ピエール・アンタイ チェンバロ・リサイタル(白寿ホール)

コンサートの秋とばかりに、コンサートに通っています。

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日本アーティストマネジメント:ピエール・アンタイ チェンバロ・リサイタル

ハイドンがプログラムされているわけではありませんでしたが、ちょっと気になっていたコンサート。どうして気になっていたかというと、、、

2011/02/13 : ハイドン–室内楽曲 : アンタイ/クヴェール/ヴェルツィアーによるピアノ三重奏曲集

そう、以前レビューしたピアノトリオのアルバムが実に素晴らしかったからなんですが、チケットを取った後、よくよく確認してみると、以前のアルバムでフォルテピアノを弾いていたのはジェローム・アンタイ(Jérôme Hantaï)、今回のコンサートはピエール・アンタイ(Pierre Hantaï)。アンタイ違いかと思いきや、この2人、兄弟でした(笑)。しかも、この兄弟には、もう1人有名な奏者がいて、そちらもレビュー済みでした!

2011/11/23 : ハイドン–室内楽曲 : クイケン・アンサンブルによる「ロンドン・トリオ」

ロンドン・トリオでフラウト・トラヴェルソをバルトルト・クイケンとともに吹いていたマルク・アンタイ(Marc Hantaï)もこの兄弟とのこと。それぞれ生年月日をみるとマルク、ジェローム、ピエールの順でした。日頃奏者の背景はきちんと調べている方ではありますが、この辺りは把握外でした(笑)

そのピエール・アンタイ、1964年パリに生まれて、グスタフ・レオンハルトに触発されてチェンバロを学び始め、兄弟で活動しながら頭角を現し、同じく兄弟で活躍するクイケン兄弟やミンコフスキなどと共演を重ねているそうです。近年はル・コンセール・フランセを立ち上げ指揮にも活動領域を広げています。なおネットを検索してみると、何度か来日もしているようで、ラ・フォル・ジュルネなどにも来ていますね。



この日の会場は白寿ホール。小田急沿線の代々木八幡駅が最寄駅なのでうちからは非常に便利。ここははじめてです。株式会社白寿生科学研究所ということころが運営しているホールで、代々木公園脇のビルの7階にあります。

IMG_9252.jpeg

開場時間に到着しロビーのある7階に上がると代々木公園越しに新宿の高層ビルや初台のオペラシティが一望できる眺望。屋上にも出られて開放感があっていいですね。まずはいつも通りワインで血流を適度に活性化します(笑)

プログラムは下記の通り。またロビーに掲示されていた情報によると、当日使用したチェンバロは「Jan Kalsbeek 2000年製作 ミートケモデル」とあります。専門外でどのような楽器かわからないのでこのまま検索してみると、情報がありました。梅岡楽器サービスのコンサートレンタル用2段鍵盤チェンバロのジャーマンタイプで、オランダのベテラン作家Jan Kalsbeek氏によるM・MIETKEモデルということでした。歯切れの良い音色でバッハなどの演奏に適したモデルとのこと。こちらに画像があります。

梅岡楽器サービス:レンタル用2段チェンバロ

配布されたプログラムと掲示によると演奏される曲は下記の通り。事前に公表されていたものとちょこちょこ変更点があります。

ラモー:クラブサン小曲集より
 アルマンド、クーラント(1728)、内気(1741)、三つの手、サラバンド(1728)、つむじ風、ロンドー型式のジーグ(1724))
J.S.バッハ:アリア(イタリア風のアリアと変奏 BWV989より)
ヘンデル:序曲「忠実な羊飼い」より P.アンタイ編曲
ヘンデル:組曲「ボ―トンハウスの筆写譜」より
 プレリュード、アルマンド、クーラント、サラバンド、メヌエットと変奏、ジーグ
D.スカルラッティ:ソナタK.3、ソナタK.208、ソナタK.175
 (休憩)
J.S.バッハ:パルティータ 第6番 ホ短調 BWV830
D.スカルラッティ:ソナタK.871


私にとってははじめて聴く曲がかなりあります。バッハとスカルラッティは馴染みはなくはありませんが、ラモーとヘンデルはオーケストラもの以外はほとんど未聴。ということで実に新鮮な体験となります。

ホールは300席と室内楽向け。ホールの内装も綺麗でなかなかいいホールです。珍しくフカフカの座席で疲れるかと思いきやなかなかいい座り心地でした。設計はどこかと調べてみると、音響設計も含めて竹中工務店。この日の席は前から8列目のやや右。アンタイの表情が良く見え、響きも非常にいい席でした。

開演前のステージの真ん中に置かれたチェンバロはなかなかの存在感。バルダッキーノ様の脚部が伝統を感じさせます。

開演時間となり、ホール内客席の照明が落ちると、まずはスタッフが出てきてチェンバロの蓋を開けます。開演直前まで蓋を閉じているのは照明が当たって調律に影響することを避けるためでしょうか。すぐにピエール・アンタイが登壇、軽く客席に会釈してすぐに演奏に入ります。

最初のラモーは素晴らしい色彩感。ダイナミクスにかなり制限のあるチェンバロで表現の幅を広げるのは主にテンポとアゴーギク。かなり自在にテンポを動かしながらキレの良いタッチでグイグイ弾き進めます。フランス人らしく独特の華やかさがラモーの魅力とシンクロしている感じ。曲間を短めにとって、対比を浮かび上がらせるあたり、曲の組み合わせにもこだわりがあるようですね。一覧のラモーの曲の演奏を終えたところで、拍手。
続いてバッハ。同じ楽器の同じ音色ながら、一瞬でバッハの世界に変わります。楽器の説明にバッハの演奏に適すると書いてあったのも納得。まさに厳粛な雰囲気に変わります。バッハは1曲のみで、すぐにヘンデルへ。ヘンデルになると音数が増えます。これでもかというように音が畳みかけてくる感じ。アンタイの見事なテクニックを存分に披露。キリリと引き締まった曲想、堂々とした祝祭感、そして畳み掛けるような音階。チェンバロでの演奏でこれだけの迫力を表現するのは曲、演奏ともに見事ですね。配布されたプログラムではここで休憩が入る予定でしたが、ロビーの掲示でこの後のスカルラッティの後に休憩が変更されました。
スカルラッティには膨大な数のソナタがあり、どこかハイドンのソナタにも共通する感覚があるのでたまに聴きますが、アンタイのチェンバロでの演奏はハイドンの延長上のような印象よりも抽象的な、あるいは現代的な印象が伴うものでした。調律も影響したかもしれませんね。時折不協和音のような響きが印象的に混じりながら、予想外の展開が連続するという感じ。前半のラモーとヘンデルがビシッと決まっていたのに対して、なんとなく座りの悪い印象も少々残りました。

休憩中は、ロビー以外にも屋上のスカイテラスに出ることができます。これは良いですね。生憎この日は雲が重く垂れ込める天気でしたが、外の空気をすってのんびりできるのは貴重です。

休憩後も、スタッフがチェンバロの蓋を開けるところから入ります。休憩中も蓋を閉めていたんですね。バッハのパルティータ6番。やはりバッハは有無をも言わせぬものでした。チェンバロの響きは非常に美しいものの、優雅な印象はなく、険しく攻めるようなバッハ。速めのテンポで曲が進むうちにバッハの深遠な世界に引き込まれるよう。ここでも自在にテンポを動かしながら自ら感じるままにバッハの音符に戯れるアンタイ。奏者自身は無我の境地なのでしょう。こちらはチェンバロの響きの渦に巻き込まれていくような不思議な感覚になります。やはりバッハは偉大ですね。
そして、最後にスカルラッティを1曲。最後のスカルラッティはアルカイックな雰囲気を楽しむことができました。ピエール・アンタイは、このチェンバロリサイタルを聴きに来たコアなお客さんのあたたかい拍手にはにかみながら会釈で応え、何度かのカーテンコールの後、「バッハ」とだけつぶやき、アンコールにバッハを演奏。曲名の発表があったのかもしれませんが、バッハに明るいわけではないため、曲名は分からず。パルティータの時の深遠な世界にすぐに戻る見事な演奏。バッハを2曲演奏してコンサートを終えました。



アンタイ違いからチケットをとったコンサートでしたが、非常に良い響きのホールで、名手の手による演奏を堪能。結果的にチェンバロという楽器の魅力を生で実感でき、大変良い経験になりました。

外に出ると幸い雨は降り出しておらず、散歩にちょうど良い気候だったため、白寿ホールから下北沢まで散歩がてらのんびり歩いて帰途につきました。



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tag : ラモー バッハ スカルラッティ ヘンデル

エフゲニー・スドビンのピアノソナタ集

これも最近入手したアルバム。BISからリリースされたピアノソナタ集。ピアニストは未知の人ながら、良いプロダクションの多いBISレーベルの魅力に惹かれて手に入れたもの。

Sudbin32.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

エフゲニー・スドビン(Yevgeny Sudbin)のピアノによるハイドンのピアノソナタ集。ピアノソナタ3曲(Hob.XVI:32、XVI:50、XVI:34)とファンタジア(Hob.XVII:4)、アンダンテと変奏曲(Hob.XVII:6)そして弦楽四重奏曲Op.64のNo.5「ひばり」のフィナーレの6曲。収録はHob.XVI:32とXVI:50が2009年2月、XVI:34とファンタジア、ひばりのフィナーレが2009年6月、アンダンテと変奏曲が2010年1月、イギリス西部のブリストルにある聖ジョージ教会でのセッション録音。レーベルはスェーデンのBIS。

最近のtwitterによると「ハイドンが上手なピアニストはスカルラッティも良い」との法則があり、演奏の頻度から言うと、おそらく「スカルラッティが上手なピアニストはハイドンも良い」との逆法則も成り立つとの盲目的邪推も成り立ちます。このスドビンはスカルラッティを弾いたデビューアルバムが絶賛されたとのふれこみだったのでHMV ONLINEに注文していたもの。元の法則は以前取りあげたチェスのサイトを運営するpascal_apiさんのつぶやきですが、いいところをついていると思います。

エフゲニー・スドビンは1980年サンクトペテルブルク(私の世代にはレニングラードの方がなじみます)生まれのピアニスト。幼い頃から音楽的才能を知られ、1987年にサンクトペテルブルク音楽院、1990年にベルリン、1997年よりロンドン王立音楽院でピアノを学びました。マレイ・ペライヤやレオン・フライシャーに師事し、その後ヨーロッパ、アメリカ、カナダツアーで名を知られるように。2005年にスカルラッティのソナタ集のデビュー盤が好評を博し、その後ラフマニノフ、チャイコフスキーとメトネル、スクリャービンなどのアルバムのリリース。このハイドンのソナタ集はそれに続くもの。2011年1月には初来日しているのでコンサートを聴かれた方もいるのではないでしょうか。

このアルバムのジャケットには若々しい奏者がカジュアルな服装で写っており、もしかしたらアイドル系との憶測もありますが、とりあえずスカルラッティがいいと聞けば、当ブログで取りあげない訳にはいかないと思った次第。

Hob.XVI:32 / Piano Sonata No.47 [b] (1776 or before)
ちょっと几帳面な感じはするものの、ピアノを上手く響かせてハイドンの曲の良さを上手い具合に表現する人との第一印象。速い音のつながりのコロコロころがるような心地よさと、左手の迫力ある低音のコントラストがなかなか。一貫して推進力にあふれた進行。ハイドンの前進する力感をうまく表現しています。
2楽章は素晴らしいきらめき感。ちょっと手作り感のあるものですが、それが実にいい味わいを醸し出しています。1楽章とは異なり、つぶやくようなゆったりとしたテンポ。この楽章の音楽性は本物ですね。音を聞かせようという意図ではなく音楽を聴かせようとする姿勢を感じる演奏。実に深い呼吸。なかなか大物ですね。
フィナーレも一音一音が立っているような粒立ちのよさと推進力が素晴らしい演奏。速いパッセージのキレは抜群。この若さでこのハイドンの表現の深さは見事。勢いの良さを最後まで保つかと思いきや、最後の音は思い切り力を抜いたもの。

Hob.XVI:50 / Piano Sonata No.60 [C] (probably 1794)
名曲XVI:50。やはり素晴らしい力感から入りました。この大作ソナタを軽々と、しかも抜群の粒立ちで弾きこなしていきます。低音部が重要なソナタですが、左手の表情はかなり豊かでキレのいい低音を重ねていきます。録音はSACDの最新のものだけあって十分。BIS独特の北欧の空気のような澄んだ音響が心地よいです。スドビンはハイドンの楽譜を楽しみながら弾き進めていくような余裕があり、装飾音を加えたり、リズムを変化させたり、構えたところはなく自在な演奏。
この曲もアダージョの音楽性はピカイチ。夕暮れに星が瞬き始めるようなかすかなきらめきをが絶妙。抑えながらも表現は濃い瞬間。オーロラの揺らめきのようにうっすらと表情を変えていく、まさに推移の芸術。
3楽章は2楽章の静かな感動から覚醒するように鮮烈なリズムを刻みます。キレのいいタッチと自在なリズムを重ねてあっという間に曲を結びます。

Hob.XVI:34 / Piano Sonata No.53 [e] (c.1782)
この曲も名曲。かなりスタッカート気味にはじまります。ブレンデルの演奏では低音から沸き上がる音階の面白さに焦点があたっていたものを、スドビンは音符配置の面白さを強調しているよう。高音の音階はまるで編み機から繰り出されるように滑らかなもので、左手の音階と、右手の音階の表情が全く異なる魅力を放つテクニカルな表現。またしても右手から繰り出される転がるような音階は痛快そのもの。途中、おそらくわざとでしょうが、たどたどしさを感じさせる部分もあって、なかなか興味深い演奏。
この曲もアダージョの表現は秀逸。高音のきらめきの美しさはスドビンの持ち味ですね。この曲でもめくるめく美しさが素晴らしいものです。
ハイドンのソナタのフィナーレの中でも非常に覚えやすいメロディーのこの曲。聴き慣れたメロディーラインを自在に変化をつけて、生まれたてのメロディーのように刻んでいきます。

Hob.XVII:4 / Fantasia (Capriccio) op.58 [C] (1789)
弾き散らかすがごとき切れ味で入るファンタジア。音符を完全に自身のものとして自在に弾き進めます。速い音階の切れ味、リズムの切れ味、表現の切れ味の三拍子そろった演奏。途中非常に長い休符をとって表現力を見せつけます。この曲は素晴らしいテクニックと自在な音楽性を嫌というほど見せつけるような素晴らしい演奏です。

Hob.XVII:6 / Andante con Variazioni op.83 [f] (1793)
古くから名演奏の多いこの曲ですが、スドビンは冒頭から詩情あふれるきらめきで圧倒。やはり只者ではありませんね。最初は軽い響きから入りますが、音楽の濃さは別格。伝統の重さを知っているからか、この曲では表現はオーソドックスな範囲にとどめているよう。指のキレは相変わらす素晴らしいものがあり、曲自体を最高の演奏で楽しむような極上のひと時。この曲がこれほど高音のメロディーが美しい曲だったと再認識させられるような素晴らしい演奏。最後の渾身の響きも鋼のような見事なものでした。

Hob.III:63 / String Quartet Op.64 No.5 "Lerchenquartetett" 「ひばり」 [D] (1790)
最後は弦楽四重奏曲のフィナーレをピアノに編曲したもの。3分少々の曲ですが、この腕にしてこの曲を選んだと唸らされるもの。原曲ももちろんいいんですが、このピアノ版も、この演奏でしか聴く事のできない驚きに満ちています。このアルバムのアンコールピースのようなアクロバティックな要素も持つ演奏。


最近聴いた若手のハイドンのピアノソナタの中ではピカイチの出来。エフゲニー・スドビンの演奏によるハイドンのピアノソナタ集はハイドンのソナタの真髄をえぐる素晴らしい演奏でした。スカルラッティを弾いたデビューアルバムが評判となった人だけあって、ハイドンのソナタも自然かつアーティスティックな魅力をもつ素晴らしい演奏でした。これは将来が楽しみな人。若手でこれだけ表情豊かなハイドンを弾くとは驚きにに近い印象です。評価はもちろん[+++++]とします。

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tag : ピアノソナタXVI:32 ピアノソナタXVI:50 ピアノソナタXVI:34 ファンタジアXVII:4 アンダンテと変奏曲XVII:6 弦楽四重奏曲Op.64 ひばり スカルラッティ SACD

ユーリ・エゴロフのピアノソナタXVI:20ライヴ!

今日はピアノソナタ。先週末ディスクユニオンで掘り出したものです。

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amazon

ユーリ・エゴロフ(Youri Egorov)のピアノによるハイドンのピアノソナタHob.XVI:20、スカルラッティのソナタ6曲、ベートーヴェンのアンダンテ・ファヴォーリの演奏2種を収めたアルバム。音源はオランダのVARA放送協会からのもので、ハイドンのソナタは1981年2月19日、アムステルダム・コンセルトヘボウ大ホールでのライヴ。レーベルはCANAL GRANDEとありますがプラケースに貼られたシールによるとCHANNEL CLASSICSのプロダクションのようです。

ユーリ・エゴロフはロシア、モスクワの東約600Kmの街カザン(Qazan)生まれのピアニスト。Wikipediaの情報をまとめると、1954年に生まれ1988年に亡くなっています。ロン=ティボー国際コンクール、チャイコフスキー国際コンクール、ベルギーのエリザベート王妃国際音楽コンクールなどで次々と入賞。1976年ローマで演奏旅行中に西側に亡命した。1978年ニューヨーク・デビュー、それから3日後にシカゴ・デビュー、そして12月にはカーネギー・ホールにデビューし、その演奏はライヴ収録された。自らゲイを公表したことでも有名なようで、亡くなったのは33歳の若さで、エイズによる合併症とのこと。

私はこのアルバムに出会うまで知らないピアニストでしたが、調べるとグールド同様天才肌のピアニストですね。それは演奏を聴いても明らか。並の演奏ではありません。

Hob.XVI:20 / Piano Sonata No.33 [c] (1771)
最初に拍手が入る私の好きなライヴの入り。会場の雰囲気をそのまま伝えるように、長い拍手と演奏が始まるまでの長い間がそのまま収められています。ホールのざわめきが緊張感を高めます。XVI:20はハイドンのピアノソナタの中でも1、2を争う好きな曲。静まり返ったコンセルトヘボウにエゴロフの軽やかなピアノの音が響き渡ります。強弱のメリハリが鮮明で、いい演奏に共通するように抑えた部分の表現が絶妙。録音は鮮明さはほどほどですが、ホールに響き渡るピアノの音と会場ノイズがまるでコンセルトヘボウで生で聴いているような素晴らしい効果。フレーズの切れ目の速度を落とした部分だけでも夜空の星のきらめきのごとき輝き。速いパッセージの指の切れは凄まじいもの。ピアノを完全に掌握。速度と強弱を完全にコントロールして素晴らしい表現。ピアノによるハイドンのソナタの演奏の極限的な美しさを見るよう。
2楽章はアンダンテ・コン・モート。この曲はエマニュエル・アックスの演奏が好きな演奏の一つなんですが、エゴロフのこの演奏も素晴らしいもの。快晴の山頂の夜の星空のようなきらめき感と微風のような穏やかさがじわりと伝わる至福の一時。
フィナーレはリズムのキレと音階の素晴らしいエネルギーに圧倒されます。リズムはこれ以上ないほど弾み、指がすばらしいスピードで音階を奏でます。これだけのキレ具合にはなかなか出会えません。ハイドンのソナタのフィナーレの理想的な演奏。グールドの速い部分のキレも素晴らしいですが、エゴロフのほうが表情豊か。最後は会場が暖かい拍手に包まれます。

このあと収められた6曲のスカルラッティのソナタも抜群の出来。祈りにもにた静謐な時間。ハイドンとは全く異なるスタイルでの演奏。収録曲は33番、23番、478番、116番、483番、423番の6曲。このスカルラッティも気に入りました。そして最後のベートーヴェンは1982年と亡くなる前年の1987年の2種の演奏。こちらもさりげない情感の迸る素晴らしい演奏。いやいや、これは掘り出し物です。

若くして亡くなった天才ピアニスト、ユーリ・エゴロフのハイドン、抜群の出来でした。もちろん評価は[+++++]とします。今月はあたりのアルバムが多くてうれしい忙しさ。残念なのは本盤は廃盤であろうこと。上記のamazonのリンク先も中古盤で結構な値がついてます。このような名演奏を廃盤のままにしておいてはなりません。人類の大損失でしょう。昨日につづき「ハイドン入門者向け」タグもつけます。

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tag : ピアノソナタXVI:20 ライヴ録音 ハイドン入門者向け スカルラッティ

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

最新記事
カテゴリ
ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものはリスト冒頭に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

登録曲数:1,365
登録演奏数:11,529
(2019年3月31日)
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交響曲4番モーツァルトヨハン・クリスチャン・バッハオックスフォードロンドン豚の去勢にゃ8人がかりピアノソナタXVI:51ピアノ三重奏曲十字架上のキリストの最後の七つの言葉ヘンデルラモースカルラッティバッハ驚愕ショスタコーヴィチシェーンベルク交響曲75番悲しみチェロ協奏曲古楽器ホルン協奏曲時計弦楽四重奏曲Op.50アンダンテと変奏曲XVIII:6弦楽四重奏曲Op.64弦楽四重奏曲Op.20弦楽四重奏曲Op.54天地創造ヴォルフレスピーギヨハン・シュトラウスリヒャルト・シュトラウスタリスリゲティ交響曲10番軍隊ピアノソナタXVI:49迂闊者交響曲54番ネルソンミサバリトン三重奏曲ベートーヴェンピアノソナタXVI:52交響曲2番ピアノソナタXVI:37ピアノソナタXVI:46日の出皇帝弦楽四重奏曲Op.71交響曲88番ブルックナーベルリオーズウェーベルンベンジャミンナッセングリゼーメシアンヴァレーズシェルシOp.20弦楽四重奏曲交響曲67番交響曲65番交響曲9番弦楽四重奏曲Op.76狩り交響曲39番交響曲73番交響曲61番リームピアノソナタXVI:6アンダンテと変奏曲XVII:6ピアノソナタXVI:20ピアノソナタXVI:48四季交響曲全集リムスキー・コルサコフラヴェルピアノソナタXVI:45ピアノソナタXVI:44ピアノソナタXVI:21第九太鼓連打ヒストリカルボッケリーニ交響曲99番シューベルト交響曲5番ストラヴィンスキーチャイコフスキーライヴピアノ協奏曲XVIII:11弦楽四重奏曲Op.2序曲ヴィヴァルディオペラ序曲パイジェッロアリア集ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6すみだトリフォニーホールピアノソナタXVI:34ブーレーズサントリーホール弦楽四重奏曲Op.74哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェ変わらぬまこと無人島アルミーダ騎士オルランドチマローザ英語カンツォネッタ集ピアノ協奏曲XVIII:4ピアノ協奏曲XVIII:3ピアノ協奏曲XVIII:1ラメンタチオーネアレルヤ交響曲79番交響曲3番チェロ協奏曲1番交響曲27番交響曲58番交響曲19番紀尾井ホールドビュッシーミューザ川崎LPオーボエ協奏曲協奏交響曲ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:40ピアノソナタXVI:32ピアノソナタXVI:38ピアノソナタXVI:29スタバト・マーテルピアノソナタXVI:39マーラー告別交響曲97番交響曲90番交響曲18番奇跡ひばりフルート三重奏曲交響曲102番交響曲86番ヴァイオリン協奏曲哲学者小オルガンミサミサブレヴィスニコライミサ交響曲95番交響曲93番交響曲78番ピアノソナタXVI:23王妃武満徹SACDライヴ録音交響曲81番交響曲80番マリア・テレジア交響曲21番クラヴィコードBlu-ray東京オペラシティ交響曲11番交響曲12番交響曲15番交響曲37番交響曲1番ピアノソナタXVI:2ピアノソナタXVI:42ピアノソナタXVI:14ピアノソナタXVI:8ピアノソナタXVI:12ピアノソナタXVI:25ピアノソナタXVI:3ピアノソナタXVI:5ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:1ディヴェルティメント東京芸術劇場交響曲98番ピアノソナタXVI:7ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:35ロッシーニライヒャドニぜッティ弦楽三重奏曲東京文化会館フルート協奏曲弦楽四重奏曲Op.9弦楽四重奏曲Op.17剃刀弦楽四重奏曲Op.77弦楽四重奏曲Op.103ピアノソナタXVI:31ピアノソナタXVI:26ファンタジアXVII:4アレグリパレストリーナバードモンテヴェルディ美人奏者交響曲70番ピアノ協奏曲XVIII:7アコーディオンスコットランド歌曲ヴェルナーガスマンピアノソナタXVI:24交響曲35番交響曲46番交響曲51番DVD交響曲47番テレジアミサピアノソナタXVI:28アリエッタと12の変奏XVII:3帝国ラ・ロクスラーヌハイドンのセレナードラルゴ五度ラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.1弦楽四重奏曲Op.33騎士交響曲17番ピアノソナタXVI:27シベリウス時の移ろい交響曲42番ベルリンフィルホルン信号弦楽四重奏曲Op.55交響曲87番トランペット協奏曲リュートピアノソナタXVI:10ピアノ五重奏曲チェチーリアミサ東京国際フォーラムラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン雌鶏冗談ナクソスのアリアンナピアノ協奏曲XVIII:9ピアノ協奏曲XVIII:5ヴァイオリンソナタ交響曲52番ピアノ協奏曲XVIII:2ロンドン・トリオドイツ国歌カノンモテットオフェトリウムよみうり大手町ホールパッヘルベルアダージョXVII:9受難交響曲84番パリセットベルク主題と6つの変奏オペラアリアスクエアピアノピアノソナタXVI:41交響曲57番交響曲68番リラ・オルガニザータ協奏曲交響曲50番交響曲89番CD-R偽作トビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師オルガン協奏曲交響曲38番火事リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10交響曲34番交響曲77番温泉フルートソナタドイツ舞曲誕生日校長先生音楽時計曲ピアノソナタXVI:47bisピアノソナタXVI:11ピアノ小品カートリッジ雅楽プロコフィエフサン=サーンス交響曲36番リストオーディオバリトン二重奏曲交響曲66番交響曲91番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47読売日響オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:22変奏曲XVII:7天地創造ミサジャズ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノヴェーベルン府中の森芸術劇場裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャ交響曲56番マリアテレジア2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ新橋演舞場テ・デウムサルヴェ・レジーナカッサシオン室内楽曲ベトナム料理国立新美術館高音質CD交響曲28番交響曲13番交響曲62番交響曲107番交響曲108番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲カンタータ声楽曲戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中ピアノソナタXVI:30カラヤンスウェーリンク書籍交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽ピアノソナタ

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