カンブルラン/読響/エマール<果てしなき音楽の旅>(紀尾井ホール)

3月19日は紀尾井ホールへコンサートに出かけてきました。

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読売日本交響楽団:《読響アンサンブル・シリーズ 特別演奏会》 カンブルラン指揮〈果てなき音楽の旅〉

カンブルランは今月2019年3月で読響の常任指揮者の任期満了。今月は最終月にふさわしく4つのプログラムを振ります。任期中、カンブルランのコンサートは結構色々行きましたので、なんとなく名残り惜しくて、このコンサートのチケットをとった次第。プログラムは得意の現代音楽。しかもピアノにピエール=ロラン・エマールが加わるということで期待大です。

読響のコンサートに通うようになったのは前任のスクロヴァチェフスキのコンサートがあまりに素晴らしかったから。その後任の手腕やいかにということと、当初ハイドンなども取り上げられたのがきっかけです。

2017/04/08 : コンサートレポート : カンブルラン/読響:太鼓連打、巨人(東京芸術劇場)
2017/02/01 : コンサートレポート : カンブルラン/読響:メシアン「彼方の閃光」(サントリーホール)
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2012/12/21 : コンサートレポート : カンブルラン/読響の第九(サントリーホール)
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2010/11/22 : コンサートレポート : カンブルラン/読売日響の朝、昼、晩
2010/07/14 : コンサートレポート : カンブルランのデュティユー
2010/05/02 : ハイドン–交響曲 : カンブルランのハイドン
2010/05/01 : コンサートレポート : カンブルランのハルサイ爆演

カンブルランと読響のコンサートは調べてみると、これまで9回行っていることがわかりました。1人の指揮者で9回は私としてはかなり多い方というか、多分一番実演に接している人ということになります。指揮者として特に好きな人というわけではありませんが、ハイドンを含む古典から現代音楽まで幅広いレパートリーを誇り、ストラヴィンスキーやデュティユー、リーム、メシアンなどは絶品でしたので、実演での現代音楽の面白さを体験したのが通ったきっかけかもしれません。今回のプログラムもバリバリの現代音楽ということで最後を飾るのにふさわしいものです。プログラムは下記の通り。

ヴァレーズ:オクタンドル
メシアン:7つの俳諧(ピアノ:ピエール=ロラン・エマール)
シェルシ:4つの小品
グリゼー:「音響空間」から“パルシエル”

聴いたことのある曲は1曲もなく、初めて聴く曲に興味津々といったところ。

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読響のコンサートで紀尾井ホールは珍しいですが、編成の小さい現代音楽のプログラムということと特別演奏会ということで、定期公演とは別に企画されたもののようなので、ここが選ばれたのでしょう。現代音楽を得意とするカンブルランだけに、約800人収容の紀尾井ホールは満席。しかもお客さんも現代音楽好きそうな顔ぶれ。先日長大なメシアンの歌劇「アッシジの聖フランチェスコ」でも満員にした集客力は読響常任指揮者9年間の実績に裏付けられたものでしょう。

IMG_5008.jpg

未知の現代音楽をあるがままに体験するために、ビールとワインを煽って全神経を鋭敏に研ぎ澄まします。
もちろん、この時ブルース・リーの至言、"Don't think! Feel."という声が脳内に響いたのは言うまでもありません(笑)

この日の席は1回右手桟敷に当たるBR席の中程。ここは適度な距離感とオケ全体が見えてなかなかいい席です。

1曲目のヴァレーズの「オクタンドル」は1923年の作品。「8枚の花弁をもつ花」と言う意味とのこと。コントラバスと木管、金管など8名の奏者によるアンサンブル。静寂の中にオーボエの音色が鋭く響き、その後ファゴット、ピッコロなどの鋭い響きが散りばめられ、トランペット、ホルン、トロンボーンの響きが重なりあう曲。カンブルランの緻密な指示に各パートが見事に応えて精緻な響きが鮮烈に錯乱する快感を味わえました。7分少々の曲。

ステージ上の座席配置を丁寧に修正して、今度はピアノが据え付けられ、続くメシアンの「7つの俳諧」。1962年、ピアニストのイヴォンヌ・ロリオとの新婚旅行で日本を訪ねた時の印象をまとめた曲。副題に「日本の素描」とあります。7曲からなり、構成は下記の通り。

第1曲 導入部
第2曲 奈良公園と石灯籠
第3曲 山中湖〜カデンツァ
第4曲 雅楽
第5曲 宮島と海中の鳥居
第6曲 軽井沢の鳥たち
第7曲 コーダ

解説を見て、日本らしい雰囲気が漂うかと思うとさにあらず。これぞメシアンという摩訶不思議な雰囲気にあふれた曲でした。エマールがピアノ奏者として加わりますが、ソロというよりあくまで1パートという位置付け。シロフォンとマリンバの不思議なリズム。鐘や銅鑼も加わることで千変万化する色彩感溢れる響きに包まれる感じ。音楽から上記の風景が想像できるかというと、全くそんな雰囲気にならないほど音楽と表題が乖離しており、その深遠な距離にアートの本質があるのかと瞑想しながら聴きました。この曲は20分くらい。ここで休憩なんですが、場内は最後のカンブルランということもあってか、現代音楽にしては異様な熱気に包まれ、前半から立ち上がって拍手する人もいました。

休憩後はイタリアの作曲家シェルシの「4つの小品」。これは実に変わった曲でした。録音も実演もこれ以降接することはまずないでしょう。4楽章の曲ですが、1楽章は1音のみから構成され、第1曲はファ、第2曲はシ、第3曲はラ♭、第4曲はラ。基本的に1音を色々な楽器が色々なタイミングと色々な強さで演奏し、上下半音の範囲で微妙にズレた音を表情に加えて構成される曲。前衛的というか実験的というか、かなり無理のある構成。要はメロディーというものを存在させず、それ以外の要素で音楽を作っていくもので、実際に聴いてみると、これは音楽なのかと客席で黙考させられるような経験となり、それなりに面白い曲でした。カンブルランは変わらずオケに緻密に指示して音楽を作っていきますが、音量と音色だけのコントロールでスリリングさを感じさせる秀演。またしても熱気のこもった拍手に包まれました。

最後はフランスの作曲家ジェラール・グリゼーの「音響空間」からパルシェル。コントラバスのかき鳴らす轟音が象徴的に響きわたり、徐々に様々な響きが乗せられて展開していく曲。峻厳な雰囲気と前衛的な響きが交錯し、手に汗握るような緊張感に包まれますが、これまでの3曲よりも狙いははっきりとしていてわかりやすい印象。ところが、終盤、奏者が演奏ではなく楽譜に見せかけた紙をくしゃくしゃにする音を立てたり、色々演出が加わってきます。最後はシンバル奏者にスポットラライトが当たり、まさにジャーンと鳴る寸前で会場が暗転。音は鳴らず、観客の脳内にシンバルが打たれる響きが想像として残るという不思議な終わりかた。現代音楽が追い求めた知的刺激やアイデアの多彩さが印象に残る曲でした。最後のシーンは客席も笑いに包まれハッピーエンド。もちろん粋な演出に客席も拍手喝采。カンブルランは何度もステージに呼び戻され、最後はソロ・カーテンコール。現代音楽好きな観客の温かい拍手に包まれ、カンブルランも満足そうでした。

やはり、カンブルランの現代音楽はいいですね。聴き手と奏者の距離も普通のコンサート以上に近い感じがして、ホールが一体感に包まれる貴重な体験でした。週末はカンブルラン最後の読響でエマールとのベートーヴェンの3番と幻想交響曲など。これも行きます!



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ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

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