ホルスト・シュタイン/ドレスデン・シュターツカペレの太鼓連打、オックスフォード(ハイドン)

前記事でビーチャムの優美な交響曲を聴いて、穏やかな交響曲をもう少し聴いてみたくてLPの中から取り出した1枚。

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ホルスト・シュタイン(Horst Stein)指揮のドレスデン・シュターツカペレ(Staatskpelle Dresden)の演奏で、ハイドンの交響曲103番「太鼓連打」、92番「オックスフォード」の2曲を収めたLP。収録は1961年、レーベルはETERNA。

N響に度々客演していたので日本ではおなじみの方も多いホルスト・シュタイン。私は学生時代に父の仕事の関係で回してもらったコンサートのチケットで実演を聴いたことがあります。朧げな記憶とN響の演奏記録を照合すると、聴いたのはおそらく1983年2月にNHKホールでモーツァルトのプラハ、ヒンデミットのシンフォニア・セレーナ、オネゲルの交響曲3番 「礼拝」などが演奏されたコンサート。この日は大学の製図の締め切りで前日が徹夜だったため、モーツァルトは完全に子守唄で熟睡。目が覚めたのはヒンデミットに入ってから。ずんぐりむっくりしたシュタインの意外に緻密なタクトからの繰り出される多彩な響きと、穏やかな起伏を経て盛り上がる流れの良さ。この時はじめてヒンデミットを聴きましたが、独特な音楽に興味を持った覚えがあります。そしてオネゲルも聴いたことがあったのはパシフィック231くらい。こちらもオネゲルの迫力を生で存分に味わい、職人気質のホルスト・シュタインの繰り出す音楽の魅力を知った次第。

ホルスト・シュタインはWikipediaなどによれば、1928年、ドイツのエルバーフェルト(現ヴッパータール市)生まれの指揮者。フランクフルト音楽大学、ケルン音楽大学などで学び、その後はヴッパータール市立劇場合唱指揮者、ハンブルク州立歌劇場指揮者、ベルリン国立歌劇場を経てマンハイム国立劇場音楽監督になるなど、オペラの人。1952年から1955年にかけてバイロイト音楽祭でクナッパーツブッシュ、カイルベルト、カラヤンらの助手を務め、1962年にはバイロイトで「パルジファル」を指揮。1970年には「ニーベルングの指環」全曲を指揮するなどワーグナー指揮者として知られる人です。その後ウィーン国立歌劇場第1指揮者、ハンブルク州立歌劇場音楽総監督、スイス・ロマンド管弦楽団音楽監督、バンベルク交響楽団首席指揮者などを歴任するなど世界の一流どころで活躍。N響には16回客演しているとのこと。2008年に亡くなっています。

シュタインのハイドンの録音はおそらくこのアルバムのみ。しなやかで自然な流れと、大局を見据えて穏やかに盛り上げるコントロールはオペラの人ならではと言っていいでしょう。ハイドンの交響曲から穏やかに盛り上がる曲である太鼓連打を選ぶところも流石なところです。

Hob.I:103 Symphony No.103 "Mit dem Paukenwirbel" 「太鼓連打」 [E flat] (1795)
モノラルながらモノラル用のプレーヤーでかけると適度に鮮明でピラミッドバランスの分厚い音色が心地よい録音。テンポもフレージングもオーソドックスですが、凡庸な感じは一切せず、むしろ揺るぎない安定感と迷いのない説得力に満ち溢れている感じ。主題に入るとオケの分厚い響きの魅力がさらに増していきます。そしてフレーズ毎の表現のキレ味も見事。オケのすべてのパートがあるべきバランスにしっかりとはまって完璧な響きが繰り出されます。まさに太鼓連打の理想的な演奏。優美な曲のフォルムを堪能できます。1楽章の最初と最後のティンパニも実に穏やかに響き渡ります。
続くアンダンテも穏やかでジワリと盛り上がる期待通りの見事なコントロール。ツッコミどころ皆無の完璧に淀みのない音楽。ホルスト・シュタインという人の堅実な音楽がハイドンにピタリとはまります。そしてメヌエットでもゆったりざくっりとここでもしなやかに音楽が流れます。外連味なく堅実な運びは、誰にもできそうですが、おそらくこの高みには誰も到達できないであろう、地道に磨き上げたコントロール能力のなせる技とみました。
そして遠くから響くホルンの絶妙に美しい音色で始まる終楽章は、曲の結びにふさわしい盛り上がりを予感させる、さざめくような音階から入ります。気持ちよく吹き上がるオケを自在にコントロールしてここでも完璧なバランスに仕上げてきます。恐ろしいばかりのコントロール能力。最後まで冷静に温かい音楽を作っていく能力に脱帽。

Hob.I:92 Symphony No.92 "Oxford" 「オックスフォード」 [G] (1789)
太鼓連打同様、完璧に磨き抜かれたフォルムを纏った序奏から入ります。続く主題の推進力と迫力はなかなかのもの。速めのテンポによるフレーズのキレが良いのが推進力につながっているのでしょう。徐々に畳み掛けるような迫力を帯びて、1楽章から手に汗握る展開に圧倒されます。強奏の合間の木管の美しい響きがバランス良く聴こえるポイントなのでしょうか。素晴らしい迫力に惹きつけられます。
この曲の白眉たるアダージョは絶美。特に弦楽器のメロディーと木管に内声部のとろけるようなハーモニーは出色。完璧なフォルムに仕立てられた音楽に身をまかせるだけ。ハイドンの書いた音楽の美しさに何も足さず、素材だけで仕上げた本当の美しさ。ここまでの完成度に到達する演奏が他にありましょうか。メヌエットは太鼓連打同様優雅で堂々としたもの。そして、オックスフォードの聴きどころであるフィナーレの冒頭のメロディーはオケが軽やかに反応し躍動感満点。変奏を重ねるうちに徐々に盛り上がり、自然なクライマックスを構築。最後はビシッと決まります。

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ホルスト・シュタインによるハイドンの太鼓連打とオックスフォード。流石に歌劇場で鍛え抜かれたコントロール能力は伊達ではありませんね。ドレスデン・シュターツカペレの重厚な音色と相まって、ハイドンの交響曲の決定盤的な素晴らしい演奏に痺れました。派手な演出も個性的な解釈もないんですが、この演奏より完成度の高い演奏はありえないほどの揺るぎない構築感。その上ウィットに富んだフレージングもあり、晴朗なハイドンの魅力を存分に表していると言っていいでしょう。モノラルながら録音も盤石で、多くの方に聴いていただきたい名盤と言っていいでしょう。評価は[+++++]とします。



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【新着】ビーチャムの99番、時計初出ライヴ(ハイドン)

いやいや、素晴らしいアルバムがリリースされました!

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TOWER RECORDS / amazon

サー・トーマス・ビーチャム(Sir Thomas Beecham)指揮のロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(Royal Philharmonic Orchestra)の演奏で1950年代のBBCによるライヴを集めた4枚組のCD。ジャケットの左肩には誇らしげに"FIRST CD RELEASE"と記されており、初CD化ということがわかります。この中の1枚目にハイドンの交響曲99番、101番「時計」が収められています。収録は99番が1954年9月16日にロンドンのロイヤル・アルバートホール、時計が1959年10月25日に同じくロンドンのロイヤル・フェスティヴァルホールでのライヴです。レーベルはica CLASSICS。

ビーチャムといえば、1950年代にリリースしたザロモンセットの名録音が有名で、クラシカルなザロモンセットの決定盤的存在なのは、ハイドンファンのみなさまご承知の通り。かく言う私もザロモンセットの名演盤としてはビーチャムのアルバムは外せないものと見なしております。演奏はオーソドックスなものながら、揺るぎない説得力を帯びた、まさに定番的存在であります。当ブログでは交響曲は93番をだいぶ前に取り上げたきりになっておりました。

2013/07/24 : ハイドン–交響曲 : トーマス・ビーチャム/ロイヤルフィルの93番
2012/09/02 : ハイドン–オラトリオ : トーマス・ビーチャム/ロイヤル・フィルの四季

そのビーチャムの振るザロモンセットの交響曲に、BBCが録ったライヴがあると言うことで、本盤に興味を持った次第。ハイドン以外にもモーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスなどの交響曲も収められており、非常に貴重な録音です。

Hob.I:99 Symphony No.99 [E flat] (1793)
録音はモノラルながら、柔らかなオーケストラの響きと、コンサート特有のざわめきが味わえるなかなかいい録音。このアルバムを聴く前にEMIのセッション録音を聴き直しましたが、EMI盤の直裁な響きに対して、テンポがゆったりとして、実に自然な響きが心地いいですね。そして序奏から主題に入る流れのしなやかさはこの99番という曲の魅力をより素直に表現している感じ。自然な躍動感とゆったり流れる音楽の美しさが存分に味わえます。そしてビーチャムの美点はフレーズごとに実に品よく表情を描くこと。まさに古き良き時代のハイドンの見本のような演出ですが、古さを感じさせるというよりは普遍的な魅力を掘り起こしている感じ。1楽章は穏やかな構成感の美しさで聴かせます。
そして、99番の白眉であるアンダンテ。美しいメロディーが彫りの深い表情付けによって実に典雅な音楽に昇華。ハイドンの緩徐楽章の中でも最も美しい曲だけに、ジェントルなビーチャムの手に掛かるとロマネスクのバシリカのような形式美の極致に至るレベルになります。自然な音楽の呼吸に身を任せる至福のひととき。
そよ風のような軽い入りのメヌエット。メヌエットがなぜここに挟まれたかを考えての演出でしょう。この軽さの表現と、穏やかな展開がビーチャム独特の品のよさ。トリオを含めて絶妙に自然な軽さを表現。
フィナーレはメヌエットの軽さを引き継いでさらりと入りながら、徐々にオケに力が漲り、軽さと華麗さを伴いながらクライマックスへ向かっていく流れの面白さを存分に味わえます。オケには微塵も力みなく、余裕にあふれた表現。ハイドンはこうでなくちゃと言わんばかり。全楽章に優美さが香る名演です。拍手付き。

Hob.I:101 Symphony No.101 "Clock" 「時計」 [D] (1793/4)
録音年代とホールは変わりますが、こちらもモノラルで録音は悪くありません。しなやかさは99番で、ホールの残響はこちらの方が木質系の響きを感じます。優美な99番に対して、時計の1楽章はビーチャム流の品の良さは感じるものの、主題に入るとグイグイとオケを煽っていきなり大迫力。続く楽章との対比を鮮明に描こうというのか、ビーチャムにしてはかなりの迫力で攻めてきます。この時計の1楽章は見事な構成の曲ゆえ、それを見切っての踏み込みでしょう。低音弦にティンパニが唸り、アクセントも引き締まってライヴならではの高揚感。ちょっとトスカニーニを思わせるような見得を切る瞬間もあり、1楽章はビシッと決めます。
典雅に来ると思ったアンダンテですが、リズムを打つ管楽器がちょっと無骨さを感じさせ、流麗な弦楽器と合わさってなかなか面白い表情。古い時計のコミカルな動きを描こうというのでしょう。展開部からは1楽章同様、オケが唸りなかなかの迫力。表情の無骨さは変わらず、それが粗さではなく、迫力につながっているのは流石です。
そして、メヌエットはそのまま荒削りな魅力を伴って、グイグイときます。曲の構成をしっかり踏まえながらも、オケに演奏を任せてあまり細かいコントロールはしていない感じ。特にトリオのフルートなどはかなり自由に吹いている感じです。それでもオケの吹き上がりが心地よくハイドンのメヌエットの楽しさの真髄は突いています。メヌエットも最後のアクセントで釘を刺します。
フィナーレは期待通りオケがフルスロットルで気持ちよく盛り上がります。ビーチャムは面白いようにテンポを上げてオケを煽りまくり、オケもそれに応えてなりふり構わず爆発。こちらもライヴならではの高揚感。最後は大見得を切って観客も拍手喝采!

セッション録音の品のいい印象が強かったビーチャムですが、この時計はかなりオケに任せる面白い演奏でした。99番の方は典雅の極致、そして時計は最晩年のビーチャムの遊び心のようなものが垣間見える名演でした。ビーチャムが亡くなったのは1961年で60年には80歳で引退していますので、54年の99番は最も充実してオケをしっかりとコントロールした名演、時計はおそらくコントロール能力も落ちてきている時の演奏なのでしょう。このアルバムのハイドンの2曲はビーチャムという人の人生の記録でもありますね。特に99番の素晴らしさが心に残りました。両曲とも評価は[+++++]とします。

なお、ハイドンの2曲の後にボッケリーニのシンフォニア(G521)が収められていますが、これが実に面白い曲で、演奏も最高。こちらも楽しめます!



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ケッケルト四重奏団の「皇帝」(ハイドン)

ちょっと前に手に入れたLP。

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ケッケルト四重奏団(Koeckert-Quartett)の演奏による、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.76のNo.3「皇帝」などを収めたLP。収録情報は記載されておりませんが、ネットで調べてみると、同一音源の異なるLPの記録には1952年7月13日、ハノーファー会議センターのベートーヴェン・ホール(Beethoven Saal)でのセッション録音とあります。もちろんモノラル録音です。レーベルはDeutsche Grammophon。

ハイドン愛好家の方ならケッケルトといえば60年代に録音された太陽四重奏曲集が有名ですが、その他に72年録音のOp.74のNo.1のライヴがあり、双方以前に取り上げています。

2013/08/07 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : ケッケルト四重奏団のOp.74のNo.1(ハイドン)
2011/12/10 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : 【新着】ケッケルト四重奏団の太陽四重奏曲復刻盤

両アルバムを取り上げた際に、このLPの存在も確認していましたが、それから5年以上経ってようやくこのLPに出会った次第。しかも録音は最も古く、メンバーも前出の二枚とは異なり第2ヴァイオリンがオリジナルメンバーです。

第1ヴァイオリン:ルドルフ・ケッケルト(Rudolf Koeckert)
第2ヴァイオリン:ヴィリ・ビュヒナー(Willi Buchner)
ヴィオラ:オスカー・リードル(Oscar Riedl)
チェロ:ヨーゼフ・メルツ(Josef Merz)

いつものようにVPIのクリーナーと必殺美顔ブラシでクリーニングして、モノラル専用のプレーヤーで針を落とします。

Hob.III:77 String Quartet Op.76 No.3 "Kaiserquartetett" 「皇帝」 [C] (1797)
モノラルですが、期待通り鮮明で切れ味鋭い音色が飛び出してくるなかなかの録音。冒頭からビシビシとテンションマックスの4人のせめぎ合いはこちらも期待通り。比較的速めのテンポでまさにキレキレの演奏が飛び出してきます。モノラルカートリッジなので音像の安定感も揺るぎなく、安心して演奏を楽しめます。このダイレクトなシャープさはCDでは味わえませんね。適度に鄙びた音色ながらきりりと引き締まった響きがだんだん心地よく感じてきます。
ドイツ国歌の元になった2楽章は、今度はテンションを落としてOp。20のNo.5同様、枯淡の境地を聴かせます。メロディーの提示の後の変奏に入ると、各パートの味わい深さが一層深みを増して、若干古めかしい印象を与えますが、それもこの演奏の味わいのうち。たっぷりとヴィブラートをかけながらも昔を慈しむようなゆったりと、そしてあっさりとした語り口が郷愁を誘います。
メヌエットの最初の鮮明な一音で雰囲気をさっと変える見事な場面転換。こうしたセンスこそが曲のメリハリを印象付けます。メロディーラインがわずかにポルタメント気味なところが時代を感じさせますが、全体の印象は切れ味の良さを保っているのが時代を先取りしていたのでしょう。
そしてフィナーレでは1楽章のキレとテンションが戻ります。硬軟織り交ぜ、クッキリとコントラストをつけながら推進力で音楽をまとめ上げる手腕は見事。多少の粗さが個性でもあり、響を揃えるのではなく音楽の表情を揃えながらも音色がそれぞれ微妙に異なることで得られる深みが聴きどころみました。実に味わい深い演奏に舌鼓。

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ケッケルト四重奏団のハイドンでは最も古い録音である皇帝。やはりケッケルトは名四重奏団と納得した次第です。モノラルながら録音も鮮明。そして演奏も覇気がみなぎる素晴らしいものでした。こうした演奏の気配というべき空気感が録音から66年も経ってもLPから湧き出てくることも驚きです。評価は[+++++]と致します。



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ヨーゼフ・メスナーのオラトリオ版「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」(ハイドン)

最近手に入れた非常に古い録音のLP。

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ヨーゼフ・メスナー(Joseph Messner)指揮のザルツブルク大聖堂合唱団(The Salzburg Dome Choir)、モーツァルテウム管弦楽団(The Mozarteum Orchestra)の演奏で、ハイドンのオラトリオ版「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」を収めた2枚組のLP。収録情報はこのアルバムには記載されていませんが、同一音源と思われる手元のCD-Rには1950年7月30日のライヴ収録と掲載されています。レーベルは英REMIGTON。

鮮烈な赤地にキリストのイラスト、そして印象的なタイポグラフィのジャケットが所有欲をそそるアルバム。1950年の録音ということでもちろんモノラル。しかもこの曲を2枚組4面に渡って収録してあるもの。先日オークションで入手したアルバムです。音源自体はCD-Rとして出回っているものなので、特段珍しいものではありませんが、このアルバム自体の放つ独特のオーラがたまりませんね。

手元の所有盤リストを調べてみると、オラトリオ版の「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」ではこの演奏が一番録音年代が古く、そのあとはシェルヘン盤の1962年のものということで、この曲の録音史に残るものと言えるでしょう。

指揮者のヨーゼフ・メスナーは1893年、オーストリア西部のアルプス山麓のシュヴァーツという村の生まれ。幼い頃から音楽教育を受け、ミュンヘンで作曲、オルガンを学び、1920年代には作曲家、オルガニストとして活動をし始めます。1922年からはザルツブルク大聖堂のオルガニスト、1926年には楽長となり1969年に亡くなるまでその地位にあったとのこと。オルガン音楽の巨匠として知られ、ブルックナーの後継者とみなされていたということです。凄いのが歌手の布陣。

ソプラノ:ヒルデ・ギューデン(Hilde Guden)
アルト:クララ・エルシュレガー(Clara Ölschläger)
テノール:ユリウス・パツァーク(Julius Patzak)
バリトン:ハンス・ブラウン(Hans Braun)

ギューデンにパツァークとこの時代の一流どころを揃えた見事な配役ということで、いやが上にも期待が高まります。

Hob.XX:2 "Die sieben letzten Worte unseres Erlösers am Kreuze " 「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」 (1796)
古いアルバムゆえ、いつものようにクリーニングしてもスクラッチノイズは少々残る感じですが、このくらい古いものだと逆にフィルムの映画同様、ノイズが味わいの要素のように聞こえます。そしてやはりCD-Rよりもリアリティは上。序章の入りは時代がかった古風な雰囲気を感じさせる至極ゆったりとしたもの。序章の後、ハープシコードに続いて滔々と流れる大河のようなコーラスを伴った第1ソナタに入ります。ライヴらしく縦の線が揃わないところもありますが、逆にそれが教会でのリアルな行事のような印象を与えていい感じ。すぐにソロが入りますがやはりギューデンの輝かしく圧倒的な美声が一段と目立ちます。

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第1ソナタが終わると2面に移ります。第2ソナタはまるで劇画音楽のようにドラマティックな展開。荒々しく、しかも力強いコーラスのエネルギーが押し寄せます。じっくり朗々と音楽が語られていくにつれて、巨大なエネルギーに取り込まれていくような錯覚に陥ります。そして第3ソナタはさらにテンポを落として、孤高感が際立ちます。メスナーの自然の呼吸のようなコントロールにオケとコーラスはゆったりと反応。歌手も朗々と歌を合わせていくことで絶妙な一体感に至ります。

再び面を変えて第4ソナタ、第5ソナタ。もはやゆったりとしたテンポに体が慣れてきていますが、第5ソナタのピチカートがここまで遅いとは想像できませんでした。超スローテンポによって歌手による四重唱が聴きどころになった感じ。同じ曲なのに他の演奏とは全く異なる響きに感じてきます。終盤再びピチカートに戻りますが音楽を保つギリギリ所までテンポを落としてきます。キワモノ的解釈という印象はなく、この時代の演奏スタイルと理解すべきでしょう。

最後の面に変えて第6ソナタ、第7ソナタに地震。第6ソナタの途中で「ゴン」というノイズが入ることで、これがライブだと気付かされます。ここまで一貫して遅めのテンポで、ザックリと音楽を作ってきましたが、ただ遅いだけではなく、起伏が実に音楽的であると同時にこれがオラトリオであるとはっきりとわかる祈りの感情を伴わせてきています。終盤に差し掛かったことを思わせる陰りも見事。そして第7ソナタはこれが結びであるとわかる折り目正しさを感じさせる見事な展開。渾身の力で険しさと郷愁を描いていきます。まさに劇的なクライマックス。最後の地震はアンサンブルが若干崩れ気味なのが地震っぽい。力で押すのではなく純音楽的な表現が予想とちょっと違いました。

1950年録音のオラトリオ版の「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」ですが、まさにヒストリカルな演奏。時代の空気と奏者のエネルギーが音溝にしっかりと刻まれていました。演奏としてはもちろん荒く録音も時代なりですが、この演奏の価値はそこではなく、演奏史上の貴重な記録という所でしょう。人によって評価はまちまちでしょうが、私の評価は[++++]としておきます。何より同演奏のCD-Rとはコレクション価値が異なりますね。針音に時代の空気を感じる貴重なアルバムでした。

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【新着】ハンス・ロスバウトの交響曲集(ハイドン)

最近手に入れたヒストリカルなアルバム。しかも大物です!

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ハンス・ロスバウト(Hans Rosbaud)指揮のバーデン=バーデン南西ドイツ放送交響楽団(Südwestfunkorchester Baden-Baden)を指揮したハイドンの交響曲と協奏曲などの南西ドイツ放送の放送録音を7枚のCDにまとめたもの。もちろんレーベルはSWR CLASSIC。収録場所はバーデン=バーデン、南西ドイツ放送「ハンス・ロスバウト・スタジオ」でモノラル音源です。収録曲目と収録日は下記の通り。記載はCDへの収録順。

交響曲第12番(1961年6月22日)
交響曲第19番(1961年7月9日)
交響曲第48番「マリア・テレジア」(1961年7月8日)
交響曲第52番(1961年12月15日、16日)
交響曲第58番(1959年2月17日)
交響曲第65番(1959年2月16日)
交響曲第83番「めんどり」(1953年11月7日)
交響曲第87番(1952年6月23日)
交響曲第90番(1957年10月26日)
交響曲第93番(1958年12月19日)
交響曲第95番(1959年5月19日)
交響曲第96番(1954年6月25日)
交響曲第97番(1953年12月28日)
交響曲第99番(1952年6月27日)
交響曲第100番「軍隊」(1953年3月25日)
交響曲第102番(1953年3月25日)
交響曲第104番「ロンドン」(1952年6月27日)
チェロ協奏曲2番(1952年12月21日)
 チェロ:モーリス・ジャンドロン(Maurice Gendron)
トランペット協奏曲(1959年4月9日)
 トランペット:ヴァルター・グライスレ(Walter Gleissle)
ヴァイオリン、チェンバロと弦楽オーケストラのための協奏曲ヘ長調 Hob.XVIII:6(1959年2月18日)
 ヴァイオリン;スザンネ・ラウテンバッハー(Susanne Lautenbacher)、チェンバロ:エディト・ピヒト=アクセンフェルト(Edith Picht-Axenfeld)
ピアノ協奏曲 ニ長調 Hob.XVIII:11(1959年4月3日)
 ピアノ:マリア・ベルクマン(Maria Bergmann)
レオポルド・ホフマン(伝ハイドン):フルート協奏曲(1960年7月2日)
 フルート:クラフト=トーヴァルト・ディロー(Kraft-Thorwald Dillo)
交響曲第104番(1962年3月30日、31日)
交響曲第45番「告別」(1958年11月15日-19日)

ただし、最後の「告別」はオケはベルリンフィル、収録場所はベルリンのツェーレンドルフ(Zehlendorf)のプロテスタント教区教会での収録で、この曲のみステレオ収録です。

ハンス・ロスバウトの振るハイドンの交響曲は以前に1度取り上げています。

2013/09/02 : ハイドン–交響曲 : ハンス・ロスバウト/ベルリンフィルのオックスフォード、ロンドン(ハイドン)

これは1956年から57年にかけてベルリンフィルを振った演奏で、1955年にカラヤン体制となったベルリンフィルを見事にコントロールしまとめ上げる匠の技。そのロスバウトがこれほど多くのハイドンの交響曲の録音を残しているということで、リリースを知った時にはかなり驚きました。というよりはやく聴いてみたいということで、すぐに注文を入れそれが先日届いたという次第。ちなみにその驚きの大きさから、amazonに発注していたのうっかり忘れてTOWERにも注文を入れ、なんと手元に2組あります(苦笑)

早速所有盤リストに登録すべくデータを見てみると、交響曲は初期の12番からロンドンまで18曲も収録され、ロンドンは録音交響曲収録時期を見ると1952年から1962年までと、52年と62年の2種が含まれます。また告別のみベルリンフィルと1958年の収録で、先に取り上げたDGとのアルバムの収録の後に南西ドイツ放送の放送録音が残されたことになります。この辺りの経緯を想像すると、この南西ドイツ放送との素晴らしい放送録音がDGに現代音楽で知られるロスバウトにベルリンフィルでハイドンの交響曲集を録音させることを決断させたのではないかと思います。

到着してから色々聴いていますが、骨格のしっかりした演奏で、なおかつハイドンの曲の面白さをしっかりと踏まえた見事な演奏が並び、聴きごたえ充分。ハイドンの交響曲録音、特にドラティによる全集が完成する前の50年代から60年代の交響曲のまとまった録音としては、リステンパルトやアンセルメ、ビーチャムなどと並んで最も完成度が高い演奏であると思います。特にドイツ的なハイドンの面白さを非常によく表現しており、ビーチャムともリステンパルトともアンセルメとも異なる辛口の面白さを感じさせます。この頃の録音は他にも最近CDとしてリリースされたマックス・ゴバーマンとウィーン国立歌劇場管、nonesuchなどからリリースされているレスリー・ジョーンズとリトル・オーケストラ・オブ・ロンドン、アントニオ・アルメイダとハイドン協会管、デニス・ヴォーンとナポリ管など色々ありますが、しっかりと筋の通った演奏はロスバウトが一番です。

ちなみに、いつものペースでレビューするのと1月かかってしまいますので、聴きどころのいくつかの曲を取り上げます。

まずは、このセットの目玉であるベルリンフィルとのステレオ録音。

Hob.I:45 Symphony No.45 "Abschied" 「告別」 [f sharp] (1772)
1楽章は速めのテンポでしかもインテンポでの颯爽とした入り。畳み掛けるようにグイグイと攻めてきますが、決してバランスを崩すことなく秩序を保ちアクセントもくっきり。まさにこの曲の理想的な演奏。続くアダージョは弱音器付の弦楽器が奏でる穏やかなメロディーを淡々と重ねていきます。1楽章からの繋がりにも一貫性があって音楽が淀みなく流れます。静かな気配の中に流れる悲しげなメロディーの美しさが際立ちます。現代音楽を得意とするだけあって、この研ぎ澄まされた感覚は見事の一言。メヌエットも冷静な進行ながらジワリと情感が香る佳演、というかここまで雰囲気に溢れ美しさが滲み出るメヌエットは滅多にありません。聴きどころのフィナーレ、前半はあえてオケが少し乱れるほどに荒く入ります。ただし造形は必要十分に彫り込まれてスタイリッシュ。そして奏者が1人づつ去るアダージョは実に豊かなニュアンスを伴いながら楽器が少しずつ減っていく絶美の進行。最後のヴァイオリンの音が消えいる瞬間の美しさは例えようがありません。これは素晴らしい演奏です。

続いてちょい地味な90番。これが実に素晴らしい。

Hob.I:90 Symphony No.90 [C] (1788)
冒頭から冷静に引き締まったいい流れ。録音はモノラルながら非常に聴きやすく問題ありません。非常に紳士的な気品に溢れた演奏。テンポが落ちる前のジュリーニの演奏を少々ドイツ的にした感じといえばいいでしょうか。続くアンダンテは、これがまた慈愛に満ちた素晴らしい入り。しかも古びた印象は皆無。感傷的な印象も皆無。ゆったりと楔をうつような中間部の余裕も気品が感じられます。そしてあえて淡々としたフルートのソロも見事すぎる出来。メヌエットも気品に満ちたリズムのキレを聴かせます。そして終楽章は、ラトルが繰り返し取り上げていますが、エンディングを終わりそうで終わらないという演出のコミカルさでまとめるだけでなく、音楽の格調高さも感じさせる秀演。ここでもロスバウトの気品の高さが際立ちます。

そして特に気に入ったのが97番。

Hob.I:97 Symphony No.97 [C] (1792)
こちらもザロモンセットの中では比較的地味な曲ゆえ、ロスバウトの見通しのよい構成感と気品が絶妙にマッチする曲。少し足早な1楽章から、2楽章に入ると告別同様の素晴らしい雰囲気を堪能できます。こうした緩徐楽章のしなやかな起伏の表現は絶品。よく聴くとフレーズごとに丹念に表情が変化させる緻密なコントロールがなされていることがわかります。木管楽器の悲しげなハーモニーと全奏の慟哭のコントラストも見事。ハイドンの交響曲に込められた機知と変化を見事に表現しています。極上の音楽。メヌエットはこの曲では優雅で雄大。そしてトリオへのつながりのなんとさりげないこと。このセンスの良さはただならぬものがあります。そしてフィナーレはキレ良く軽やかにまとめます。軽快な吹き上がりとオケのバランスを保つ匠の技。

他の曲もいい演奏ばかりで聴きごたえ十分です。

ハンス・ロスバウトによるハイドンの交響曲集ですが、気負いなくハイドンの曲の面白さを見事に表現した名演揃い。1950年代から60年代という録音年代を考えると非常に垢抜けた演奏であり、現在我々が聴いても古さを感じさせるどころかハイドンの普遍的な魅力に迫る見事な演奏という評価が適正でしょう。レビューした3曲はいずれも[+++++]とします。他の曲もざっと聴いた感じでは[+++++]レベルの演奏が多く、少し癖を感じる演奏も混入しているというところ。ハイドンの交響曲がお好きな方は必聴のアルバムと言っていいでしょう。

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tag : 交響曲90番 交響曲97番 告別 ヒストリカル

オットー・マツェラート/ヘッセン放送響の95番(ハイドン)

このところ古い録音の交響曲を続けて取り上げています。昔はLPをリリースするためにかなりの労力が必要だったからか、それぞれ素晴らしい完成度であることに今更ながらに驚きます。

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オットー・マツェラート(Otto Matzerath)指揮のヘッセン放送交響楽団(Symphonieorchester des Hessischen Rundfunks)の演奏でハイドンの交響曲95番他を収めたLP。収録情報は記載がありませんし、ネットを調べてもこのアルバムの情報に巡り合いませんが、マツェラートの略歴とステレオ収録であることから1957年から61年あたりの録音だと思います。レーベルはCHRISTOPHORUS。

このアルバムも最近オークションで仕入れたもの。指揮者のマツェラートは全く未知の人。オケの方は現在hr交響楽団と呼ばれ、しばらく前まではフランクフルト放送交響楽団と呼ばれていた楽団。インバルによるマーラーの交響曲の録音で日本でも知られていますね。この楽団の首席指揮者は2013年までパーヴォ・ヤルヴィが務めていましたが、そこから遡るとパリセットの名録音があるヒュー・ウルフ、ドミトリー・キタエンコ、エリアフ・インバル、ディーン・ディクソンそして1955年から61年までが今日取り上げるアルバムの指揮者であるオットー・マツェラート。この辺りの経緯はWikipediaのhr交響楽団のページをご参照ください。

オットー・マツェラートは現代の日本ではほとんど知る人がいないのではないでしょうか。調べてみると1914年デュッセルドルフに生まれたドイツの指揮者。地元デュッセルドルフの現ロベルト・シューマン音楽院でヴァイオリンとピアノ、オペラを学び、指揮は独学とのこと。歌劇場で経験を積み1942年、フルトヴェングラーによりコンサート指揮者として見出され、ベルリンフィルなども振っていたそう。戦後もドイツを中心に活躍し、先に触れた通り、1955年から61年までヘッセン放送響の指揮をしていたようです。その後なんと1963年9月から読響の首席指揮者となりましたが、直後の11月、相模原のキャンプ座間の米軍病院で亡くなったそうです。日本とも関係があった人ですが、わずか2ヶ月で急死してしまったということで、記憶に残っている方も少ないのではないかと思います。

さて、そのマツェラートの振るハイドンですが、堂々としたオーソドックスな名演奏として見事なものでした。

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Hob.I:95 Symphony No.95 [c] (1791)
このころの録音に共通する引き締まったオケの響き。オーソドックスさがそのまま演奏の特徴となっているような正統派の演奏。各パートはバランスよく鳴り響き、細密画のように一糸乱れぬ見事なアンサンブルで指揮者の律儀さが伝わって来るよう。各パートのメロディーが実によく聴こえます。1楽章はまるで教材のような完璧なアンサンブル。
続くアンダンテでもメロディーラインのクリアさを保ちながら、しなやかさも加わりしっとりとした情感が乗ってこの曲の陰りがよく表現されています。実に緻密な演奏。
ハイドンの交響曲の楽しみはメヌエット。曲毎に千変万化するメロディーの想像力にいつもながら驚かされます。マツェラートはザクザクとではなく、しっとりとしたメヌエットできました。律儀なフレージングの中にほっこりとするような安らぎを感じるメヌエット。
そしてフィナーレもオーソドックスなアプローチながらくっきりとしたメロディーが印象に残ります。フーガの幽玄さを感じさせながら徐々にオケに力が漲っていきますが、最後まで余裕を失わず、古典の均衡を守ったクライマックスで曲を閉じます。

なんとなくもう一歩踏み込んで欲しい感は残りますが、ハイドンの交響曲の演奏としては、バランスの良くまた各パートの動きもクリアに追えるレベルの高い演奏です。オットー・マツェラートという指揮者の清廉な音楽が浮かび上がってきているのでしょう。それがこの95番という振り方によっては険しさに焦点が当たりすぎる曲の穏当な解釈として貴重な存在とも言えます。評価は[++++]とします。ネットの情報ではこの95番の他にも何曲かハイドンの交響曲の録音があるようですので、気長に探してみたいと思います。

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tag : 交響曲95番 ヒストリカル

リステンパルト/ザール室内管の交響曲21番、マリア・テレジア(ハイドン)

その存在を最近知ったアルバム。LPの音がこれほどまでに美しいとは。

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カール・リステンパルト(Karl Ristenpart)指揮のザール室内管弦楽団(Chamber Orchestra of The Saar)の演奏で、ハイドンの交響曲21番、48番「マリア・テレジア」と、ギュンター・ヴァント(Günter Want)指揮のギュルツェニヒ交響楽団(Gürzenich Symphony Orchestra of Cologne)の演奏で交響曲82番「熊」の3曲を収めたアルバム。リステンパルトの方の収録は同じ音源と思われるマリア・テレジアのCDの収録情報から1965年1月、ドイツ南部のフラウラウターン(Fraulautern)でのセッション録音。レーベルは優秀録音で知られる米nonsuch。(2017/11/23収録情報を修正:cherubinoさんご指摘ありがとうございます!)

今日はリステンパルトの演奏を取り上げましょう。リステンパルトのハイドンは私の溺愛する演奏の一つ。ブログ最初期にホルン信号の記事を書いて以来、録音が手に入ると取り上げてきました。今年の夏に気まぐれで始めたザロモンセットの名演奏では時計のベスト盤にリステンパルトを選んでいます。

2017/08/20 : Best Choice of Works : 【ハイドン音盤倉庫特選】ザロモンセットの名演奏(後編)
2015/12/31 : ハイドン–交響曲 : カール・リステンパルト/ザール室内管の81番、王妃(ハイドン)
2013/01/07 : ハイドン–交響曲 : カール・リステンパルトの驚愕、軍隊、時計
2010/02/04 : ハイドン–交響曲 : 絶品! リステンパルトのホルン信号

今日取り上げるアルバムに含まれる演奏のうち、マリア・テレジアはホルン信号のアルバムにも収録されていますので、初出は21番だけということになりますが、ホルン信号の記事を書いた頃には具体的なレビューを書いておりませんので、改めてマリア・テレジアもちゃんと取り上げることにします。最初の記事に書いた通り、「一言でいうとごく普通の演奏なんですが、まろやかなオケの音色、中庸なテンポ、すべての奏者の息がぴたりと合って大きな音楽を奏でていて、これ以上の演奏はないというような完成度。」といえも言われぬ演奏を期待してしまいますね。

Hob.I:21 Symphony No.21 [A] (1764)
いつものようにVPIのクリーナーで綺麗にクリーニングしてアルバムに針を落とした途端、まさにとろけんばかりのまろやかなオケの響きに包まれます。1楽章はアダージョで、弦はまろやかな上に分厚い低音をベースに無限に広がるような広い空間にゆったりと響きわたり、木管、金管陣はクッキリと浮かび上がります。いきなり脳内が快楽物質で満たされます。続く2楽章に入ると未曾有の推進力に満ち溢れ、さらに空間が広がります。何でしょう、このエネルギーに満ちた軽快さは。LPから素晴らしいエネルギーが湧き出てきます。そしてそのエネルギーがキレの良さに変わる3楽章のメヌエット。フレーズの一つ一つが波打つように弾みます。そしてフィナーレに到るまでキレキレのオケはエネルギーを放ち続けます。恐ろしいまでの集中力。これはこれまで聴いたリステンパルトのハイドンの中でも別格の素晴らしさ。そして超絶的名録音。

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Hob.I:48 Symphony No.48 "Maria Theresia" 「マリア・テレジア」 [C] (before 1769?)
そしてCDでも聴いているマリア・テレジアですが、このエネルギー溢れる音はLPならでは。このエネルギーはデジタルでは出ません! 日曜の夜だからか、アンプも絶好調でゾーンに入って、スピーカーからオケのピラミッドのような分厚い低音をベースとした響きが轟きます。続く2楽章は弱音器付きの弦楽器のしっとりとした入りからホルンのメロディーが重なっていきますが、ホルンの響きのなんたる美しさ。静寂の中に各楽器の織りなす綾が光沢を伴って揺らめきます。絶美。
2楽章の終わりでLPをひっくり返します。メヌエットはゆったりとしたテンポで余裕たっぷりの演奏と思いきや、すぐにずしりと響く迫力を帯びて険しさを垣間見せます。そしてメヌエットの力感を抜くように、爽やかにフィナーレに入りますが、弦楽器の恐ろしいまでのボウイングのキレの迫力ですぐに図太い流れを作ります。このLP、特に低音の迫力が見事でした。

この後に収められたヴァントの熊ですが、録音は高音がこもり気味で今ひとつ。というより、前2曲が素晴らしすぎました。

カール・リステンパルト指揮のザール室内管による交響曲2曲でしたが、素晴らしい演奏と素晴らしい録音が揃った超名盤と言っていいでしょう。nonesuchといえば長岡鉄男さんが民族音楽などの名録音盤を数多く紹介していたこともあって録音の素晴らしさで知られるレーベルですが、このアルバムはこれまで聴いたnonesuchの中でも飛び抜けて素晴らしいもの。1966年のプロダクションですが、現在でもこれを超える録音は見つからないでしょう。もちろん演奏もリステンパルトのハイドンの最上のもの。これは宝物レベルのアルバムですね。もちろん評価は2曲とも[+++++]です。LPの再生環境がある人はこのアルバムを是非入手して、リステンパルトとnonesuchの陶酔を味わってほしいものです。

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tag : ヒストリカル 交響曲21番 マリア・テレジア

シャルル・ミュンシュ/ボストン響の太鼓連打、ロンドン(ハイドン)

最近手に入れたヒストリカルなCD。最近CD化されたものです。

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TOWER RECORDS(Charles Munch - The Complete RCA Album Collection) / amazon

シャルル・ミュンシュ(Charles Munch)指揮のボストン交響楽団(Boston Symphony Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲103番「太鼓連打」、104番「ロンドン」、ヘンデルの組曲「水上の音楽」ハーティ版の3曲を収めたアルバム。ハイドンの収録は太鼓連打が1950年12月26日、27日、ロンドンが1950年4月10日、11日、いずれもボストンのシンフォニーホールでの録音と記されています。レーベルはRCAですが日本盤で2016年の12月にシャルル・ミュンシュの芸術1000というシリーズでリリースされたもの。帯にはハイドンは「世界初CD化」「日本初発売」と記されています。

シャルル・ミュンシュと言えば幻想交響曲の鬼気迫る録音が印象に残っています。もちろんフランス物というイメージが強くハイドンを振るイメージはありませんね。ただし録音はいくつかあり、あの鬼気迫る棒でハイドンを料理したらどうなるだろうと言う興味からこれまでに3度ほどミュンシュのハイドンを取り上げています。

2011/05/19 : ハイドン–交響曲 : 【新着】シャルル・ミュンシュ/ボストン響の98番ライヴDVD
2011/02/19 : ハイドン–交響曲 : シャルル・ミュンシュの102番爆演
2010/03/07 : ハイドン–その他 : ANDaNTE:懐かしの名演奏集

ANDaNTEのアルバムに含まれるのは1938年パリ音楽院管弦楽団との協奏交響曲、102番は1956年のボストン響との演奏、そして98番は1960年のもの。ミュンシュは1891年生まれで、ボストン響の常任指揮者に就任したのが1949年ですので、今日取り上げる演奏は、ボストン響への就任直後でミュンシュが60歳になろうとする頃の演奏です。ちなみに名演の誉れ高いパリ管との幻想交響曲のEMIへの録音は1967年、同じくパリ管とのブラームスの1番は1968年の録音で、ミュンシュは1968年にパリ管とのアメリカツアー中に急逝したとのことです。

Hob.I:103 Symphony No.103 "Mit dem Paukenwirbel" 「太鼓連打」 [E flat] (1795)
1950年の録音ということでもちろんモノラルですが、録音はなかなか良く比較的シャープな響き。これはLPで聴いてみたくなります。入りの太鼓は遠雷タイプ。厳かな序奏が終わるとミュンシュらしいインテンポでキレの良い主題をザクザクと刻んでいきます。いきなり流石ミュンシュと思わせる迫力。ヴォリュームを上げて聴くと怒涛の迫力に圧倒されます。それでいて古典の枠から外れることなく、筋を通しているあたりが一流どころと唸らされます。そこここに鋭いアクセントが楔のように打たれ曲をタイトに引き締めます。1楽章を聴くだけで流石ミュンシュとわかる演奏。
続くアンダンテは表現を抑えて淡々とした入り。それでもメロディーにはほんのりと覇気が漲り、終盤にかけてのクライマックスでは弦が徐々に赤熱していくのがわかります。優雅にメヌエットをやり過ごして最後のフィナーレはミュンシュの面目躍如。速めのテンポでグイグイ来ました! 今度は本格的に赤熱。まさに痛快。オケもミュンシュの棒に完璧に反応して素晴らしいフィナーレ!

Hob.I:104 Symphony No.104 "London" 「ロンドン」 [D] (1795)
続いてロンドン。太鼓連打とは少し印象が異なり、荘厳な序奏のまま主題に入ってもテンポを上げません。この曲の雄大さをさらに強調するかのようにゆったりとした歩みのまま、表現がさらに壮大になっていきます。パワーが無限にあるような素晴らしい集中力。中盤以降に入るとギアを上げてさらにパワーアップ。またまた来ました、ミュンシュ豪快な煽りに乗って1楽章は未曾有の盛り上がり。
続くアンダンテは、テンポを落としたまま。おそらくこのロンドンというハイドン最後の交響曲のスケールの大きさを表現しようとしているのでしょう。フレーズの一つ一つを噛みしめるように丁寧に進みます。中間部はザクザクと鉈を振るうような大胆な演奏。メヌエットはこのアルバムの中ではテンポも表現も最もオーソドックスな演奏ですが、それでもミュンシュらしいキレを感じさせます。そしてフィナーレは再びインテンポでキレキレに畳み掛けながら突き抜けるようにクライマックスへ向かいます。やはりここぞのキレの鋭さはミュンシュならではですね。

やはりミュンシュのハイドンはキレていました。この演奏がこれまでCD化されて来なかったのは、RCAにはフリッツ・ライナーのハイドンの演奏があったからではないかと想像しています。同じく爆演系のライナーに対して、パリ管との録音ではEMIに行ってしまったミュンシュはRCAにとってはむしろ商売敵になってしまっていたのかもしれませんね。1950年の録音から66年後にCD化はされましたが、日本では初回限定生産で既に廃盤。RCAのミュンシュのコンプリートコレクションと言うボックスには収録されておりますので、ミュンシュファンの方はこちらを手に入れるべきかもしれませんね。この演奏、私は評価します。もちろん[+++++]です!

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tag : 太鼓連打 ロンドン ヒストリカル

ボロディン四重奏団のひばり(ハイドン)

月末ですが、一本追加です!

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ボロディン四重奏団(Borodin Quartet)の演奏による、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.64のNo.5「ひばり」、モーツァルトの弦楽四重奏曲KV421(417b)、クラリネット五重奏曲KV581の3曲を収めたアルバム。ハイドンの収録は1958年。レーベルは露Мелодия(Melodiya)。

ボロディン四重奏団や、メンバーの一部で構成されたボロディン三重奏団の演奏はこれまで4度ほど取り上げています。

2012/09/17 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : ボロディン四重奏団の十字架上のキリストの最後の七つの言葉
2012/07/02 : ハイドン–室内楽曲 : ボロディン三重奏団のXV:27
2011/08/21 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : 【新着】ボロディン四重奏団のロシア四重奏曲
2011/08/06 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : ボロディン弦楽四重奏団の十字架上のキリストの最後の七つの言葉ライヴ

一番下の記事に書いたように、ボロディン四重奏団は終戦の年1945年に結成されたクァルテットですが、メンバーを替え現在も活動している世界でも最も活動期間の長いクァルテットの一つ。最初に取り上げた「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」のライヴは鋼のような引き締まりまくった素晴らしい演奏が鮮明に印象に残っています。そのあと比較的最近の録音を取り上げていますが、今日取り上げるアルバムは手元の録音の中でも最も古い1958年の録音。ボロディン四重奏団のオリジンに迫ることができるでしょうか。
この演奏のメンバーは下記の通り。

第1ヴァイオリン:ロスティラフ・ドゥビンスキー(Rostislav Dubinsky)
第2ヴァイオリン:ヤロスラフ・アレクサンドロフ(Yaroslav Alexandrov)
ヴィオラ:ディミトリー・シェバリーン(Dmitri Shebalin)
チェロ:ユーリ・トゥロフスキー(Yuri Turovsky)

Hob.III:63 String Quartet Op.64 No.5 "Lerchenquartetett" 「ひばり」 [D] (1790)
なんと禁欲的な入りでしょう。各パートが引き締った音色を重ねますが、滲みも厚みも皆無。デッドな録音であることも手伝って非常にタイトなアンサンブル。鋭利な響きが耳に刺さります。ひばりという優雅な曲から優雅さを取り払って、真剣による居合いの勝負のような険しい響きになっちゃってます。アンサンブルの険しさは類を見ないほど。ヴァイオリンのドゥビンスキーのボウイングに隙はなく、他のメンバーもそれに触発されて全く隙のない緻密な演奏にこちらも襟を正さざるを得ません。
続くアダージョでも、張りつめた緊張感はかわらず。本来は癒されるような音楽なのに、それとは正反対に緊張を強いるテンションの高さ。そう思って聴いているとチェロばぐっと踏み込んできて、音楽に厚みをもたらし、少し緊張をほぐしてくれます。緻密なアンサンブルだけにこうしたちょっとした変化が鋭敏に察せれ、それが音楽の豊かさをもたらします。
メヌエットでも鋭利な表現は変わらず。リズミカルなんですが鋭利さが鋭いアタックを印象づけ、舞曲とは感じられませんが、この曲の本質には関係ありません。パートごとにメロディーを重ねていくところでは滲みのない鮮明な録音によって重なりのおもしろさが鮮明によみがえります。そしてフィナーレは上下する音階を完璧に再現して、複雑な楽譜がさも簡単に演奏されているが如き磐石の安定感でまとめます。

こちらが想像した通りのボロディン四重奏団のタイトな響が聴かれtました。このあとのモーツァルトのクァルテットとクラリネット五重奏曲もこのクァルテットらしくタイトなものですが、最後に収められたクラリネット五重奏曲が絶品です。こちらは録音のせいかあじわい深い演奏。

ボロディン四重奏団のオリジンを知るべく取り上げた1958年メロディアによる録音。予想どおり超タイト、超辛口の演奏を堪能する事ができました。ボロディン四重奏団のオリジンはやはりこの引き締ったタイトさにありましたね。メンバーを替えて今もこの往時の響きがこのクァルテットの個性の雛形になっているということで、クァルテットの個性はメンバーのみにあらずということを証明しているようでもあります。もちろん評価は[+++++]とします。

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tag : ひばり ヒストリカル

ロンドン・ウィンド・ソロイスツのディヴェルティメント集(ハイドン)

勝手に室内楽の秋に突入しています(笑)

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ジャック・ブライマー(Jack Brymer)指揮のロンドン・ウィンド・ソロイスツ(London Wind Soloists)による、ハイドンの2本のオーボエ、2本のホルン、2本のバスーンのためのディヴェルティメント7曲(Hob.II:D23、II:15、II:3、II:D18、II:G8、II:23、II:7)を収めたLP。収録情報はPマークが1968年と記載されていますが、同音源からCD化されたTESTAMENTのアルバムには1967年9月17日〜20日、25日、27日〜29日、ロンドンのウエスト・ハムステッド・スタジオ(West Hampstead Studios, London)でのセッション録音との記載があります。レーベルは英DECCA。

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こちらは手元にある同内容を収めたTESTAMENTのCDです。収録曲は同一ですが、なぜか曲順が異なり、指揮者の表記はありません。こちらはまだ入手可能です。

このアルバムに収められている曲は、ハイドンが1760年ごろに書いた管楽のための6声のディヴェルティメントで、一部ハイドンが書いたものではないものが混じっています。楽器はオーボエ、ホルン、ファゴット各2本。1760年ごろといえば、ハイドンが20代の終盤。1759年にボヘミアのモルツィン伯爵に仕えはじめ、同年に交響曲1番を作曲し、その2年後の1761年にはアイゼンシュタットのエステルハージ侯爵の副楽長に就任するという、ハイドンの創作期のごく初期に当たります。後年の成熟した筆致は見られないものの、すでに楽器の音色に関する鋭敏な感覚や、展開の面白さは十分に感じられる作品群です。

演奏するロンドン・ウィンド・ソロイスツは、LPのプロデューサーだったエリック・スミスによるライナーノーツによると、当時エリック・スミスがグライドボーン歌劇場で聴いたモーツァルトのオペラのオーボエのフレーズが歌手の歌よりも心にしみると感じたことをきっかけに、モーツァルトの管楽作品を録音するために結成されたアンサンブル。メンバーはトーマス・ビーチャムが創設したロイヤルフィルの精鋭管楽奏者で構成され、このアルバムの指揮を担当したジャック・ブライマーがメンバーをまとめたとのこと。このメンバーによりモーツァルト、ベートーヴェンの管楽作品が録音され、それに続いてこのアルバムが録音されたと記されています。メンバーは次の通り。

オーボエ:テレンス・マクドナー(Terence Macdonagh)
オーボエ:ジェームズ・ブラウン(James Brown)
ホルン:アラン・シヴィル(Alan Civil)
ホルン:イアン・ハーパー(Ian Harper)
ファゴット:ロジャー・バーンスティングル(Roger Birnstingl)
ファゴット:ロナルド・ウォーラー(Ronald Waller)

演奏を聴くと、ビーチャムの振るハイドンの交響曲同様、中庸のバランスを保つ味わい深い響きが流れます。

Hob.II:D23 Divertimento [D] (1757/60) (Forgery 偽作)
いきなりハイドンの作でない曲から入ります。録音年代当時は真贋を判断できる状況ではなかったものと推定されます。アレグロ・ディ・モルト、メヌエット、ポロネーズ、プレストの4楽章構成。録音はDECCAだけに鮮明。TestamentのCDも悪くありません。管楽六重奏ということで主に高音のメロディーがオーボエ、リズムをファゴット、そしてホルンが響きを華やかにする役割。ハイドンの作といわれてもわからない明確な構成と美しいメロディーが特徴の曲。そう言われて聴くとちょっと展開が凡庸な気もしなくはありません。まずは耳慣らし。

Hob.II:15 Divertimento [F] (1760)
これはハイドンの真作。プレスト、メヌエット、アダージョ、メヌエット、プレストとハイドンのディヴェルティメントの典型的な構成。明るく伸びやかな1楽章のメロディーから、ほのぼのとしたメヌエットに移る絶妙な感じ、これぞハイドンでしょう。音数は少ないもののメロディーの美しさは見事。そしてアダージョのホルンのなんという伸びやかさ。演奏の方も管楽器の音色の深みを存分に活かした素晴らしいもの。2つ目のメヌエットはその伸びやかさをさらりとかわす涼風のように入ります。楽器が少ないからこそ各パートのデュナーミクの微妙なコントロールの見事さがよく分かります。そしてフィナーレの軽やかな躍動感。奏者の鮮やかなテクニックを楽しみます。

Hob.II:3 Divertimento (Parthia) [F] (1958?)
アレグロ、メヌエット、アンダンテ、メヌエット、プレストの5楽章構成。入りのリズムのキレの良さ印象的。メヌエットの中間部に漂う異国情緒のような雰囲気が独特な曲。そしてアンダンテの中間部にもその余韻が感じられるユニークなメロディー。曲ごとに全く印象が変わりながら、しっかりとまとまっているのはハイドンの真骨頂。このような初期の曲からその特徴が見られます。2つのメヌエットのくっきりとした構成感が印象的。そしてフィナーレはホルンの超絶技巧が仕込まれていました。ホルン奏者はことも無げにこなします。これは見事。

Hob.II:D18 Divertimento (Cassatio/Parthia) [D] (1757/60)
アレグロ、スケルツォ、メヌエット、アダージョ、メヌエット、アレグロの6楽章構成。ファゴットの刻む軽快なリズムに乗って、オーボエが滑らかに、ホルンがくっきりとメロディーを乗せていきます。短いスケルツォを挟んで、なぜか旅情を感じるようなメランコリックなメヌエットの美しいメロディーに移ります。メヌエットの中間部はファゴットの印象的なメロディーが繰り返されます。どうしてこのようなメロディーのアイデアが湧いて来るのかわかりませんが、独創的な構成。そしてあまりに見事なアダージョに入ります。管楽合奏の美しさを極めた絶美の音楽。ハーモニーの美しさにノックアウト。メヌエットできりりと引き締めて、フィナーレは一瞬で終わりますが、見事に曲を結ぶ傑作でしょう。

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Hob.deest(II:G9,II:G8) Divertimento [G] (1760)
LPをひっくり返して5曲目。LPもCDもHob.II:G8との表記ですが、他のアルバムではdeestと記載され、大宮真琴さんの新版ハイドンではII:G9と記載されています。アレグロ、メヌエット、アンダンテ、メヌエット、プレストの5楽章構成。1楽章は落ち着いた曲調で入ります。しなやかなメロデぃーに沿ってホルンが心地よく響くのが印象的。1楽章の曲想を踏まえたメヌエットでは、中間部に入るとファゴットが音階を刻みながらハモってメロディーを重ねるのがユニーク。3楽章はアダージョではなくアンダンテ。それでもゆったりとしたハーモニーを聴かせながら流します。2つ目のメヌエットを経て音階を駆使したフィナーレで曲を閉じます。

Hob.II:23 Divertimento (Parthia) [F] (1760?)
アレグロ、メヌエット、アダージョ、メヌエット、プレストという典型的な構成。優雅な入りからリズミカルな展開が軽快な曲。ホルンとオーボエのメロディーがシンプルながら実に心地よく絡み合います。メヌエットメロディーの展開の面白さはアイデアに富んでいてディヴェルティメントならでは。そしてまたしても管楽器が絶妙に重なり合って美しい響きを作っていくアダージョ。それを受けるようにゆったりと入るメヌエット。フィナーレはポストホルンのようにホルンが活躍し、各パートが絡み合ってくっきりとしたメロディーを描いていくところは流石ハイドン。

Hob.II:7 Divertimento (Feld-Parthie) [C] (1757/60)
最後の曲。この曲もアレグロ、メヌエット、アダージョ、メヌエット、プレストという典型的な構成。冒頭のメロディーをキーにリズミカルに展開していく音楽。楽器ごとの響きの対比をそこここに配置して響きの違いに耳を向けさせます。同じ構成なのにいつも通り全く異なるアイデアで曲を作っていきます。メヌエットも一筋縄では行かず、どうしてこのようなメロディーを思いつくのかと唸るばかり。このアルバムを通じてメヌエットの構成の面白さは格別のものがあります。型にはまりつつもその中での崩しというか変化の面白さを追求する大人の世界。そしてまたまた美しさに磨きがかかったアダージョに引き込まれます。2つ目のメヌエットの中間部も驚きの展開。そしてアルバムの終結にふさわしい壮麗なフィナーレで曲を結びます。

弦楽四重奏曲やピアノトリオなどに比べるとぐっと地味なディヴェルティメントで、しかも管楽六重奏とさらにマイナーな曲ながら、ハイドンの創意のオリジンに出会えるような見事な曲を収めたアルバム。聴けば聴くほど味わいを感じる見事な演奏です。奏者の腕も素晴らしいのに加えて、実に音楽性豊かな演奏で、ハイドンの曲を楽しむことができます。幸いCD化もされていますので、この演奏を非常にいいコンディションで楽しむことができます。ハイドンの室内楽の面白さの詰まった名盤と言っていいでしょう。評価は全曲[+++++]
とします。

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プロフィール

Daisy


Author:Daisy

ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

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(2019年3月31日)
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十字架上のキリストの最後の七つの言葉ショスタコーヴィチ驚愕シェーンベルク悲しみオックスフォード交響曲75番チェロ協奏曲ホルン協奏曲古楽器時計弦楽四重奏曲Op.50アンダンテと変奏曲XVIII:6弦楽四重奏曲Op.64弦楽四重奏曲Op.20弦楽四重奏曲Op.54天地創造レスピーギヴォルフリゲティヨハン・シュトラウスリヒャルト・シュトラウスタリスモーツァルト軍隊交響曲10番ピアノソナタXVI:49交響曲54番迂闊者ネルソンミサバリトン三重奏曲ベートーヴェンピアノソナタXVI:52交響曲2番ピアノソナタXVI:37ピアノソナタXVI:46皇帝日の出弦楽四重奏曲Op.71ブルックナー交響曲88番ベルリオーズナッセンバッハウェーベルンベンジャミンヴァレーズメシアングリゼーシェルシOp.20弦楽四重奏曲交響曲9番交響曲65番交響曲67番弦楽四重奏曲Op.76交響曲73番交響曲39番狩り交響曲61番リームアンダンテと変奏曲XVII:6ピアノソナタXVI:20ピアノソナタXVI:6ピアノソナタXVI:48四季交響曲全集リムスキー・コルサコフラヴェルピアノソナタXVI:44ピアノソナタXVI:45ピアノソナタXVI:21ピアノ三重奏曲第九ヒストリカル太鼓連打交響曲99番ボッケリーニロンドンシューベルト交響曲5番チャイコフスキーストラヴィンスキーライヴピアノ協奏曲XVIII:11弦楽四重奏曲Op.2序曲ヴィヴァルディオペラ序曲アリア集パイジェッロピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6すみだトリフォニーホールピアノソナタXVI:34ブーレーズサントリーホール弦楽四重奏曲Op.74変わらぬまこと哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェアルミーダ騎士オルランド無人島チマローザ英語カンツォネッタ集ピアノ協奏曲XVIII:1ピアノ協奏曲XVIII:4ピアノ協奏曲XVIII:3交響曲3番交響曲79番アレルヤラメンタチオーネチェロ協奏曲1番交響曲58番交響曲27番交響曲19番紀尾井ホールドビュッシーミューザ川崎協奏交響曲オーボエ協奏曲LPヴァイオリンとヴィオラのためのソナタピアノソナタXVI:32ピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:40ピアノソナタXVI:38ピアノソナタXVI:29スタバト・マーテルピアノソナタXVI:39マーラー告別交響曲90番交響曲97番奇跡交響曲18番ひばりフルート三重奏曲交響曲102番交響曲86番ヴァイオリン協奏曲哲学者ニコライミサ小オルガンミサミサブレヴィス交響曲95番交響曲93番交響曲78番ピアノソナタXVI:23王妃武満徹SACDライヴ録音交響曲80番交響曲81番交響曲21番マリア・テレジアクラヴィコード豚の去勢にゃ8人がかりBlu-ray東京オペラシティ交響曲11番交響曲12番交響曲4番交響曲15番交響曲1番交響曲37番ピアノソナタXVI:25ピアノソナタXVI:8ピアノソナタXVI:2ピアノソナタXVI:12ピアノソナタXVI:42ピアノソナタXVI:14ピアノソナタXVI:5ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:3ピアノソナタXVI:1ディヴェルティメント東京芸術劇場交響曲98番ピアノソナタXVI:35ピアノソナタXVI:7ピアノソナタXVI:36ドニぜッティロッシーニライヒャ弦楽三重奏曲東京文化会館フルート協奏曲弦楽四重奏曲Op.9弦楽四重奏曲Op.17剃刀弦楽四重奏曲Op.103弦楽四重奏曲Op.77ファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:31ピアノソナタXVI:26バードアレグリパレストリーナモンテヴェルディ美人奏者交響曲70番ピアノ協奏曲XVIII:7アコーディオンスコットランド歌曲ヴェルナーガスマンピアノソナタXVI:24交響曲51番交響曲46番交響曲35番DVD交響曲47番テレジアミサピアノソナタXVI:28アリエッタと12の変奏XVII:3ラ・ロクスラーヌ帝国ハイドンのセレナードピアノソナタXVI:51五度ラルゴラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.33弦楽四重奏曲Op.1騎士交響曲17番ピアノソナタXVI:27シベリウス交響曲42番時の移ろいベルリンフィルホルン信号弦楽四重奏曲Op.55交響曲87番トランペット協奏曲リュートピアノソナタXVI:10ピアノ五重奏曲チェチーリアミサ東京国際フォーラムラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン雌鶏冗談ナクソスのアリアンナピアノ協奏曲XVIII:5ピアノ協奏曲XVIII:9ヴァイオリンソナタ交響曲52番ピアノ協奏曲XVIII:2ロンドン・トリオオフェトリウムドイツ国歌モテットカノンよみうり大手町ホールパッヘルベルアダージョXVII:9受難交響曲84番パリセットベルク主題と6つの変奏オペラアリアスクエアピアノピアノソナタXVI:41交響曲57番交響曲68番リラ・オルガニザータ協奏曲交響曲50番交響曲89番偽作CD-Rトビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師オルガン協奏曲火事交響曲38番リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10交響曲77番交響曲34番温泉フルートソナタドイツ舞曲誕生日校長先生ピアノソナタXVI:11音楽時計曲ピアノソナタXVI:47bisピアノ小品カートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストオーディオバリトン二重奏曲交響曲66番交響曲91番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47読売日響オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:22変奏曲XVII:7天地創造ミサジャズ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノヴェーベルン府中の森芸術劇場裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャマリアテレジア交響曲56番2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ新橋演舞場サルヴェ・レジーナテ・デウムカッサシオン室内楽曲ベトナム料理国立新美術館高音質CD交響曲28番交響曲13番交響曲62番交響曲107番交響曲108番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲スカルラッティカンタータ声楽曲戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中ピアノソナタXVI:30カラヤンスウェーリンク書籍交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽ピアノソナタ

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