作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のアルバム収集とレビュー。音楽、旅、温泉、お酒など気ままに綴ります。

【新着】ラサール四重奏団のOp.71のNo.2(ハイドン)

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最近リリースされたヒストリカルなアルバム。

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TOWER RECORDS / amazon / HMV ONLINEicon

ラサール四重奏団(LaSalle Quartet)の演奏で、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.71のNo.2、ブラームスの弦楽四重奏曲3番Op.67、ツェムリンスキーの弦楽四重奏曲3番Op.19の3曲が収められたアルバム。ハイドンの収録は1968年12月14日、ドイツのバーデン=バーデンのハンス・ロズバウド・スタジオでのセッション録音。レーベルは独hänssler CLASSIC。

ラサール四重奏団といえば、現代音楽を得意としていたクァルテット。手元にはシェーンベルクの浄夜などを収めたアルバム、バッハとモーツァルトのプレリュードとフーガなどを収めたアルバムがありますが、ハイドンの演奏は初めて聴きます。念のためさらっておきましょう。

ラサール四重奏団は1946年、ヴァイオリン奏者のヴァルター・レヴィンによって設立されたクァルテット。ラサールという名前は、クァルテットの結成当時にメンバーが住んでいたマンハッタンのアパートメントの面していたラサール通りにちなんだもの。クァルテットに寄贈されたアマティを演奏して精緻なアンサンブルを誇ってきました。古典派はもとより、新ウィーン楽派などの演奏によって知られ、特にDGからリリースされたツェムリンスキーの弦楽四重奏曲全集によって、当時まだ謎の作曲家とみなされていたツェムリンスキーを世に知らしめたことが重要な業績とみなされています。またリゲティの弦楽四重奏曲2番は彼らに献呈され、1969年に彼らによって初演されています。

第1ヴァイオリン:ヴァルター・レヴィン(Walter Levin)
第2ヴァイオリン:ヘンリー・メイヤー(Henry W. Meyer)
ヴィオラ:ピーター・カムニツァー(Peter Kamnitzer)
チェロ:ジャック・キルステイン(Jack Kirstein)

そのラサール四重奏団によるハイドン、しかもOp.71のNo.2という比較的地味な選曲。ラサールが現代音楽で聴かせるカミソリのようなキレ味が味わえるでしょうか。

Hob.III:70 String Quartet Op.71 No.2 [D] (1793)
非常に状態のいい録音。冒頭から緊密なアンサンブル。キリリと引き締まり、ピタリと各パートが重なる快感。期待通りのキレ味にうっとり。鋭利なヴァルター・レヴィンのヴァイオリンに隈取られたワイドレンジな響き。シャープに陰影がついて、階調豊かなモノクロームのオリジナルプリントのようなアーティスティックな世界。現代のモダンさとは少々異なり、少々クラシカルな雰囲気がこれまたいい感じ。くっきりとしたアクセントによってハイドンの時に素朴な印象さえ与える音楽が実にフォーマルな姿に映ります。1楽章は完璧なアンサンブルの魅力に圧倒されます。
続くアダージョはゆったりとした音楽をスリリングな緊張感で聴かせるラサールならではの演奏。冷静に品良くデフォルメされたメロディーに酔いしれます。冷徹さも感じさせる引き締まった響きなのに、妙に暖かさを感じる完成度。
メヌエットはまさにカミソリ。ヴァイオリンの鋭い響きが自在に楔を打ちながら、チェロの厚みのある響きに支えられたアンサンブルが呼応。そしてフィナーレはメヌエットの余韻を残しながらも、冷静にリセットされて、妙に乾いた響きのアンサンブルで始まりますが、演奏が進むにつれて、しっとりとしなやかさを加えながらクッキリとメロディーが発展して終わります。

弦楽四重奏とは演奏者によってかくも個性的に響くものでしょうか。ラサール四重奏団のまさにカミソリのようなキレ味のアンサンブルによるハイドン。この孤高の響きは真似のできるものではありませんね。同じくクッキリとした表情で完成度の高い演奏を誇るアルバン・ベルク四重奏団のハイドンにはどこか人工的な印象が付きまとい、あまり好きにはなれなかったんですが、このラサールによるハイドンは、人工的などという枠を突き抜けるアーティスティックさがあり、逆に圧倒的な凄みを感じます。この微妙なのに決定的な違いこそ音楽の面白さの源でしょう。この演奏、ハイドンの弦楽四重奏曲の極北の姿と言っていいでしょう。評価は[+++++]です。一聴あれ。

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