作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

タネーエフ四重奏団のOp.2のNo.5(ハイドン)

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もう1枚LPです。

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タネーエフ四重奏団(Taneyev Quartet)の演奏で、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.2のNo.5とモーツァルトの弦楽四重奏曲「不協和音」(KV465)の2曲を収めたLP。アルバムのリリースは1978年と記されております。レーベルは露Мелодия(Melodiya)。

こちらは最近ディスクユニオンで仕入れたもの。当ブログのコアな読者である小鳥遊さんはキリル文字を読みこなしてロシア盤をいろいろ物色されているとのことですが、当方、キリル文字にはめっぽう弱く、メロディア盤でも英語併記のものしか手を出せません。幸いこちらの盤はしっかりと英語がふられており、私にもハイドンの作品とわかり、平常心を保ちながら手に入れた次第(笑)

タネーエフ四重奏団は戦後すぐの1946年、レニングラード音楽院の学生によって設立されたクァルテット。私は初めて聴くクァルテットですが、タネーエフを初めとして、ショスタコーヴィチ、ベートーヴェン、シューベルト、ミャスコフスキーなどの弦楽四重奏曲全集を録音しているということで、メジャーな存在だと思われます。このアルバムの録音当時のメンバーは以下のとおり。

第1ヴァイオリン:ヴラディーミル・オフチャレク(Vladimir Ovcharek)
第2ヴァイオリン:グリゴリー・ルツキー(Grigori Lutzki)
ヴィオラ:ヴィサリオン・ソロヴィヨフ(Wissarion Solowjow)
チェロ:ヨシフ・レヴィンゾン(Josif Lewinson)

設立から1967年まではチェロがベニアミン・モロゾフだったということで、創立メンバーから1人代わった第2世代の録音ということになります。

このアルバムに収められたハイドンの弦楽四重奏曲Op.2のNo.5は、もともと管弦楽のためのディヴェルティメント(Hob.II:22)の弦楽パートが弦楽四重奏として登録されたもの。ハイドンの初期の平明な音楽の魅力に溢れた曲です。この時期のクァルテットは5楽章構成。2つのメヌエットの間に緩徐楽章が挟まる形。

Hob.III:11(II:22) String Quartet Op.2 No.5 [D] (c.1760–62)
針を落とすと、期待通り素晴らしく冴え冴えとした音楽が流れ出します。録音は絶品。やはりクァルテットはLPがいいですね。針で溝をこするからか弦をこする音の実体感はCDよりも生々しいですね。1楽章は軽やか、華麗、推進力十分。音楽がシンプルなだけに、第1ヴァイオリンのオフチャレクの艶やかな音色と一体感溢れるクァルテットの演奏が映えます。
続く最初のメヌエットでもオフチャレクのメロディーがしっかりと浮かび上がり、伴奏とのバランスも完璧。トリオでほのかな陰りを感じさせますが、その微妙な表情の変化が実に自然で美しい。
3楽章のラルゴはオフチャレクがあえて糸を引くようにポルタメント気味にメロディーを置いていきます。高音域の伸びが美しいだけでなく、繊細な表現力を見せつけ、この小品を実に深い音楽に仕立てていきます。鮮明な演奏でこの初期の作品が陰影のくっきりとした味わい深い音楽に仕上げます。
後半のメヌエットは、いつもながらハイドンのアイデアの豊富さを印象付けます。前半のメヌエットを踏まえてはいるのですが、全く違う響きで聴き手を驚かせます。今度はグイグイと強引にメロディーを引っ張り、鮮烈な印象の演奏。そしてトリオではピチカートでコミカルな表情を加えてメヌエット楽章の面白さを際立たせます。
終楽章はこのクァルテットの技術力を見せつけ、音階のキレもフレージングのキレも異次元。そして最後にすっと終えるセンスも見事。これは絶品の演奏。

IMG_3497.jpg

ハイドンの初期のクァルテットの見事な演奏に驚いていたところ、1面の残りはモーツァルトの「不協和音」の1楽章ですが、これまた見事にハイテンションな演奏に釘付けになります。

タネーエフ四重奏団を今更初めて聴いたわけですが、その恐ろしいまでの実力をこのアルバムから察した次第。音楽にみなぎる力と緊張感はちょっと類を見ないものです。もちろんハイドンの評価は[+++++]とします。世の中にはまだまだ掘り起こすべき演奏がありますね。引き続き発掘に努めます。



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6 Comments

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小鳥遊

キリル文字、理解している訳ではなくて、ローマ字変換を何とか出来るかな、という程度で、しかも私が手を出したのはブルガリア語だったのもあり、メロディア盤は大変ですよ(ハイドンの綴り方も、どうも二通りあって、ロシアとブルガリアでは違う傾向にあります)。

タネーエフ・カルテットのハイドンは未聴ですが、私はミャスコフスキーを集中的に聴いた時期があったので、馴染みのあるカルテットです。

ブルガリアのディモフと同様、全集録音が多い団体ですが、CD化に恵まれないので、余計に聴きたくなってしまいます(笑)

Daisy

Daisy

Re: タイトルなし

小鳥遊さん、早速反応ありがとうございます!

やはりメロディア盤は小鳥遊さんにとっても大変だったんですね! 海外のLPなどの魅力に取り憑かれると、英語はもとより、ドイツ語、フランス語、時にはチェコやハンガリーなどの言葉も克服要なんですが、中でも最難関はロシア語でしょう。文字の形から音が想像できないばかりか、それを調べる術が簡単ではないところでハードルがぐっと上がります。ネットの情報ならばコピペで翻訳するという手段がありますが、LPの解説となると、その図形(笑)をどう入力するかから調べなくてはなりません。ということで、小鳥遊さんがキリル文字を勉強されたという情報が独り歩きして、誇大広告となってしまったようです。伏してお詫び申し上げます。

さて、タネーエフ四重奏団ですが、流石小鳥遊さん、ミヤコフスキーを攻めていらっしゃったということで、既におなじみとは恐れ入りました。タネーエフのハイドン、絶品です。是非。

  • 2018/10/31 (Wed) 20:37
  • REPLY

小鳥遊

ミャスコフスキーの交響曲は、ハイドンに出会うより早く、中学生の頃から聴いていたので、タネーエフ・カルテットと言えばミャスコフスキーという印象は強いです(笑)

キリル文字は、GとHの区別がはっきりしないので、どちらもГで転換されるため、ハイドンとガーシュインの頭文字がキリル文字では同じとなるのに初めは戸惑いました。

更に、メロディア盤を見ていると、Τが筆記体表記の場合がままあり、筆記体のΤはΜとの見分けが困難のため混乱します。

タネーエフのハイドン、何度か店頭で見掛けた事はあったのですが、後回しにしてたので、次回はゲットします!







Daisy

Daisy

Re: タイトルなし

小鳥遊さん、中学生からミャスコフスキーを聴いて育ったとのこと、視野の広さは流石ですね。私は全く守備範囲外で、ロシア系の作曲家で馴染みなのはストラヴィンスキーくらいで、チャイコフスキーもショスタコーヴィチも苦手分野です(笑) タネーエフ、ミャスコフスキーに至っては聴いたこともないということで、少し裾野を広げなくてはならないと反省中です。

メロディア盤については、考えてみるとキリル文字というハードルの高さゆえ、掘り出し物の宝庫かもしれませんので、今後は少し注意深く探索していこうかと思います。唯一の取り柄であるハイドンの発掘で遅れをとらぬよう、精進を続けます!

  • 2018/11/01 (Thu) 23:53
  • REPLY

Katsudon

No title

お世話になります。
タネーエフSQがハイドンをレコーディングしていたとは初耳で大変興味を持ちました。
高校生の頃、ビクター国内盤のタネーエフのショスタコの全集を買って、切り詰められた中で4つの楽器が織りなすシニカルな世界に夢中になったことを今でも覚えていますが、その後CDでベートーヴェンの全集も手にして、鋭くもどこか田舎っぽさが残る雰囲気(体臭とでも言うのでしょうか?)に独特のものを感じた記憶があります。
見つけたら手に入れたいと思います。

  • 2018/11/02 (Fri) 11:26
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Daisy

Daisy

Re: No title

Katsudonさん、コメントありがとうございます。

タネーエフ四重奏団、皆さんおなじみだったようですね。皆さんとは逆順ですが、タネーエフのこのハイドンの出来から察するに、ショスタコーヴィチは素晴らしいのでしょうね。4人の奏者の放出するエネルギーと推進力、そして鋭いボウイングがハイドンの小曲でここまで感じられるということは、ショスタコーヴィチやバルトークなどでは素晴らしい演奏となるように思われます。同時代的な聴き方ではありませんが、アルバムを通して遥か昔の演奏を楽しむということは、こうした想像も楽しいものです。

  • 2018/11/02 (Fri) 23:40
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