされるべき価値があるものと断じます。演奏が終わり、拍手からアンコールまでが途切れずに収められていることもライヴ好きな私にとってもありがたいこと。評価は両曲とも[+++++]とします。オススメです。



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tag : ピアノ協奏曲XVIII:11 チェロ協奏曲 ライヴ

ジョージ・マルコム/マリナー/アカデミー室内管のハープシコード協奏曲(ハイドン)

いいLPが立て続けに手に入ります。

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ジョージ・マルコム(George Malcolm)のハープシコード、ネヴィル・マリナー(Neville Marriner)指揮のアカデミー室内管弦楽団(Academy of St. Martin-in-the-Fields)の演奏で、ハイドンの序曲(Hob:Ia.7)、ハープシコード協奏曲(Hob.XVIII.11)、J. C. バッハのハープシコード協奏曲イ長調の3曲を収めたLP。収録はLPには記載されておりませんが、同内容の演奏を収録したEloquence AustraliaのCDの情報によると1968年5月にロンドンのキングスウェイホールでのセッション録音とのこと。LPは米London盤。

マリナーのハイドンの録音は名前付交響曲集や主要ミサ曲、天地創造に四季など多岐にわたりますが、中でも協奏曲の伴奏はかなりの数があります。手元にはほとんどの録音が揃っていると思っていたところ、最近オークションでこのアルバムを見かけ、所有盤リストをチェックすると未知のアルバムであることが判明。そろりと落札して手に入れた次第。しかも録音が60年代とマリナーの録音の中では古い方のものということで、マリナーのハイドンの原点のようなものが見えてくるのではないかとの期待も膨らみます。

ちなみに、当ブログではマリナーの演奏はかなり取り上げています。

2018/03/14 : ハイドン–交響曲 : マリナー/アカデミー室内管の99番、102番(ハイドン)
2012/10/26 : ハイドン–交響曲 : ネヴィル・マリナー/アカデミー室内管の「悲しみ」
2012/08/21 : ハイドン–交響曲 : マリナー/アカデミー室内管の86番
2011/08/10 : ハイドン–声楽曲 : 【お盆特番1】マリナー/ドレスデン・シュターツカペレのネルソンミサ
2011/04/24 : ハイドン–協奏曲 : バリー・タックウェル/マリナーのホルン協奏曲
2011/03/03 : ハイドン–協奏曲 : ハーデンベルガー、マリナー/ASMFのトランペット協奏曲
2011/02/27 : ハイドン–オラトリオ : フィッシャー=ディースカウフル登場、マリナー/ASMFの天地創造-2
2011/02/27 : ハイドン–オラトリオ : フィッシャー=ディースカウフル登場、マリナー/ASMFの天地創造
2010/12/06 : ハイドン–声楽曲 : マリナー/ドレスデン・シュターツカペレの戦時のミサ
2010/10/03 : ハイドン–協奏曲 : リン・ハレルのチェロ協奏曲集

Hob.Ia:7 Overture [D] (1777)
いつものようにLPをVPIのクリーナーで綺麗にクリーニングして針を落とすと、最初の序曲の瑞々しい響きに耳を奪われました。録音は万全。広々とした空間にオケの響きが広がります。自宅が響きの良いキングスウェイホールになったような素晴らしさ。もともと推進力に満ちた序曲ですが、この演奏のすごいのは弦楽器の異次元のキレ味。胸のすくような素晴らしい推進力と爽快極まりないヴァイオリンのボウイングに驚きます。ここまでの愉悦感を感じさせる弦は滅多に聴けるものではありません。マリナーの演奏はモーツァルトを含めて随分聴きましたが、弦の素晴らしさにおいてこの演奏に勝るものはありません。いきなり絶品の演奏に痺れます。

Hob.XVIII:11 Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [D] (1784)
続いてハイドンのクラヴィーア協奏曲の最高傑作が続きます。マリナーの率いるアカデミー室内管の弦楽陣は、この曲の序奏でもキレ味抜群。ピアノやフォルテピアノの演奏に慣れてはいますが、ジョージ・マルコムのハープシコードはマリナーに負けずにリズムのキレが良く、繊細ながらオケをリードすることで十分にソロの役割をこなしています。音量および表現力の幅の大きいオケに対して、マルコムも永遠に続くようなトレモロの繊細さとデリケートな表情づけでオケに劣らぬ存在感を発揮しているのがすごいところ。マリナーもそれを意識してか、疾走感で先行するハープシコードをサポートする姿勢に徹してソロを引き立てる余裕を見せます。カデンツァではマルコムの妙技が見事に決まります。
2楽章は少し速めのテンポで美しい響きのオケがリード。マルコムはハープシコードらしくテンポをあまり揺らさずに淡々と美しいメロディを描いていくことで曲の美しさを際立たせます。マリナーも淡々と応じますが、オケの深い響きの中に繊細なハープシコードの音色が漂う感じが絶妙で、現代楽器にハープシコードの演奏も捨てたものではないとの印象を残します。
終楽章は速めにくると思っていましたが、思った以上に表情豊かな入り。そして予想通り、ギリギリのところまでテンポを上げて推進力を最大限に発揮します。そんな中でもかなりデュナーミクの幅をとってくっきりと表情をつける余裕があります。刻々と変化していく表情を実に克明に表現しながら、どんどん曲が進んでいく快感。この終楽章の表情の変化の見事さもこの演奏の聴きどころ。力任せになりがちなフレーズに十分な余裕を持って臨み、曲の深みを表現する匠の技と言っていいでしょう。このコンチェルトも見事な演奏でした。

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最近レビューがLPばかりですが、珍しくこのアルバムはCDの方もEloquence Australia盤が現役です。手元にはLPしかありませんが、この演奏もLPの録音の素晴らしさがあって、これだけの素晴らしい演奏を楽しめるわけです。CDの方は未聴ですが、若きマリナーが主兵アカデミー室内管からどれだけ素晴らしい響きを引き出していたかは伝わるものと思います。近年の古楽器による演奏は、様々なスタイルで新たな響きを引き出していますが、どっこいこうしたオーソドックスな演奏の最高峰を聴くと、スタイルはともかく、古楽器による演奏も音楽としてまだこの高みに達していないのかもしれないと思うようになります。マリナーのこの演奏、一聴をお勧めします。評価は[+++++]とします。



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tag : ピアノ協奏曲XVIII:11 序曲

ヴァレンティナ・カメニコヴァのピアノ協奏曲集(ハイドン)

LPが続きますが、今度はマイナー盤。

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ヴァレンティナ・カメニコヴァ(Valentina Kameníková)のピアノ、リボール・フラヴァチェク(Libor Hlaváček)指揮のヴィルトゥオージ・プラジェンセス(Virtuosi Pragenses)の演奏で、ハイドンのオルガン協奏曲(Hob.XVIII:1)とピアノ協奏曲3曲(Hob.XVIII:4、XVIII:11、XVIII:3)の4曲を収めたLP。 収録は1974年2月、5月、9月にプラハの”DOMOVINA"スタジオでのセッション録音。レーベルはSUPRAPHON。

最近ディスクユニオンで仕入れたLP。ピアニストも指揮者もオケも未知のアルバム。こういったアルバムに針を落とす瞬間はドキドキします(笑) いつものようにVPIのクリーナーで綺麗に洗浄して針を落としてみると、実にしなやかな音楽が流れ出てくるではありませんか。特にカメニコヴァのピアノがしっとりと染み入るような優しい演奏。「当たり!」ですね。

ということでいつものように奏者についてさらっておきましょう。

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ピアノのヴァレンティナ・カメニコヴァは1930年、ソ連の黒海沿岸の街オデッサ(現ウクライナ)の音楽一家に生まれ、戦時中はユダヤ系だったことからシベリアに避難してピアノを学びます。戦後、オデッサ音楽院、モスクワ音楽院に進み、1954年に結婚後、1957年にチェコスロバキアに家族とともに移住。1959年から61年までプラハ芸術アカデミーの大学院で学んだ後、1963年からはプラハ音楽院、プラハ芸術アカデミーで教職に就き、録音も多数残したとのこと。特にロシア音楽の正当な解釈により注目すべき存在だったということです。1989年、57歳の若さで亡くなっています。今日取り上げるアルバムの録音が1974年ということでカメニコヴァ43歳での録音になります。

指揮者のリボール・フラヴァチェクの方はほとんど情報がなく、通常指揮者を置かないプラハ室内管などのアルバムにクレジットされたものがあるくらいで、リーダーとして活躍した人だろうと想像しています。

さて、このアルバム、先に触れたように実にしっとりとしたピアノが妙に染み入る見事な演奏なんですね。レビューに入りましょう。

Hob.XVIII:1 Concerto per il clavicembalo(l'organo) [C] (1756)
この曲は通例オルガンで演奏される曲。録音は年代なりでしょうか。オケは響きが少々濁り気味ながらオーソドックスにテンポよく序奏を奏でます。ピアノソロは協奏曲の録音としては控えめな音量で慎ましやかに入りますが、聴き進めていくうちに音量の問題ではなく、しっとりとピアノがオケに寄り添うような優しい演奏であることに気づきます。これが実に心地よい。グイグイ引っ張る演奏が多い中、このオケと寄り添って、時に少しリードし、時にリードされという微妙な掛け合いの面白さが浮かび上がります。これぞ燻し銀の演奏という感じ。逆にオケはメロディーラインをくっきりと描いていくので、ピアノの表情の微妙な変化がわかりやすいですね。カメニコヴァが落ち着き払ってソロのデリケートな表情の表現に集中しているのがわかります。
続くラルゴではオケもしっとりとした表情になり、ピアノはさらに染み渡るように慈しみ深い表情になります。1楽章よりもオケの表情が豊かになり、音楽に深みが増します。オルガンの演奏と違ってピアノによるこのラルゴはメロディーが綺羅星のごとくまばゆく輝く絶美の音楽であることがわかります。しかも驚くのがカデンツァの穏やかさ。技巧的要素は皆無。ただただ美しい音楽が流れます。
フィナーレはオケの表情が再びクッキリと引き締まり、ピアノもリズミカルに応じます。この自然なリズム感、ちょっと雰囲気は異なりますがハスキルを思わせる自然なタッチ。指のフリクションというかモーメントが全くなく実に軽やかに音階を刻みます。まさに魔法のタッチと言っていいでしょう。そう、ハスキルをイメージさせる自然さがカメニコヴァの独特の音楽の印象を作っているんですね。

Hob.XVIII:4 Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [G] (c.1770)
入りのリズムの面白さが特徴の曲。カメニコヴァの演奏のツボが何となくわかってきたので、安心して聴くことができます。ただ、この曲、ピアノの調律がちょっと甘い感じでせっかくのカメニコヴァの自然なタッチにどっぷりと浸かることができません。起伏に富んだメロディーが進んでいくうちに幾分か慣れてきます。オケの方もカメニコヴァの自然さとタメを張るくらい淀みない流れの良さを感じさせるのがわかります。そしてこの曲でもカデンツァは詩的で可憐なもの。
2楽章のアンダンテ・カンタービレに入ると前曲同様、穏やかさに磨きがかかり、呼吸が深くなって磨き抜かれた美しさが際立ちます。この柔らかな音楽の魅力はカメニコヴァの真骨頂でしょう。ハスキルのサラサラとした疾走感とは逆にしっとりと落ち着いた深みが魅力ですね。そしてあっという間ながら美しさを極めたカデンツァも見事。
フィナーレはカメニコヴァとフラヴァチェクの自然な掛け合いが双方いい勝負。オケの方もカメニコヴァに負けず劣らず自然な呼吸の魅力を発散して洗練の極みに達します。ただ自然な演奏とはレベルが違いますね。

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Hob.XVIII:11 Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [D] (1784)
LPの2枚目。ご存知の通り、最も有名な協奏曲ですが、この曲に至って、あまりの流れの良さにこのコンビの実力がよくわかった次第。全く淀みのない音楽の流れの良さはただならぬもの。自然な起伏をつけながらピアノのタッチもオケのソロも実に気持ちよく流れます。ピアノのメロディーをよく聴くと先ほどはハスキルを感じさせましたが、この流れの良さは今度はアンスネスのよう。透徹したタッチが素晴らしいですね。
緩徐楽章の素晴らしさはこれまで通り。大きな流れの起伏とディティールの響きの美しさ、そして淀みのない清透さ。カメニコヴァのタッチは魔法のように滑らかさを極め、この曲のカデンツァでようやく素晴らしい技巧を聴かせますが、それとて自然な響きに包まれテクニックの誇示のような印象は皆無。
フィナーレは言うことなし。ただただ音楽の流れに身を任せて至福のひと時を味わいます。自然な音楽の流れの中の表情のデリケートな変化の妙。絶品です。

Hob.XVIII:3 Concerto per il clavicembalo(l'organo) [F] (1765)
最後に軽めの曲を持ってきました。まるで有名レストランで次々と料理を味わうような変化を楽しみます。もうメロメロ(笑) 穏やかながら千変万化する表情の多彩さ。どの瞬間も美しく研ぎ澄まされた最高のハイドン。メロディーの美しさを極めたモーツァルトのコンチェルトとは異なり、ウィットも含めて構成や表情の多彩さを味わえるハイドンのコンチェルトの究極の演奏。特にふとした瞬間に訪れる軽さの表現は秀逸。オケも柔らかな響きで応じていますが、1曲目で感じた響きの濁りはどこかに消え去り響きの純度が突き詰められています。美しすぎる瞬間の連続に昇天。
2楽章のラルゴ・カンタービレ。ここにきてオケもピアノも完全にゾーンに入ってます。奏者自身が完全に無になって音楽と一体化。ハイドンの魂が乗り移っているよう。静かに満天の星を眺める心境。幸福感に包まれます。
最後の楽章はホルンの柔らかい響きが加わりながら鮮明にキリリと引き締まり、前楽章が音量をかなり抑えていたことがわかります。最後は流れるようなカメニコヴァのタッチの見事さ、オケの鮮度、転調の面白さ、そして表情の絶妙な変化とこのアルバムの特徴がフルに発揮されて終わります。

絶品です。たまたま手に入れたアルバムですが、ハイドンのクラヴィーアのための協奏曲の最高の演奏の一つでしょう。キレキレの演奏でもなく、超個性的な演奏でもなく、オーソドックスな演奏の最高の姿。ハイドンの書いた音楽の美しさ、構成の面白さをとことん味わえる燻し銀の演奏。ピアノのヴァレンティナ・カメニコヴァを知る人は少ないかもしれませんが、このアルバムによって、その素晴らしい音楽が心に刻まれました。LPの再生環境がある方はぜひ手に入れて聴いてみてください。評価はもちろん全曲[+++++]とします。



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tag : ピアノ協奏曲XVIII:1 ピアノ協奏曲XVIII:4 ピアノ協奏曲XVIII:11 ピアノ協奏曲XVIII:3

ニキタ・マガロフのピアノ協奏曲XVIII:11(ハイドン)

珍しいアルバムを見つけました。ニキタ・マガロフのピアノ協奏曲です。この触れ込みでギュンター・ヴァントの伴奏のものだろうと思った方はかなりのハイドン通ですが、今回見つけたのはその演奏ではありません。

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ニキタ・マガロフ(Nikita Magaloff)のピアノ、アゴスティーノ・オリツィオ(Agostino Orizio)指揮のブレシア・ベルガモ国際音楽祭室内管弦楽団(Orchestra da Camera del Festival Internationale di Bresia e Bergamo)の演奏で、ハイドンのピアノ協奏曲Hob.XVIII:11とボッケリーニの交響曲ニ短調Op.12-4「悪魔の家(La Casa del Diavolo)」の2曲を収めたアルバム。収録の詳細はこのアルバムには記載されていませんが、ハイドンに関しては同じソースだと思われる別のアルバムには1988年2月21日、ミラノのミラノ音楽院のヴェルディ・ホール(Sala Verdi)でのライヴとの記載があります。レーベルははじめて手に入れる、φωνη fonè。なんと読むのかわかりません(笑)

ニキタ・マガロフのアルバムは少し前に取り上げていて、その気品に溢れた演奏が印象に残っています。

2017/02/18 : ハイドン–ピアノソナタ : ニキタ・マガロフのピアノソナタXVI:48(ハイドン)

前回取り上げたソナタの演奏が1960年とマガロフの壮年期である48歳頃の録音だったのに対し、今回取り上げる協奏曲は亡くなる4年前の76歳頃の録音ということで、時代がかなり下ってからのもの。演奏スタイルがどのように変化したかも興味深いところでしょう。

気になるのは見たことのないレーベルであるφωνη fonè。もう消えてしまったレーベルかと思いきや、バリバリ現役のレーベルでした。

Fonè Records

レーベルは創立30年近くになるクラシックとジャズを主体とする音質にこだわったレーベル。ウェブサイトによると、現在はフィレンツェとピサの間にあるペッチョリ(Peccioli)という田舎町が本拠地のようです。SACDやLPまでリリースしている本格的なレーベルでした。

今日取り上げるアルバムは廃盤のようですが、この録音の1楽章のみ別途リリースされているベスト盤に収録されていますので、自信のある録音ということなのでしょうね。確かに録音にはこだわりを感じます。TELARKのようなダイナミックさを求める録音ではなく演奏のライヴ感を重視した録音。

Hob.XVIII:11 Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [D] (1784)
いきなり透明感の高いオーケストラの響きが広がります。指揮者のアゴスティーノ・オリツィオは知らない人ですが、オーケストラコントロールはキリリと引き締まったリズムを基調とした堅実でキレもあるもの。オケは迫力十分。驚くのがニキタ・マガロフのピアノの瑞々しさ。落ち着いたテンポで堂々としていながら、キラメキ感に満ちた素晴らしいタッチ。70歳代の演奏ゆえリズムに鈍さを感じるところもなくはないのですが、それを上回る覇気に満ちた演奏。ハイドンの曲を味わいながら演奏しているのがよくわかります。フレーズの一つ一つを丁寧にこなしながら、全体にしっかりとしたエネルギーが込められ、実に気品と風格に溢れた演奏。まるでベートーヴェンを演奏しているような推進力と覇気に圧倒されます。オケの方もマガロフの気合に触発されて輝きを増していきます。名ピアニストの力演を支えよとする、こちらも奏者のエネルギーを感じます。カデンツァでもマガロフの放つオーラにホール中の聴衆が集中していることがわかります。
続くアダージョは力をスッと抜いたオケの伴奏の爽やかさに気を取られているうちにマガロフの磨き抜かれた美音によるメロディーが入ります。特に高音の澄んだ響きの美しさが印象的。老練なタッチから生み出されるしなやかな音楽。マガロフの意を汲んでか、オケが実に情感溢れるいい伴奏を聴かせます。ピアノに劣らず雄弁な伴奏にマガロフも高揚している様子。繰り返しゆったりと訪れる波のような起伏が音楽を心地良いものに感じさせます。そしてとどめはあまり聴いたことのない実に気品に溢れたカデンツァ。マガロフ自身のものでしょうか。
フィナーレは予想通り落ち着いた、そしてじっくりとした演奏。噛みしめるようにピアノとオケが旋律を展開させていきながら、ハイドンのアイデアの変化の面白さを次々と繰り出していきます。それぞれのフレーズに揺るぎない意味が込められていることがよくわかる演奏。ピアノからオケ、オケからピアノへ受け渡されるメロディーの面白さを存分に味わえます。マガロフのピアノのタッチはどんどん冴えてきて最後は鮮やかさで観客を圧倒。最後の音が消えるのを待たずに万雷の拍手に包まれます。

続くボッケリーニもはじめて聴く曲ですが、変化に富んだ奇妙な展開が繰り返される実に興味深い曲。ピアノが入る訳ではないので、オケの力量を示すものですが、こちらも見事なコントロールで拍手喝采。

ニキタ・マガロフの晩年の充実した演奏をたっぷりと楽しめる素晴らしいアルバムでした。堂々とた正統派のピアノの揺るぎない響きがこれほどまでに音楽を活き活きとさせる稀有な事例と言っていいでしょう。このアルバムはネットショップを探しても見当たらないことから既に廃盤かもしれませんので、なかなか入手は難しいかと思いますが、こうしたアルバムこそ、手に入るようにしておく価値がありますね。当ブログがその真価の証を刻んでおくべきでしょう。見かけたら是非入手をおすすめいたします。評価は[+++++]とします。

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tag : ピアノ協奏曲XVIII:11 ライヴ録音

【新着】ヴィヴィアヌ・シャッソのアコーディオンによるピアノ協奏曲集(ハイドン)

今日は変り種なんですが、聴いてびっくり、演奏は驚くべきもの。

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ヴィヴィアヌ・シャッソ(Viviane Chassot) のアコーディオン、バーゼル室内管弦楽団(Kammerorchester Basel)による、ハイドンのピアノ協奏曲など4曲(Hob.XVIII:11、XVIII:4、XVIII:3、XVIII:7)を収めたアルバム。収録は2016年9月19日から21日にかけて、フライブルクとバーゼルのちょうど中間あたりにあるドイツのミュールハイム(Müllheim)にあるマーティン教会(martinskirche)でのセッション録音。レーベルはSONY CLASSICAL。

ハイドンの協奏曲はピアノ、オルガン、ヴァイオリン、チェロ、ホルン、トランペットなど様々な楽器用の曲が作曲されていますが、それぞれ対象の楽器の特性や音色をしっかりと踏まえて書かれており、ソロのメロディーはその楽器でこそといえる響きが存分に活かされたもの。ホルン協奏曲に見られるホルンの低音を聴かせるところなど、まさにそうしたハイドンの周到な筆致の一例です。そうした協奏曲を他の楽器に置き換えて演奏する例は過去にもありました。

鍵盤楽器はオルガン、ハープシコード、フォルテピアノ、ピアノと時代のパースペクティヴを楽しむことができますし、楽器をなかな用意できないリラ・オルガニザータをフルートとオーボエで置き換えたりする例もあります。またピアノ協奏曲をハープで弾くなど、レパートリーの少ない楽器での例などもあります。

今回はピアノ協奏曲とオルガン協奏曲をアコーディオンで演奏するというもの。ハイドンの新譜をチェックしている際にこのアルバムをみかけて、アコーディオンでピアノ協奏曲を演奏するという企画は珍しいもののさして期待もせず、ちょっと美人奏者のルックスに気が緩んでポチりとしましたが、到着して聴いてみてびっくり。アコーディオンという楽器の表現力に驚くばかり。

そもそもアコーディオンは手動でフイゴをコントロールするオルガンのようなものですが、ポイントは2つ。1つは音を出した後に音量を自由に上げ下げできること。アコーディオンといえばピアソラでしょうが、あの多彩な響きはアコーディオンのこの特徴によるものですね。そして今回わかったのがアコーディオンの反応の俊敏さ。オルガンの長いパイプを空気が移動する時間、そして鍵盤からメカニックを通じて弦を打つまでのフリクションにくらべ、アコーディオンの俊敏さは比較にならないほど。このアルバムを聴くと、これまで鍵盤楽器で聴いていた協奏曲とはソロの俊敏さが段違い。鮮やかなメロディーの展開に圧倒されます。もちろん音色は皆さんの想像するアコーディオンの音色であり、ピアノやフォルテピアノとは雰囲気が一変しますが、なによりその俊敏さによって、曲に別の魂が入ったよう。これはすごい。

奏者のヴィヴィアヌ・シャッソは1979年、スイスのチューリッヒ生まれのアコーディオン奏者。12歳からアコーディオンのレッスンを受け、ベルン芸術大学のアコーディオン科に進み、その後様々な賞を受賞。アコーディオンのレパートリー拡大に努めており、デビュー盤はなんとハイドンのソナタ集だったとのことで、すかさず注文! その後ラモーのソナタ集やツィターとのアンサンブルなどの録音があり、このアルバムでメジャーレーベルであるSONY CLASSICALにデビューとのことです。

また、オケはバーゼル室内管ということで、古くはホグクッドの協奏交響曲などの録音によって知られたオケですが、最近では2032年の完結を目指して進められているジョヴァンニ・アントニーニのハイドンの交響曲全集をイル・ジャルディーノ・アルモニコと分担して録音することで知られたオケです。

Hob.XVIII:11 Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [D] (1784)
序奏は快速テンポで爽やかそのもの。指揮者は置いていませんが、見事な入りに期待が高まります。普段はピアノかフォルテピアノで聴くソロは、アコーディオン独特の音色で置き換えられますが、最初に書いたように、あまりに俊敏な反応にのけ反らんばかり。ピアノやフォルテピアノとは反応速度が全く異なります。オケが快速なのに合わせて、それを上回る俊敏さでソロがグイグイきます。しかも音量のコントロールもダイナミックに変えてきて、うねるように音量を変えてきます。あまりに鮮やかなタッチに楽器の音色の違いが気になるどころか、鮮やかな音色に圧倒されっぱなしの1楽章です。終盤に至るまでに幾度かの波を超えているので、すでに違和感はありません。カデンツァはアコーディオン独特のタッチによりだいぶスッキリとしたもので、聴いているうちに哀愁に包まれる見事なもの。
続く2楽章も入りは序奏の滑らかさが印象的ですが、ソロが入るとアコーディオン独特の音色と俊敏な反応に釘付けになります。聞き進むうちに中盤のアクセントの鮮やかさにさらに釘付け! さすがに自身でフイゴのコントロールをしているだけのことはあります。アコーディオンの音色には慣れてきましたが、俊敏な反応には唸りっぱなしです。やはりカデンツァはアコーディオン独特の世界に入ります。
フィナーレは前2楽章以上に反応の鮮やかさが際立ちます。ソロに触発されて、オケの反応も異次元のレベルに。協奏曲だけにオケの方もソロの勢いに負けじと感覚が冴え渡って火花が散ります。そしてその刺激がソロに戻り、アコーディオンを操るシャッツにも戻って刺激が刺激を呼ぶ展開。あまりに鮮やかな展開に驚くばかり!

Hob.XVIII:4 Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [G] (c.1770)
1曲目で完全にペースを掴まれ、すでにノックアウト気味。何気にオケの方もソロとは関係なく異常に興奮した感覚を保ち、序奏からソロに宣戦布告する始末。もう冴えまくった感覚を競い合うようなシャープな応酬に唖然とするばかり。聴き慣れた曲が鮮やかに蘇り、まるで初めて聴くような新鮮な響きで迫ってきます。ソロのないところでもオケに魂が乗り移っているよう。中間の展開部に入って以降、さらに2段ロケットに点火したような冴え方。もはや鮮やかさを通り越して別の曲を聴くような感覚に陥ります。この曲のカデンツァのキレはもはや神業のレベル。もともとアコーディオンのためにこの曲が書かれたのかと錯覚するほど。
2楽章はアダージョ・カンタービレ。穏やかな序奏が終わると、まるで中世の宗教音楽のような響きに今度は鳥肌が立つような思い。俊敏さだけではなく、こうした繊細な音色の感覚も持ち合わせていました。不思議な音色に包まれ、峻厳な雰囲気に一変します。アコーディオンという楽器の可能性を感じる楽章。
フィナーレは息を吹き返したようにオケとアコーディオンが乱舞。速いパッセージの音階のキレは他のどの楽器よりも鮮やか。この異次元の鮮やかさがキレまくり、ハイドンの書いたフィナーレのキレ味を飾ります。最後のカデンツァで我々の想像の彼方に行ってしまうことも忘れません(笑) こんなに高い音が出るんですね。

Hob.XVIII:3 Concerto per il clavicembalo(l'organo) [F] (1765)
次はどんな球が飛んでくるのドキドキしながら聴き始めます。すでに原曲がピアノやフォルテピアノのために書かれたことを忘れそうなほどアコーディオンの印象が刷り込まれてしまいました。軽やかな音階にキレ味鋭いアクセント、そしてグッと力むアクセントの連続攻撃にヘロヘロ。この曲ではソロもオケも少し力を抜いたような部分がさらに加わり、完全にペースを握られます。今更ながら同じメロディーからこれほど多彩な表情が生まれることに驚くばかり。アコーディオンという楽器の表現力に驚きます。めくるめくような展開の連続にすでにトランス状態に。音楽が脳にもたらす刺激としては最強の部類ですね。
2楽章は前曲同様、俊敏さではなく抑えた音色の冴えで聴かせる楽章。一定のテンポで訥々と進めていきますが、それでもアコーディオンという楽器の魅力がジワリと伝わります。ヴィヴィアヌ・シャッソという人、テクニックのみならず、音色に関する類い稀な感覚の持ち主と見ました。
フィナーレはこれまでの曲同様、鮮やかにまとめます。

Hob.XVIII:7 Concerto per il clavicembalo(l'organo) [F] (before 1766,1760?)
最後はオルガンのために書かれた曲。フォルテピアノよりもオルガンの方がアコーディオンと音色が近いですが、これまでオルガンで聴いてきた曲でも、これまでの演奏の印象が完全に塗り替えられるほどのインパクトがあります。オケの方も重厚なオルガンとの掛け合いではなく俊敏すぎるアコーディオン相手ということで、前曲までと同様冴えまくった状態で迎え撃ちます。もちろんオルガンの方が絶対音量は上でしょうが、強弱のダイナミクスはアコーディオンに分があり、それが大きな違いを生んでいます。鮮やかに吹き抜けるソロの印象が曲を支配します。
これまでの曲の緩徐楽章とは雰囲気が異なり、アコーディオンがオルガンを再現するような演奏になります。この変化の幅を聴かせるために最後にこの曲を持ってきたのでしょうか。最後までオルガン然とした演奏を保つ見識を持ち合わせているんですね。
そしてフィナーレも、これまでと異なるアプローチ。もちろんキレ味は変わらないんですが、オルガンの音色を意識しているようで、弾け飛ぶような展開には至らず。いやいやこの辺りのアプローチにはシャッソのこだわりを感じます。見事。

冒頭に書いた通り、何気なく手にいれたアルバムでしたが、これは驚きの素晴らしい出来。ハイドンの協奏曲のアルバムの中でも特別な一枚と言っていいでしょう。これまでピアノやフォルテピアノなどで聴いてきた曲が、初めからアコーディオンのために書かれたような説得力を持った演奏です。テクニックはもとより、曲ごとに演奏スタイルもしっかりと考えて演奏しており、ヴィヴィアヌ・シャッツという人の音楽性も類い稀なものです。このアルバム、すべての人に聴いていただく価値がある名盤と言っていいでしょう。評価は全曲[+++++]とします。

このアルバムの記事を書きかけたところで、カンブルランのコンサートに出かけたため、途中のままコンサートの記事を先にアップしたところ別記事のコメントにこのアルバムの凄さを知らせていただく書き込みがありました。いやいや、書いている最中にその記事を予測されたという展開に驚きました(笑)

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ファイ/シュリアバッハ室内管のピアノ協奏曲集(ハイドン)

当ブログの読者の皆さまならご存知の通り、トーマス・ファイが倒れる前に録音した交響曲のアルバムのリリース予告されています。予定のリリース日から少し遅れているようですが、そろそろ来るのではないかと心待ちにしております。そのファイのハイドンのアルバムは全て手元にあると思っていたのですが、意外に盲点があり、このアルバムが未入手だと最近気づき、あわてて注文した次第。新たなアルバムが到着するまで、こちらでしのぎます(笑)

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ゲリット・ツィッターバルト(Gerrit Zitterbart)のピアノ、トーマス・ファイ(Thomas Fey)指揮のシュリアバッハ室内管弦楽団(Schlierbacher Kammerorchester)の演奏で、ハイドンのピアノ協奏曲3曲(Hob.XVIII:3、XVIII:4、XVIII:11)を収めたアルバム。収録は1999年6月、フランクフルトのフェステブルク教会でのセッション録音。レーベルは独hänssler CLASSICS。

トーマス・ファイの振るハイドンの交響曲のシリーズですが、これまで取り上げた回数は10記事にもなります。

2014/08/18 : ハイドン–交響曲 : 【新着】トーマス・ファイ/ハイデルベルク響のの98番、太鼓連打(ハイドン)
2013/12/01 : ハイドン–交響曲 : 【新着】トーマス・ファイの交響曲99番,軍隊(ハイドン)
2013/04/12 : ハイドン–交響曲 : 【新着】トーマス・ファイ/ハイデルベルク響のラメンタチオーネ他
2012/11/20 : ハイドン–交響曲 : 【新着】トーマス・ファイ/ハイデルベルク交響楽団の交響曲1番他、爆速!
2012/07/08 : ハイドン–交響曲 : トーマス・ファイ/ハイデルベルク交響楽団の90番、オックスフォード
2012/06/11 : ハイドン–交響曲 : トーマス・ファイ/ハイデルベルグ交響楽団のマリア・テレジア、56番
2012/05/03 : ハイドン–交響曲 : トーマス・ファイ/シュリアバッハ室内管の「時の移ろい」「告別」
2011/07/06 : ハイドン–交響曲 : 【新着】トーマス・ファイの「帝国」、54番
2010/12/26 : ハイドン–協奏曲 : 【新着】トーマス・ファイのホルン協奏曲、ホルン信号
2010/08/01 : ハイドン–交響曲 : トーマス・ファイの69番、86番、87番

オケに着目すると、これまでリリースされた22枚のうち、第2巻が今日取り上げるアルバムと同じシュリアバッハ室内管である他はすべてハイデルベルク交響楽団。ハイデルベルク交響楽団の前身がシュリアバッハ室内管ということで、録音時期が1999年以降のアルバムからハイデルベルク響になっているという感じです。ということで、この協奏曲のアルバムは交響曲シリーズの第2巻の「告別」「時の移ろい」を収めたアルバムとともにファイのハイドンの録音の最初期のものということになります。ちなみアルバムの番号を比べてみるとこちらが98.354なのに対し、交響曲の第2巻の方は98.357と若干後。ということでもしかしたら、このアルバムがファイのハイドンの最初の録音ということかもしれませんね。そういった意味でも非常に興味深いアルバムです。

ピアノのソロはゲリット・ツィッターバルト、初めて聴く人かと思いきや、調べてみるとアベッグ・トリオのピアノを担当する人でした。1952年、ドイツのゲッティンゲン(Göttingen)に生まれ、カール・エンゲル、ハンス・ライグラフ、カール・ゼーマンら高名なピアニストに師事し、ドイツ音楽カウンシルのサポートを受けて若手芸術家のためのコンサートシリーズなどに出演。その後いくつかのコンクールで優勝してヨーロッパ各国で活躍するようになりました。1976年にアベッグ・トリオを設立後は室内楽の分野で活躍しています。ファイとはハイドンの前にモーツァルトのピアノ協奏曲の録音があり、ファイのお気に入りのピアニストだったのでしょう。

Hob.XVIII:3 Concerto per il clavicembalo(l'organo) [F] (1765)
ファイの演奏の記憶と比べると随分オーソドックスな伴奏の入り。オケは適度にリズミカルで快活。なんとなくこれからキレキレになりそうな予感を感じさせながらも穏やかさを保ちます。ツィッターバルトのピアノはファイのスタイルをピアノに移したように、適度なコントラストをつけながらクリアにリズムを刻んでいきます。オケもピアノもそこここにキラリと光る輝きがあり、ハイドンの晴朗な曲を爽快さ満点で描いていきます。まるでリズムに戯れて遊んでいるよう。凡庸さは全くなくフレーズの隅々まで閃きに満ちており、これに後年キレがくわわっていったわけですね。ツィッターバルトもかなり表現力。特に高音の抜けるような軽やかさを聴かせどころにして縦横無尽に鍵盤上を走り回る感じがこの曲にぴったり。カデンツァに入るところくらいから、ちょっとスイッチが入り表現意欲に火がつきましたね。
2楽章はラルゴ・カンタービレ。スイッチの入ったツィッターバルトは冒頭からタッチが冴え渡ります。ピアノの美しいメロディーをシンプルな伴奏で支え、ファイもここはツィッターバルトの引き立て役に徹します。このさりげないメロディーの美しさこそハイドンの真骨頂。絶品です。
フィナーレで攻守交代。ツィッターバルトのタッチのキレは変わらないのですが、今度はファイがこれまで抑えていた才気が解き放たれたように自在にオケを操り、とくにコントラバスの鋭いアクセントをかませながらテンポを上げ、ピアノを煽ります。火花散るようなデッドヒートを繰り広げながらも戯れて遊ぶような余裕があります。いやいや、この頃からキレていますね。

Hob.XVIII:4 Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [G] (c.1770)
もうだめです(笑) 完全にファイのペースに引きこまれました。ゾクゾクするような序奏の入りもファイならではのアイデア満載です。ハイドンの書いた曲が完全にファイ流に再構成され、冒頭から冴え渡るリズム感。オケも様々に趣向を凝らしているんですが、ツィッターバルトのピアノもそれに呼応して軽やかさが際立つタッチで応じます。アクセントのつけ方がこれまでの演奏とは全くアプローチが異なり、スリリングさ満点。微妙にテンポを上げ下げしたり、アクセントの変化をつけたりといろいろやりますが、全てが痛快にハマって気持ちのいいことといったらありません。この曲ではカデンツァは時代もスタイルも超えてやりたい放題。ここまでやると逆に吹っ切れていいですね。
続く2楽章は、弱音器付きの弦楽器の潤いをあえて廃した抑えた序奏から入り、ツィッターバルトのピアノの雄弁さに主役を譲ります。あっさりとした伴奏がかえって深みをもたらしているよう。やはりファイは只者ではありません。
フィナーレはこれも痛快なほどの速さでめくるめくように音階の上下を繰り返しながらキレよく曲をまとめていきます。終盤、突然ぐっとテンポを落とすことでカデンツァを引き立たせるあたりの演出は流石です。キレキレで終了。

Hob.XVIII:11 Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [D] (1784)
最後は有名曲。どうくるかと身構えていると、それをひるがえすようにオーソドックスに入ります。ただし、伴奏の各パートのアクセントのつけ方はファイならではのもので、聴いているうちにどんどんスリリングになっていきます。気づいてみると速めのテンポでグイグイ攻めるファイペース。一貫してトレモロのようにさざめくような音色に乗りながら寄せては返す波のように音楽の波が襲ってきます。これぞファイマジック!
続く2楽章はあえて表情を抑えて曲自体に語らせる大人な対応。この緩徐楽章を一貫して抑え気味にしてくることで、どの曲も両端楽章の冴え方が際立つわけですね。
フィナーレは予想どおり快速テンポで痛快なアクセント連発。ツィッターバルトのピアノもよくぞこれほど指が回ると驚くほどのめくるめくような冴え方。ファイとの呼吸もピタリで、大胆なデフォルメをそこここに散りばめ、もはや溶けてバターになっちゃいそう(ちびくろサンボ!) やはり只者ではありませんね。

ファイの最初期のハイドンの録音であるこのアルバムですが、すでにファイの魅力が満ち溢れていました。この録音のあとに22巻までつづく、いや、今度23巻がリリースされようとしている交響曲全集の録音が始まったわけです。この1枚を聴くだけでもファイの類い稀な才能がよくわかります。ピアノのゲリット・ツィッターバルトもファイと共通する音楽性を持った人で、ピアノもキレキレ。ファイのハイドンの原点たるこのアルバムの出来がその後の交響曲の録音を決定したことがよくわかりました。もちろん評価は全曲[+++++]とします。

さて、ファイの新譜はいつ手元につきますやら。ますます楽しみです。

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エミール・ギレリスのピアノ協奏曲Hob.XVIII:11(ハイドン)

ピアノの演奏が続きますが、今日はヒストリカルなもの。

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エミール・ギレリス(Emil Gilels)のピアノ、ルドルフ・バルシャイ(Rudorf Barshai)指揮のモスクワ室内管弦楽団(Moscow Chamber Orchestra)の演奏で、ハイドンのピアノ協奏曲(Hob.XVIII:11)、モーツァルトのピアノ協奏曲21番(KV.467)の2曲を収めたLP。収録情報は記載されていませんが、ネットでギレリスのディスコグラフィを調べて見ると1959年の1月とのこと。レーベルはМелодия(Melodiya)。

このアルバムも先日オークションで手に入れたもの。もちろんギレリスのピアノがお目当てでした。エミール・ギレリスはみなさん良くご存知でしょう。あまりハイドンを演奏する人とのイメージはありませんが、数少ない録音のうち、当ブログでも2枚ほど取り上げています。

2015/10/29 : ハイドン–ピアノソナタ : エミール・ギレリスのXVI:20 1962年ライヴ(ハイドン)
2011/11/08 : ハイドン–室内楽曲 : ギレリス/コーガン/ロストロポーヴィチのピアノ三重奏曲

いずれもギレリスの「鋼鉄のタッチ」によってハイドンの音楽が揺るぎない格調高さを聴かせる名演奏。1950年代のギレリスの素晴らしさは深く記憶に刻まれておりますので、今日取り上げるアルバムを見つけるや否や迷わず入手した次第。早速針を落としてみます。

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Hob.XVIII:11 Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [D] (1784)
ルドルフ・バルシャイの振るモスクワ室内管の序奏は実に軽やか。理想的な入りです。ギレリスのピアノは、ピアノの胴に響くような余韻を伴いながらこちらも最初は軽やかなタッチでリズミカルに音楽が進みますが、徐々に音量が上がってくると、ギレリスらしいキレの良い鋭いタッチが顔を覗かせてきます。バルシャイは一貫して爽やかな演奏でサポート。ギレリスのタッチの変化が聴きどころだと踏まえて、伴奏に徹している感じ。勢いを保ったまま、大きくうねるように表情を変化させていくギレリスのピアノ。速いパッセージの鮮やかなキレも抜群。指が回りまくってます! このコンチェルトは爽快さこそがポイントと踏まえたような演奏。
素晴らしいのが続く2楽章。バルシャイもぐっとテンポを落として音楽にえも言われぬ深みが宿ります。ギレリスもそれに応えて、じっくりとメロディーを紡いていきますが、ここにきてギレリスのタッチから生み出されるピアノの鋭くも深い音色が燦然と輝きだします。同じピアノなのにギレリスが弾くと、峻厳さ、孤高さを感じさせるところがすごいところ。バルシャイもそれに触発されて、伴奏も深く深く集中していきます。夢のような音楽が流れていきます。カデンツァは抑えた音量でピアノを鳴らしながら天上に登っていくような凝縮された時間が流れます。ピアノ1台から繰り出される音楽が、オケも含めて全員を惹きつける素晴らしいカデンツァ。
フィナーレで再びリズムと推進力を取り戻しますが、ここでもギレリスのピアノの鋼鉄のタッチが素晴らしい躍動感を帯びて圧倒的な存在感。コンチェルトのソロでテクニックではなく演奏の集中力でここまで他を圧倒する存在感を感じさせる演奏は滅多にありません。バルシャイもそれを踏まえて、控えめながら味わい深い伴奏で支えます。最後はキレのいいピアノの響きを轟かせて終了。いやいや素晴らしい演奏でした。

やはりギレリスはギレリス。奏者によって様々な響きを聴かせるピアノですが、ギレリスが弾くと、はっきりギレリスの音楽とわかる音楽が流れ出すのがすごいところ。鋼鉄のタッチでも、爽快な響きも孤高の響きもグイグイ推進する響きも自在に繰り出しながら、音楽を作っていきます。このコンチェルトでは、テクニックではなく音楽の深さで圧倒的な存在感を示し、特に2楽章のカデンツァでは微かなタッチの紡ぎ出す音楽の存在感に圧倒されました。録音も鮮明で1950年代のギレリスの魅力を余すところなく捉えた素晴らしいもの。これは文句なしの名演盤です。もちろん評価は[+++++]とします。

裏面のモーツァルトもこれまた素晴らしい演奏。バルシャイはハイドンの時よりも踏み込み、ギレリスのピアノも冴えまくってます。こちらもオススメです! 中古で見かけたら即ゲットですね。

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【新着】イル・ポモ・ドーロの協奏曲集-2(ハイドン)

前記事のつづき。

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リッカルド・ミナーシ(Riccardo Minasi)とマクシム・エメリャニチェフ(Maxim Emelyanychev)の指揮するイル・ポモ・ドーロ(Il Pomo D'Oro)によるハイドンの協奏曲などを収めた2枚組のアルバム。

今日はCD1から指揮者が変わったCD2を取り上げます。アルバムや奏者については前記事をご参照ください。

2016/02/15 : ハイドン–協奏曲 : 【新着】イル・ポモ・ドーロの協奏曲集-1(ハイドン)

CD2から指揮はハープシコードを弾くマクシム・エメリャニチェフ。今年の1月から前任のリッカルド・ミナーシの後を継いでイル・ポモ・ドーロの首席指揮者となった人。録音時の2014年は26歳という若さです。

Hob.I:83 Symphony No.83 "La Poule" 「雌鶏」 [C] (1785)
1曲目はなぜか交響曲で「雌鶏」。マクシム・エメリャニチェフが得意としているということでしょうか。金管をかなり象徴的に鳴らして古楽器の音色の面白さを強調した入り。オケは同じですが、オケの音色はCD1から変わります。マクシム・エメリャニチェフの指揮はリッカルド・ミナーシよりも金管の音色以外は全般にオーソドックス。古楽器による均整のとれたバランスの良い演奏。金管の鳴らし方が変わらないので若干単調な印象もなくはありません。どちらかと言うとリッカルド・ミナーシの方が若々しい印象です。安全運転な感じ。
アンダンテも実に落ち着いた演奏。CD1の面白さを味わっているので、もう少し踏み込みを期待してしまうところ。演奏は端正でオケのアンサンブルも精度高く質の高い演奏ですが、やはり少々かしこまった感じ。
メヌエットからフィナーレも実にオーソドックスな展開。もちろん古楽器による適度な力感、高揚感、バランス感覚もあり、それなりに盛り上がりを見せますが、あと一味工夫が欲しいところ。そしてフィナーレの終盤、オケがこれまでとは異なり、ちょっと乱れるところもあり、指揮者のコントロール力は少々差があるというのが正直なところ。

Hob.XVII:4 Fantasia (Capriccio) op.58 [C] (1789)
CD2の2曲目はマクシム・エメリャニチェフのハープシコードソロでファンタジア。こちらは音量差のつきにくいハープシコードを縦横無尽に弾きまくった陶酔感を感じさせる部分と余韻で聴かせる部分のコントラストがクッキリとついたなかなかの演奏。先ほどの雌鶏のオーソドックスさとは異なり表現意欲に溢れた演奏です。途中、若干調律のずれたように聴こえる部分がありますが、何らかのペダル操作の影響でしょうか。このへんは楽器にくわしくないためわかりません。

Hob.XVIII:11 Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [D] (1784)
そして、CD2のハイライトの最も有名なコンチェルト。なぜか序奏から別次元の生気! オケの精度は今ひとつながら、明らかに演奏に気合が漲っています。リッカルド・ミナーシのコントロールに近い印象もありますが、ちょっと荒いでしょうか。ソロのハープシコードは流石にキレキレ。ここでも雌鶏同様、金管が独特の音色を聴かせて格別の存在感を呈しますが、鳴らし方が単調な印象。オケは全般に表現意欲旺盛でアクセントもガッチリキメてきます。指揮者の若さがそのまま音楽に乗っている感じと言えばいいでしょう。それなりにスリリングでたのしめます。
2楽章も同様、適度に荒いところが面白さにつながり、冷静にタッチを進めるハープシコードに対してオケがかなり自在なサポートを聴かせます。リズムがちょっと前のめりになったり、意外なバランスを聴かせたりするところもあって、本当にスリリング。一転カデンツァでははっとするような新鮮な響きを引き出したり、なかなか先の読めない面白さがあります。オケの各奏者が周りの出方を探りながら演奏している感じ。
フィナーレは若さと才気が素直にエネルギーとなって表出したような演奏。相変わらずオケは自在。弾き振りなのにソロとオケの微妙なズレによる緊張が走ります。ハープシコードの見事さと、オケの素人っぽいところの対比が妙に面白い演奏です。

Hob.XVIII:6 Concerto per violino, cembalo e orchestra [F] (1766)
最後はヴァイオリンとハープシコードが活躍する曲。両指揮者がソロでも腕くらべといったところでしょう。リッカルド・ミナーシの存在があるからか、前曲のようにオケが暴れることもなく、適度な生気とバランスの保たれた伴奏に乗って2人のソロは冴え冴えとメロディーを奏でます。やはり変化に富んだボウイングのミナーシと繊細なキレを聴かせるエメリャニチェフのソロは非常に聴き応えがあります。ソロとオケ、表現意欲とバランス、静と動のうまく噛み合ったいい演奏。
つづくラルゴの序奏は抑えていたエメリャニチェフの表現意欲が噴出。いきなりグッと力が入ります。美しいメロディーのヴァイオリンとハープシコードが絡みながらのソロはやはり流石。何となくソロよりオケが前に出てソロ以上に存在感を出そうとしています(笑) この辺はまだまだ指揮者の経験不足というところでしょうか。普段聴く協奏曲とは異なるアプローチに、逆に協奏曲のオケの演奏のツボを教わった感じがします。そういう意味ではいろいろ考えさせられる演奏であります。
このアルバム最後のフィナーレは適度なキレと力感がバランスした演奏。2楽章でちょっと踏み込んだ以外はなかなかバランスの良い演奏でした。

ちょっとCD1とは違うトーンのレビューとなりましたが、このアルバム、2枚組ですが価格はレギュラー盤1枚の値段。しかも前記事で書いたとおり、リッカルド・ミナーシの振ったCD1は素晴らしい出来ということで、アルバム自体はオススメしていいものです。CD2の方はソロはともかく指揮はまだまだこれから経験を積む必要があることを感じさせるもの。最近レビューで取り上げるアルバムは厳選された一級のアルバムばかりでしたので、こうしたレビューは久しぶり。逆に聴く方の脳はいろいろ考えさせられるという意味で刺激的なもののでした。素晴らしい演奏も、これからの成長を期待する演奏も聴けるという意味でも面白いアルバムだと思います。ちなみにCD2の評価ですが、ファンタジアと最後のHob.XVIII:6は[++++]、残り2曲は[+++]とします。

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カスパール・フランツ/カレイドスコープ・ソロイスツ・アンサンブルのピアノ協奏曲集(ハイドン)

今日は協奏曲のアルバム。こちらも湖国JHさんから送り込まれたもの。

CasparFrantz.jpg
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カスパール・フランツ(Caspar Frantz)のピアノ、カレイドスコープ・ソロイスツ・アンサンブル(Solistenensemble Kaleidoskop)の演奏で、ハイドンのピアノ協奏曲3曲(Hob.XVIII:11、XVIII:9、XVIII:2)と、ピアノ、2本のホルン、ヴァイオリン、チェロのためのディヴェルティメント(Hob.XIV:1)の4曲を収めたSACD。収録は2009年1月、ベルリンのテルデックス・スタジオでのセッション録音。レーベルは独Ars Produktion。

このアルバム、ちょっと聴いてみた印象はキレのいいオーソドックスな演奏で、取り立てて個性的な印象はなく、レビューに取り上げるつもりはなかったんですが、何回か聴いてるうちにジワリと良さを感じてきたもの。SACDらしく透明感あふれる鮮明な録音であるのもいいところです。

カスパール・フランツは1980年、ドイツのデンマーク国境に近い港町キール(Kiel)に生まれたピアニスト。ドイツ国内は言うに及ばず、世界的に活躍しており、ソリストのみならず室内楽の分野でも活躍しているとのこと。彼のサイトを貼っておきましょう。

CASPAR FRANTZ

また、オケのカレイドスコープ・ソロイスツ・アンサンブルは2006年にチェロ奏者のミカエル・ラウター(Michael Rauter)と指揮者のジュリアン・クエルティ(Julian Kuerti)が設立したベルリンに本拠地を置く若手中心の室内オーケストラ。ライナーノーツには精鋭のイケメンと美女が写っており、本当に若手中心だとわかります(笑) こちらもサイトを貼っておきましょう。

Solistenensemble Kaleidoskop

モノクロのサイトデザインがイケてます。

Hob.XVIII:11 Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [D] (1784)
ハイドンの最も有名なピアノ協奏曲。オケは小編成らしいキビキビとしたもの。速めのテンポの序奏に乗ってカスパール・フランツも小気味良いタッチの非常にキレのいいピアノで応じます。オーソドックスながらリズムの冴えが素晴らしい演奏。録音が鮮明なので、アンサンブルの精緻さが手に取るようにわかります。キレ味ばかりではなく、フレーズごとの微妙なニュアンスの変化も巧みで、非常にクォリティの高い仕上がり。カデンツァも短いながらキラリと光るセンスがあって唸らされます。
続くウン・ポコ・アダージョも爽やかさ保ちながら、じわりと情感を漂わせるもの。特にフランツのピアノの磨き込まれたクリスタルのように青白く光る冷徹な美しさがたまりません。この楽章ではテンポを比較的自在に動かしてメロディーを唄わせますが、キリリと引き締まった表情はしっかり保ちます。
フィナーレは再びキレ味抜群。オケの軽々とした吹き上がりが痛快。キレ味とデリケートさを両面持ち合わせたピアノが華を添えます。ピアノの鮮やかなタッチと展開部の高揚感、骨格のしっかりした構成と言うことなし。

Hob.XVIII:9 Concerto per violino, cembalo e orchestra [G] (before 1767)
ハイドンの真作ではない可能性からか録音の少ないHob.XVIII:9ですが、この演奏で聴くと実に面白い。序奏からユニークな曲想に手に汗握る面白さ。フランツは前曲とはスタンスを変えて、曲想の面白さを際立たせるべく、実に自在に表情をコントロール。基本的にタッチの鮮やかさを保ちながら、オケとの絶妙な掛け合いを演じます。それにしてもこの曲のアイデアの多彩さには驚くばかり。
続くアダージョは短調でロマンティック。フランツは曲を楽しむように美しい音色を響かせます。
終楽章はTempo di Minuettoの指示のとおり、終楽章としてはゆったりとしたテンポで音楽を楽しむように、おおらかに起伏をつけながら時折アクセントを利かせてサラリとまとめます。

Hob.XVIII:2 Concerto per il clavicembalo(l'organo) [D] (before 1767)
元々オルガン協奏曲ですが、あえてピアノで弾いてくるところ、前曲のような曲を選曲してくるところになんとなくこのアルバムの意図が見えてきた感じ。耳に残るオルガンの音色での曲想を洗い流すようなクリアなピアノのタッチの美しさが際立ちます。オケも非常に純度が高く、相当な腕利き揃いでソロイスツ・アンサンブルの呼称に偽りなし。この曲ではピアノに増してオケの表現の幅の大きさが聴きどころ。各パートがフレーズごとに新鮮な響きを創ることにこだわっているよう。
続く2楽章は、もともとオルガンの音色の陶酔感で聴かせる楽章ですが、ここでもピアノのキリッとしたメロディーと、響きに変化をつけたオケの掛け合いで、この曲の違った魅力にスポットライトを当てています。1曲目の純粋なキレの良さとは全く異なった演奏は、曲ごとにコンセプトをしっかりもって演奏を組み立てている感じ。オルガンの低音で聴かせるところも、しっかりピアノで演出できていますが、少々無理がある感じで、このあたりは逆に楽器の特性を踏まえて作曲していたハイドンの巧みな手腕をかえって際立たせている感じ。
最後のアレグロは驚くほどさらりとした速めのテンポで意表をついた序奏。ピアノが入るとオルガンよりもキレのいいところを生かして快速テンポで、この曲の高揚感というかトランス状態のような音階の繰り返しをオルガン以上の面白さで表現。オケも恐ろしいほどのキレ味でささえ、この楽章はピアノのでの演奏の面白さ満点。見事です。

Hob.XIV:1 Quintett [E flat] (c.1760)
最後の曲はピアノ、2本のホルン、ヴァイオリン、チェロによるディヴェルティメント。ハイドンのディヴェルティメントらしい愉悦感に富んだ音楽。フランツのキリリとしたピアノを中心にホルンとヴァイオリン、チェロが楽しげにメロディーを重ねます。協奏曲とはまったく異なる音楽の楽しさがありますね。かなり初期の曲ゆえ、ピアノトリオともまた異なり、素朴な面白さ。この曲がなくても協奏曲3曲でアルバムが成立するはずですが、あえてこの曲を収めてきたところは、ピアノをキーにハイドンの音楽の多様性をあえて表現したいということではないかと想像しています。演奏の方は、完全にリラックスして掛け合いを楽しむような演奏。

1曲目の正攻法のキリリと引き締まった演奏を聴いて、冒頭にふれたようにオーソドックスな演奏と感じたわけですが、聴き進むうちにこのアルバムの企画意図の深さがわかってきました。ピアノのカスパール・フランツはかなりの腕前の持ち主。しかも曲に応じて演奏スタイルも明確な意図をもっており、音楽性も確かなものがあります。オケのカレイドスコープ・ソロイスツ・アンサンブルも腕利き揃いで見事なサポート。私は非常に気に入りました。特に3曲目については意見が分かれるところかもしれませんが、オルガン協奏曲をあえてピアノで弾くという意味がある演奏であり、フランツの意図は買いです(笑) 評価は協奏曲は3曲とも[+++++]、ディヴェルティメントは[++++]とします。

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セバスティアン・クナウアーのピアノ協奏曲集(ハイドン)

意外に手元になかったアルバムを入手。

SebastianKnauer.jpg
TOWER RECORDS / amazon / HMV ONLINEicon

セバスティアン・クナウアー(Sebastian Knauer)のピアノ、ヘルムート・ミュラー=ブリュール(Helmut Müller-Brühl)指揮のケルン室内管弦楽団(Cologne Chamber Orchestra)の演奏で、ハイドンのピアノ協奏曲4曲(Hob.XVIII:3、XVIII:11、XVIII:4、XVIII:9)を収めたアルバム。収録は2007年2月15日から18日、ケルンのドイツ放送室内楽ホールでのセッション録音。レーベルはNAXOS。

NAXOSのハイドンに関する録音はほとんど手元にある「はず」だったんですが、このアルバムを売り場で見かけて手元の所有盤リストをチェックすると、掲載されていません。コレクションに穴はあるものだということで入手した次第。NAXOSはリリースされ始めた頃は廉価版然とした演奏が多かったんですが、今ではメジャーレーベルもビックリの素晴らしい演奏も少なくないことは皆さんお気づきでしょう。かく言うハイドンの録音に関しても、コダーイ四重奏団の弦楽四重奏曲全集やヤンドーのピアノソナタ全集、交響曲でもニコラス・ウォード指揮のものをはじめとしてレベルの高い演奏が多いですし、最近取り上げたマリア・クリーゲルのチェロ協奏曲集などは本当にビックリするほどの名演と名盤目白押しです。そのNAXOSのピアノ協奏曲は他に1992年の別の奏者の録音があるのですが、あえてこのアルバムをリリースしてきたということはそれなりの出来で、コレクションをリニューアルする意図があってのことでしょう。

ピアノを弾くセバスティアン・クナウアーははじめて聴く人。調べてみるとBerlin ClassicsやDGなどから何枚かのアルバムをリリースしており、それなりに有名な人のようです。ウェブサイトが見つかりましたのでリンクしておきましょう。

ARTIST - Sebastian Knauer

ちょいワルオヤジのような風貌ですが、私より年下でした(笑) 1971年ハンブルク生まれで、4歳からピアノをはじめ、フィリップ・アントルモン、アンドラーシュ・シフ、クリストフ・エッシェンバッハ、アレクシス・ワイゼンベルクなど名だたるピアニストに師事、13歳でデビューしますが、デビュー曲はこのアルバムにも収録されているハイドンのピアノ協奏曲(Hob.XVIII:11)。その後はソリストとして世界的に活躍し、直近では2001年に始まったマルセイユ音楽祭の芸術監督を務めているとのことです。

指揮のヘルムート・ミュラー=ブリュールはNAXOSのハイドンの録音では中核を担う人。これまでにいくつかのアルバムを取り上げていますので、略歴などはそちらをご覧ください。

2015/06/20 : ハイドン–協奏曲 : マリア・クリーゲルのチェロ協奏曲集(ハイドン)
2012/03/22 : ハイドン–交響曲 : ヘルムート・ミュラー=ブリュール/ケルン室内管の13番、36番、協奏交響曲
2011/10/05 : ハイドン–交響曲 : ヘルムート・ミュラー=ブリュール/ケルン室内管弦楽団の交響曲72番等

特にマリア・クリーゲルのチェロ協奏曲で見事な伴奏を聴かせたヘルムート・ミュラー=ブリュール/ケルン室内管がサポートということで期待の演奏です。

Hob.XVIII:3 Concerto per il clavicembalo(l'organo) [F] (1765)
軽快な序奏から入ります。室内管弦楽団らしい透明感あふれる響きがリズミカルで心地よいですね。ヘルムート・ミュラー=ブリュールの飾らない誠実な伴奏。クナウアーのピアノは実にオーソドックスで誠実なものですが、リズムのキレが良く、適度な抑揚がハイドンの曲にピタリ。力をぬいてのしなやかな音階の部分などをさらりとこなすあたり、軽々と演奏を楽しむ感じで非常にいいですね。このさりげない感じが絶妙です。ソロとオケの息がピタリと合ってこの小協奏曲のファンタジーのような世界を描いていきます。よく聴くとクナウアーのピアノはリズムに微妙な緩急の変化をつけて楽しんでいるよう。カデンツァでもことさらテクニックを誇示することなく、音と戯れるような無邪気さがあります。流石にハイドンの協奏曲でデビューしただけあってハイドンのツボをバッチリ押さえています。
続くラルゴ・カンタービレ。抑えたミュラー=ブリュールの伴奏にさらに抑えたクナウアーのピアノが磨き抜かれた美しいメロディーを置いていきます。デリケートなタッチから生まれる美しさの限りを尽くした素晴らしいメロディーに酔いしれます。なんという幸福感。
そしてそよ風のように爽やかなフィナーレに入ります。ソロもオケも全く力まず、軽やかさを失わずに進みます。次々と変化する曲想を楽しみながら演奏しているよう。抑揚の変化の鮮やかさとソロとオケの絶妙な掛け合いの面白さに痺れます。1曲目から完全にノックアウト。完璧です。

Hob.XVIII:11 Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [D] (1784)
クナウアーのデビュー曲。ここでもさりげないヘルムート・ミュラー=ブリュールの伴奏は万全。フレーズ毎に表情の変化をつけながら軽快に躍動する伴奏だけでもオケの見事さがわかります。ピアノが入るところふっとテンポ落としますが、クナウアーが軽快なテンポに引きもどし、オケもそれに追随。遊び心満点の入りにニンマリ。クナウアーの速いパッセージのビロードのようにしなやかなタッチが印象的。このタッチがリズムのキレにつながって軽快な印象を保っていることがわかります。アルゲリッチのような火を吹くようなキレ味ではなく穏やかさを伴うキレ味。キレのいいピアノに刺激されてかオケも鮮やかに反応。この曲でもカデンツァはしなやかなタッチと曲想をコラージュしたようなユニークなもの。
前曲で美しさの限りを極めた2楽章ですが、この曲でもクナウアーのピアノの音色の美しさは見事。穏やかな伴奏に乗って、穏やかに描く美しいメロディー。特にカデンツァは息を呑むような孤高の美しさ。このXVIII:11のみパウル・バドゥラ=スコダのカデンツァでそれ以外はクナウアーのオリジナル。
そしてフィナーレは想像どおり軽快。ピアノとオケの掛け合いは軽妙洒脱。この曲をベートーヴェンのように壮大に演奏するものもありますが、本来はこのウィットに富んだ軽さにあるのだとでも言いたそう。聴きなれたこの曲が実に新鮮に響きました。

残りの2曲は簡単に。

Hob.XVIII:4 Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [G] (c.1770)
やはり遊び心に満ちた演奏。クナウアーとミュラー=ブリュールがニンマリと微笑みながら演奏している様子が想像できるようです。余裕たっぷりにさらりと演奏している感じが最高です。ゆったりと沈み込む2楽章に、リズムのキレが際立つフィナーレ。こちらも完璧。

Hob.XVIII:9 Concerto per violino, cembalo e orchestra [G] (before 1767)
録音数が極端に少ない曲ですが、ハイドンの真作ではない可能性が高い曲とのこと。曲想、ひらめきなど、他の曲とは異なる感じです。演奏の質は変わらないですが、ツボを押さえた感じまではしないのは曲の問題でしょうか。

セバスティアン・クナウアーとヘルムート・ミュラー=ブリュール/ケルン室内管によるハイドンのピアノ協奏曲集ですが、ハイドンの協奏曲でデビューしたクナウアーとハイドンを数多く演奏してきたミュラー=ブリュールの息がピタリとあった名演でした。2人ともハイドンの曲の面白さを知り尽くしているからか、まさに軽妙洒脱な演奏。そればかりではなく2楽章の磨き抜かれた美しい響きも絶品。メジャーレーベルのトップアーティストによる演奏に引けをとるどころか、こちらこそハイドンの曲の真髄に迫る演奏といってもいいほど。テクニックの使いどころが違います。本盤、以前取り上げたマリア・クリーゲルのチェロ協奏曲集同様、NAXOSレーベルを代表する名盤として多くの方に聴いていただきたい素晴らしい仕上がりです。評価は最後の曲をのぞいて[+++++]です。最後の曲も悪くはありませんがオマケという感じでしょうか。

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プロフィール

Daisy


Author:Daisy

ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

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ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものはリスト冒頭に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

登録曲数:1,365
登録演奏数:11,529
(2019年3月31日)
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