ブログをSSL対応に変更しました

最近自分のブログをSafariで見ると、URL欄には「安全ではありません」と表示されるではありませんか。別に不謹慎な情報を書いているわけでもなく、ウィルスを拡散させているわけでもなく、政府を転覆させるような悪事を企んでいるわけでもないことは皆さんご存知の通り(笑) もちろん、この表示はSSL対応していないと表示されるという、近年のネットのセキュリティ強化の流れを踏まえたものです。

個人のたわいもないブログということで、しばらく様子見していたわけですが、「安全ではありません」とレッテルを貼られるに至り、重い腰をあげて、SSL対応に踏み切り、それに伴ってURLも変更になりましたのでお知らせいたします。

(旧URL)
http://haydnrecarchive.blog130.fc2.com

(新URL)
https://haydnrecarchive.blog.fc2.com

"http"が"https"に変わっただけでなく、サーバー番号130もとれました。このサーバー番号、ブログ登録時に自動採番されるのですが、130を無理やり読むと「イサオ」で、奇遇にも父の名前と一緒で愛着があったのですが、安全と引き換えでは仕方ありませんね。

旧URLにアクセスしても転送されるようですので、閲覧には差し障りないかと思いますが、念のためお知らせまで。

引き続きよろしくお願いいたします。



にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

【新着】井上裕子のフォルテピアノによるXVI:46(ハイドン)

最近リリースされたアルバム。絶品です。

YukoInoue46.jpg
TOWER RECORDS / amazon / HMV&BOOKS online

井上裕子(Yuko Inoue)のフォルテピアノによる"The Art of Emotions"と題されたアルバム。この中にハイドンのソナタが含まれています。収録曲は下記の通り。収録は2018年3月16日から18日にかけて、オランダのエンスヘーデ(Enschede)にある楽器修復家のエドウィン・バンク(Edwin Buenk)のアトリエでのセッション録音。レーベルはノルウェーのSIMAX classics。

C.P.E.バッハの「識者と愛好家のための曲集 第5巻より幻想曲ハ長調とロンド(Wq.59)
C.P.E.バッハ:ソナタ ト短調(Wq.65/17)
ハイドン:ソナタ 変イ長調(Hob.XVI.46)
モーツァルト:幻想曲(前奏曲)とフーガ(K.383a(394))
ベートーヴェン:「プロメテウスの創造物」のテーマによる15の変奏曲とフーガ(Op.35)

このアルバムは奏者の井上裕子さんのデビューアルバムとのこと。いつものようにハイドン関係の新譜を物色している中で見かけて注文していたもの。いつものように、未聴の奏者のアルバムということで虚心坦懐に聴いたところ、爽やかな容姿に似合わず、これはなかなか骨のある演奏ということで取り上げた次第。

アルバムは輸入盤ですが、珍しくライナーノーツには日本語も付いていて、奏者自身による読み応えのある詳細な解説がつけられている本格的なもの。アルバムタイトルである"The Art of Emotions"とは奏者が心酔するC.P.E.バッハの下記の言葉に基づいて付けられたもの。

「音楽家は自分自身が感動するのでなければ、聴衆を感動させることはできない。したがって音楽家は、聴衆の心に呼び起こそうとするすべてのアフェクトの中に自分浸ることがどうしても必要である。音楽家が自分の感情を聴衆に示し、そして彼らをそれに共感させるのである。悄然として悲しい部分では、自分自身悄然とし、悲しまなければならない。聴衆が、それを見、それを聞いて曲の内容を理解するのである」 (C.P.E.バッハ) ※ライナーノーツから引用


ということで"The Art of Emotions"は「感情表現の創造」とでも訳すのでしょうか。そして、アルバムの収録曲はC.P.E.バッハを敬愛したハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの作品から奏者が選んだ曲を配したものということです。

冒頭に置かれたC.P.E.バッハの曲は、まさに千変万化する感情表現を極めたような曲。いつも整然として知的でもあり、ユーモラスでもあり、起承転結が明快なハイドンの音楽を聴いているせいか、フレーズごとに型破りな音楽がどんどん展開されるのが非常に新鮮。演奏もC.P.E.バッハを得意としているだけに、全く迷いなくこのめくるめく展開を手中に収め、作曲者の感情と一体化するような見事なもの。C.P.E.バッハを聴いただけで、奏者の表現の幅の広さを確信した次第。

Hob.XVI:46 Piano Sonata No.31 [A flat] (1767/70)
この曲はハイドンのソナタでも奏者が度々演奏してきた曲とのこと。ハイドンの初期のソナタの中でも美しい曲想で知られ、録音も多い人気曲なのは皆さんご存知の通り。C.P.E.バッハで聴かせた幅広い表現は、ハイドンでは少し抑え気味にしてしなやかな曲の流れの良さを活かしていきます。それでも音階の一つ一つが粒立ち良く刻まれ、起伏が大きく、陰影も深くなるのは持ち前の雄弁な表現力によるところでしょう。使用している楽器はこのアルバム共通ですが、この曲の変イ長調(1楽章)、変ニ長調(2楽章)という特殊な調に伴い、調律もまろやかな響きになるように修正しているとのことで、華やかながらまとまりのよい響きに繋がっていると思われます。流石なのは、フレーズごとにかなり大胆な表現を織り交ぜているのに、音楽の流れに一貫性があり、ハイドンらしい機知と展開の妙を存分に楽しめること。
続くアダージョは奏者が「夢のような楽章」と言うように、まさに夢見るような境地。自在なタッチから紡ぎ出される音楽のなんと心地よいこと。コンディションの良い楽器だからこその弱音の美しさが際立ち、静寂の中に繊細な音楽が流れる快感。至福。
終楽章はC.P.E.バッハでも聴かれたキレキレのタッチで、ハイドンのフィナーレを壮麗に盛り上げます。快速テンポでもテクニックは万全。テクニックの誇示のような印象はなく、ここでも音楽がいきいきと弾み、クライマックスでは楽器の響きが濁る寸前まで鳴らしきる見事な終結。いやいや見事な演奏でした。

この後のモーツァルトとベートーヴェンももちろん出色の出来。特にベートーヴェンはこの奏者の表現力が見事にマッチして素晴らしいですね。

井上裕子によるハイドンのXVI:46ですが、これは日本人による演奏という但し書きをつけなくても、この曲の古楽器による演奏のベストと言っていいでしょう。評価はもちろん[+++++]とします。表現の方向は少々異なりますが、フォルテピアノの表現力はアンドレアス・シュタイアーと遜色ありません。最近聴いたベズイデンホウトや、ボビー・ミッチェルなどのフォルテピアノ奏者に続き、フォルテピアノでは最先端を行く人でしょう。デビュー盤でこの完成度ですので、この先が楽しみな人です。是非ハイドンの曲を録音してほしいものです。



最後に奏者のウェブサイトも紹介しておきましょう。日本語対応ですので経歴などは下記のウェブサイトをご覧ください。

Yuko Inoue | cembalist & fortepianist

このサイト、フッターに"Website crafted by Yuko Inoue"と書かれているので、おそらく本人が作っているのでしょう。経歴やコンサート活動の他にもこのデビュー盤を録音したエドウィン・バンク氏のアトリエでの録音風景の写真や、使われている同氏所有のフォルテピアノの写真などがアップされており、なかなか興味深いものです。



にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ピアノソナタXVI:46

イタリア四重奏団の皇帝、日の出(ハイドン)

今更ですが、名盤です。

QuartettoItarianoPH.jpg

イタリア四重奏団(Quartetto Italiano)の演奏による、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.76のNo.3「皇帝」、No.4「日の出」の2曲を収めたLP。収録情報は記載されていませんが、Pマークが1976年となっています。レーベルは蘭PHILIPS。

最近、母親の遺品整理などの片付け物を集中して行っており、朝から晩まで体を動かしています。夕食後のわずかな時間に音楽を聴きながらオークションを物色したりしていますが、このLP、音源はCDで持っているかと思ってスルーしようとしていたところ、うとうとしているうちに指が滑って入札していました(笑)。まあ、値ごろだったので良しとするということで手に入れた次第。届いて、いつものように所有盤リストに登録してみると、確かに皇帝は手元にCDがあるものの、日の出は未入手だったということがわかり、結果オーライ。確認のためいつものように必殺美顔ブラシとVPIのクリーナーで丁寧にクリーニングして針を下ろしてみてビックリ! いやいや凄い音がするではありませんか。全盛期のPHILIPSの面目躍如、クァルテットのエネルギーが吹き出してくる見事な録音です。ジャケット裏面は黄ばんですすけていましたが、盤は非常に良いコンディション。これは巡り合わせが良かったですね。

イタリア四重奏団の演奏は過去に2度取り上げていますが、いずれもPHILIPS盤ではありません。

2013/12/09 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : イタリア四重奏団の鳥(ハイドン)
2011/03/17 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : イタリア四重奏団の「皇帝」、Op.33 No.2

2011年に取り上げた皇帝は仏Ades盤で1965年録音ということで、今日取り上げるアルバムの演奏より前のもの。このほか記事にはしていませんが、1969年のライヴもあります。メンバーは黄金期のこの4人。

第1ヴァイオリン:パオロ・ボルチャーニ(Paolo Borciani)
第2ヴァイオリン:エリサ・ペグレッフィ(Elisa Pegreffi)
ヴィオラ:ピエロ・ファルッリ(Piero Farulli)
チェロ:フランコ・ロッシ(Franco Rossi)

Hob.III:77 String Quartet Op.76 No.3 "Kaiserquartetett" 「皇帝」 [C] (1797)
歯切れの良いクァルテットの響きが眼前に広がります。実体感があり、しかも程よく残響が乗って理想的な響き。何より力強さとエネルギー感が素晴らしい演奏。まさに精気みなぎるとはこのこと。聴き慣れたこの曲ががっしりと鳴り、4人がせめぎ合う迫真の演奏が音溝に刻まれています。同音源のCDと聴き比べてみましたが、鮮度と解像度はやはりLPに分があります。流麗な弓捌きはイタリアのクァルテットならでは。独墺系のハイドンの音楽なのに基本的に陽性な明るさに満ちて輝かしさがが感じられます。1楽章はまさに見事すぎるボウイングの魅力で圧倒されます。
そしてこの曲の聴かせどころの2楽章。やはり沁みるような流麗さに包まれる音楽。変奏に入ると各パートの音色の美しさが際立ちます。これぞ名演奏という絶品の演奏に耳をそばだてます。クライマックスは変奏の後半。グッと音量を落として精妙さを極める部分。あまりの精妙さに鳥肌がたたんばかり。糸を引くような精緻なボウイング。
メヌエットも王道を極めたような堂々とした演奏。力みも外連もなく、ただただオーソドックスに攻め切る酔眼。そこから香り立つ弦のアンサンブルの気品。燻らしたような深い音色がもたらす深い陰影にうっとり。
終楽章は精緻なアンサンブルとボルチャーニの華麗な弓捌きが際立ちます。はっきりと区切りをつけるフレージングによって、まるでミケランジェロの彫刻のようなデフォルメされた深い陰影が生じ、音楽に異常な立体感が生まれ、聴き手を圧倒するような迫力を帯びる奇跡的な演奏。CDでも感じていた迫力はLPで本領発揮です。

IMG_5213.jpg

Hob.III:78 String Quartet Op.76 No.4 "Sonnenaufgang" 「日の出」 [B flat] (1797)
LPをひっくり返して「日の出」です。こちらもいきなりボルチャーニの見事なヴァイオリンに釘付け。次々にパートが重なって畳み掛けるような迫力。やはり素晴らしい迫力に圧倒されます。やはりアンサンブルの見事さに惹きつけられます。皇帝同様、まったく隙のない見事な演出に唸ります。全編に漲る素晴らしい説得力。
2楽章のアダージョは、皇帝以上に緊張感が張り詰めた演奏。やはりフレージングはくっきりとメリハリをつけますが、陰影はよりシャープで緊張感を強調するような演奏。この緊張感こそこの曲の聴かせどころ。
メヌエットはこの曲の本質をえぐるように弾みます。この入りの精妙な躍動感は何でしょうか。単なるフレーズなのに他の演奏とは一線を画すアーティスティックな演出。音符から音楽を掘り出して、ディティールが最も際立つようにライトを当て、素材の質感を完璧に表現した彫刻のよう。
終楽章は皇帝とはうって変わって流すような力の抜けたアンサンブル。聴かせどころは2楽章と3楽章にあり、その火照りを徐々に鎮めるような演奏ということでしょうか。最後のアクロバティックな展開も余裕たっぷり。これが粋というものでしょう。

今までこのアルバムをスルーしていたのは痛恨の極み。このLPにはイタリア四重奏団の真髄が詰まっていました。精妙さとリアリティがこれほどまでとは思いませんでした。LPを聴いてはじめてCD化で失われてしまったものがわかりました。ジャケットに写るフォーマルないでたちの4人の姿は、まさにこの曲の代表盤になることを確信して撮影に臨んだような迫力を感じます。まさに至宝と呼べるアルバムでしょう。両曲とも評価は[+++++]といたします。

(追伸)
新たにTHORENSのTD520とSME3012Rを導入。これは別記事で! ターンテーブルの色は違いますが、これでだまてらさん宅に少々近づきました(笑)



にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 皇帝 日の出

【新着】マクスウェル四重奏団のOp.71(ハイドン)

久々に新着アルバムを取り上げます。

MaxwellQ.jpg
TOWER RECORDS / amazon

マクスウェル四重奏団(Maxwell Quartet)によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.71のNo.1からNo.3と各曲後にスコットランドの伝統音楽が3曲配されています。収録は2018年4月11日から14日にかけて、ロンドンの南にあるストーク(stoke)にあるユーディ・メニューヒン音楽学校のメニューヒンホールでのセッション録音。レーベルは英LINN。

マクスウェル四重奏団とは聞いたことのない団体ですが、それもそのはず、新設団体のデビュー盤ということです。王立スコットランド音楽院を卒業した4人によって2010年に設立され、翌年には同音楽院のレジデントアーティストになります。2014年にメンバーが一部入れ替わり、2017年にはトロンヘイム国際室内楽コンクールで1等と観客賞を受賞。以後イギリスを中心に欧米諸国で活躍しているとのこと。このアルバム録音時のメンバーは下記の通り。

第1ヴァイオリン:コリン・スコビー(Colin Scobie)
第2ヴァイオリン:ジョージ・スミス(George Smith)
ヴィオラ:エリオット・パークス(Elliott Peaks)
チェロ:ダンカン・ストラチャン(Duncan Strachan)

ジャケットに写る4人の姿は印象的。森の中にたたずむ4人がじっとこちらを見据えて黙って演奏を聴けとでも言っているよう。流石にLINNレーベルからデビュー盤がリリースされるだけあって、演奏は実にフレッシュかつレベルの高いもの。Op.71が新鮮に感じる見事なものです。

Hob.III:69 String Quartet Op.71 No.1 [B] (1793)
流石にLINN。澄み渡る空気感。スピーカーのやや奥にクァルテットが鮮明に定位するシャープな録音。まるで森の中を吹き抜けるそよ風のように1楽章が響きます。リズムの軽やかさは尋常ではありません。フレッシュという言葉がピタリとくる演奏。デビュー盤でこの鮮度勝負のようにフレッシュな音楽を繰り出してくるあたり、相当な実力とみました。展開部に入ると小気味よく畳み掛けるようなスリリングさが心地良いですね。
アダージョに入ってもフレッシュな響きは変わらず、訥々とメロディーを語っていきます。第1ヴァイオリンを中心に各パートが非常にデリケートな弓使いでアンサンブルも精緻。響きをキッチリと合わせるアルバン・ベルクのような精緻さではなく、それぞれのしなやかさが精緻に重なっている感じ。
メヌエットはさっと雰囲気を変え、軽やかに起伏を超えていく快感に満ちたもの。フレーズごとの表情の変化の面白さは類稀なもの。
そして、その面白さはフィナーレでも健在。ハイドンの音楽の面白さの真髄を突くもの。華やかにメロディーが舞い、アンサンブルの緊密な軽やかさで聴かせきります。これは素晴らしい。

曲後に箸休め的にマクスウェル四重奏団編曲の編曲によるスコットランドの曲が置かれます。
キャプテン・サイモン・フレイザー(Captaio Simon Fraser:1773-1852)の「美しきスコットランドの北(The Beauty of the North)」、ニール・ガウ(Niel Gow:1727-1807)の「ミス・ダンブリック(Miss Dumbreck)」を合わせて6分ほどの曲。前者は不思議と郷愁を感じさせる独特のメロディー。後者はケルト民謡ような曲。ハイドンの曲にこれらを挟んでくるのは彼らが出身地であるスコットランドにオリジンがあるとのメッセージなのでしょう。

Hob.III:70 String Quartet Op.71 No.2 [D] (1793)
1曲めでマクスウェル四重奏団の音楽の素晴らしさがわかりましたので、安心してNo.2を聴けます。冒頭から第1ヴァイオリンのコリン・スコビーの軽やかなボウイングが実に心地いいですね。リズムのキレとフレッシュさは変わらず、そしてアンサンブルの緊密さも同様。各パートが自在にさえずりながら音楽が流れていく快感。
続くアダージョ・カンタービレではカンタービレだけあって、メロディーを朗々と弾いて、ハイドンの書いたメロディーの美しさを際立たせます。フレージングが非常にデリケートなのでメロディーの美しさが最大限に表現されています。メヌエットは軽やかに弾んだのはフィナーレの落ち着いた入りを引き立たせるため。変化に富んだフィナーレを正攻法で攻めますが、表現に余裕があるため堅苦しくなることはなく、4楽章の構成をしっかりと見切っての解釈でしょう。終結部の鮮やかな音階も余裕たっぷり。

この曲間はジェームズ・スコット・スキナー(James Scott Skinner:1843-1927)の「アレンヴェール墓地の薔薇の蕾(The Rosebud of Allenvale)」とジョージ・スミス(メンバー)の「ガーズウェル農場での永遠の誓い(Guardswell and Truly)」、ジェームズ・スコット・スキナーの「ハリケーン(The Hurricane)」。無印良品のBGM的癒し系音楽ですね。

Hob.III:71 String Quartet Op.71 No.3 [E flat] (1793)
Op.71の中では最も躍動的な1楽章。まさにさえずるように自在な第1ヴァイオリンの存在によって、実に軽やかに響きます。これほど軽やかなこの曲は聴いたことがありません。一貫して演奏スタイルは保ちますが、一貫して自在なため、単調さの対極にある変化に富んだ音楽が一貫して流れます。2楽章はメロディーがゆっくりと展開していく面白さをじっくり料理する感じ。そして続くメヌエットは表現を抑えて、繰り返されるメロディーによるあえてコミカルな余韻を引き立てるよう。そしてフィナーレも表現が難しい曲ですが、繊細な感性によって表現される穏やかさを軸にして入りますが、中盤以降の音階の展開に表現を引き継いで曲の個性を印象付けます。最後は鮮やかな弓捌きを聴かせて終了。なかなか巧みな表現。

最後はマクレガー夫人(Lady MacGregor)のGriogal Cridhe 'Gregor's Lament' 「最愛のグレガー(グレガーの嘆き)(Griogal Cridhe 'Gregor's Lament')」 。最後の箸休めはスコットランドの荒涼とした景色が目に浮かぶような哀愁に満ちたメロディー。ゆっくりと呼吸するように流れ、これも感動的。ハイランドモルトを飲みたくなってしまいますね。

マクスウェル四重奏団によるハイドンのOp.71ですが、これはOp.71のベスト盤と断じます。グリラーも良いのですが、このマクスウェル四重奏団の演奏は、この曲集の爽やかな魅力にスポットライトを当てた名演奏。録音も完璧で間に置かれたスコットランドの曲も、どれも素晴らしく聴きごたえ十分。これは次なるハイドンの録音も期待してしまいますね。評価は全曲[+++++]といたします。室内楽、弦楽四重奏曲好きな皆さん、必聴です!

(追伸)
若手の演奏がお好きなSkunjpさんも是非! 道場破り返しではありません(笑)



にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 弦楽四重奏曲Op.71

ローター・ツァグロゼク/ベルリン・コンツェルトハウス管の88番(ハイドン)

先日読響を振ったコンサートでその真価に触れた、ローター・ツァグロゼク。コンサート会場で先行発売されていたCDを手に入れたものの、色々忙しくそのままになっておりましたが、当ブログによくコメントをいただくだまてらさんから記事にせよとの指令をいただきましたので、記事を起こすことに相成りました(笑)

だまてらさん、遅くなりました!

Zagrosek88.jpg
TOWER RECORDS / amazon

ローター・ツァグロゼク(Lother Zagrosek)指揮のベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団(Konzerthausorchester Berlin)の演奏で、ブルックナーの交響曲9番とハイドンの交響曲88番の2曲を収めたアルバム。ハイドンの収録は2007年5月5日、6日ベルリンのコンツェルトハウスでのライヴ。レーベルはAltus。

冒頭に触れた読響を振ったコンサートの記事はこちら。

2019/02/23 : コンサートレポート : 爆演! ローター・ツァグロゼク/読響のリーム、ブルックナー(サントリーホール)

このコンサートはリームもブルックナーも素晴らしかったんですが、最も素晴らしかったのはツァグロゼクの指揮。ブルックナーは完全に暗譜でオケを緻密に先導し、指揮者の意図がオケの隅々にまで行き渡る見事なコントロール。クライバーの煽りとも、マゼールの魔法のタクトのような緻密さとも異なりますが、そのコントロール能力は両者以上とみました。まさに自身の体から湧き出る音楽がオケに乗り移ったような見事な指揮ぶりに圧倒され、そして、ブルックナーの7番も引き締まった実に見事な演奏でした。

そのツァグロゼクの来日に合わせてリリースされた2枚のアルバムのうちの1枚にハイドンの88番が含まれるということで、普段コンサート会場で売っているCDを買うことはありませんし、サイン会に並ぶ風習もないながら、これはちょっと気になるということで手に入れたもの。

ブルックナーの9番にハイドンの88番ということで、収録日の異なる2曲を合わせてありますが、通例ハイドンが先と思いきや、1曲目はブルックナー。これは予想通り、ツァグロゼクの面目躍如、緊張感みなぎる素晴らしいライヴ。精緻なコントロールで淀みなく流れ、深々とした弦の響きの美しさに圧倒される見事なものでした。一般の方はこちらがメインでしょう。

Hob.I:88 Symphony No.88 "Letter V" 「V字」 [G] (1787?)
ブルックナーの荘厳な終結のジワリとした拍手の後に、ハイドンの端正な音楽が新鮮に響きます。メロディーを軽やかつクッキリと浮かび上がらせる手腕は見事。ハイドンでもツァグロゼクの類まれなコントロールが活きています。キリリと端正ながら躍動感もあり、まさに王道を行く感じ。
一転して2楽章のラルゴは、癒しに満ちたコミカルさというこの曲の雰囲気を非常にうまく表現しています。一般的なしなやかな演奏とは異なり、ざっくりとした肌触りがあり、そのざっくりさが朴訥さを感じさせるところがユニーク。表現が適度な範囲に収まっているところが古典の範疇。
メヌエットは流石に手堅くまとめます。オケが気持ちよく吹き上がり、ここでも適度な表現が心地良いですね。メヌエットで攻めてくる演奏も多いですが、ここは攻めどころではないと見切っているよう。
もちろん、88番の攻めどころはフィナーレ。コミカルなメロディーがフレーズごとに微妙に表現を変えながら展開していく面白さは手に汗握るもの。迫力とは無関係な音楽を聴く楽しみを味あわせた後、オケが牙を剥きます。鮮やかに吹き上がるオケはツァグロゼクが緻密にコントロールしているのでしょう。緩急硬軟自在の見事な演奏。力みなく整然と展開する音楽はハイドンの音楽の本質をズバリと突くもの。いやいや素晴らしい! 会場からもブラヴォーが飛び交う見事な演奏でした。

88盤にはライナーやセルのようにオケをグイグイ鳴らしきる名演もありますが、このツァグロゼクのように八分の力でこなす方が粋かもしれませんね。コントロールを隅々にまで行き渡らせながら、ハイドンの交響曲の面白さをさらりと聴かせる、まさに円熟の技とはこの演奏のことでしょう。ブルックナーではコントロールの向こうに神々しい深い響きを聴かせたかと思うと、ハイドンでは軽やかに粋なところを聴かせる見事な描き分け。このアルバムからはツァグロゼクの芸の幅広さも伝わりました。ハイドンの評価は[+++++] とします。



にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 交響曲88番 ブルックナー

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

最新記事
カテゴリ
ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものはリスト冒頭に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

登録曲数:1,365
登録演奏数:11,529
(2019年3月31日)
タグリスト
クリックするとそのタグに関する記事が表示されます。特定の曲に関する記事の表示ができます。

ピアノソナタXVI:46日の出皇帝弦楽四重奏曲Op.71ブルックナー交響曲88番ベートーヴェンベルリオーズバッハウェーベルンナッセンベンジャミングリゼーメシアンヴァレーズシェルシOp.20弦楽四重奏曲モーツァルト交響曲9番交響曲67番交響曲65番弦楽四重奏曲Op.76交響曲39番交響曲61番狩り交響曲73番リームピアノソナタXVI:6アンダンテと変奏曲XVII:6ピアノソナタXVI:48ピアノソナタXVI:20四季交響曲全集ラヴェルリムスキー・コルサコフ弦楽四重奏曲Op.64ピアノソナタXVI:21ピアノソナタXVI:45ピアノソナタXVI:44ピアノ三重奏曲第九オックスフォードヒストリカル太鼓連打ボッケリーニ交響曲99番時計シューベルトロンドン天地創造交響曲5番チャイコフスキーストラヴィンスキーピアノソナタXVI:52チェロ協奏曲ピアノ協奏曲XVIII:11ライヴ弦楽四重奏曲Op.2序曲軍隊ヴィヴァルディオペラ序曲アリア集パイジェッロピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6すみだトリフォニーホールピアノソナタXVI:34ピアノソナタXVI:49ブーレーズサントリーホール弦楽四重奏曲Op.74チマローザ無人島変わらぬまこと哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェアルミーダ騎士オルランド英語カンツォネッタ集ピアノ協奏曲XVIII:3ピアノ協奏曲XVIII:1ピアノ協奏曲XVIII:4弦楽四重奏曲Op.20交響曲3番古楽器交響曲79番アレルヤラメンタチオーネチェロ協奏曲1番驚愕交響曲27番交響曲19番交響曲58番ショスタコーヴィチ紀尾井ホールドビュッシーミューザ川崎LPオーボエ協奏曲協奏交響曲ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタピアノソナタXVI:32ピアノソナタXVI:40ピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:38ピアノソナタXVI:29スタバト・マーテルピアノソナタXVI:37ピアノソナタXVI:39マーラー十字架上のキリストの最後の七つの言葉交響曲97番告別交響曲90番奇跡交響曲18番ひばりフルート三重奏曲悲しみ交響曲102番交響曲86番ヴァイオリン協奏曲哲学者小オルガンミサニコライミサミサブレヴィス交響曲95番交響曲93番交響曲78番ピアノソナタXVI:23王妃SACDライヴ録音武満徹交響曲81番交響曲80番交響曲21番マリア・テレジア豚の去勢にゃ8人がかりクラヴィコードBlu-ray東京オペラシティ交響曲10番交響曲11番交響曲12番交響曲4番交響曲2番交響曲15番交響曲37番交響曲1番弦楽四重奏曲Op.54ピアノソナタXVI:2ピアノソナタXVI:8ピアノソナタXVI:12ピアノソナタXVI:14ピアノソナタXVI:25ピアノソナタXVI:42ピアノソナタXVI:5ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:1ピアノソナタXVI:3ディヴェルティメントリヒャルト・シュトラウス東京芸術劇場交響曲98番ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:7ピアノソナタXVI:35ロッシーニドニぜッティライヒャ弦楽三重奏曲シェーンベルク東京文化会館ホルン協奏曲フルート協奏曲弦楽四重奏曲Op.9弦楽四重奏曲Op.17剃刀弦楽四重奏曲Op.103弦楽四重奏曲Op.77ピアノソナタXVI:26ファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:31パレストリーナモンテヴェルディアレグリバードタリス美人奏者迂闊者交響曲70番ピアノ協奏曲XVIII:7アコーディオンバリトン三重奏曲スコットランド歌曲ガスマンヴェルナーピアノソナタXVI:24交響曲51番交響曲35番交響曲46番DVD交響曲47番テレジアミサピアノソナタXVI:28アリエッタと12の変奏XVII:3ラ・ロクスラーヌ帝国ハイドンのセレナードピアノソナタXVI:51五度ラルゴラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.33弦楽四重奏曲Op.1騎士交響曲17番ピアノソナタXVI:27シベリウス時の移ろい交響曲42番ベルリンフィルホルン信号弦楽四重奏曲Op.55交響曲87番トランペット協奏曲ピアノソナタXVI:10リュートピアノ五重奏曲チェチーリアミサラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン東京国際フォーラム雌鶏冗談ナクソスのアリアンナピアノ協奏曲XVIII:5ピアノ協奏曲XVIII:9ヴァイオリンソナタ交響曲52番ピアノ協奏曲XVIII:2ロンドン・トリオカノンモテットオフェトリウムドイツ国歌弦楽四重奏曲Op.50よみうり大手町ホールパッヘルベルアダージョXVII:9受難パリセット交響曲84番ベルク主題と6つの変奏オペラアリアピアノソナタXVI:41スクエアピアノ交響曲57番交響曲68番リラ・オルガニザータ協奏曲交響曲50番交響曲89番CD-R偽作トビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師オルガン協奏曲火事交響曲38番リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10交響曲34番交響曲77番温泉フルートソナタドイツ舞曲誕生日校長先生ピアノソナタXVI:11ピアノソナタXVI:47bisピアノ小品音楽時計曲カートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストオーディオバリトン二重奏曲交響曲75番交響曲66番交響曲91番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47読売日響オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:22変奏曲XVII:7天地創造ミサジャズネルソンミサ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノヴェーベルン府中の森芸術劇場裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャマリアテレジア交響曲56番2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ新橋演舞場テ・デウムサルヴェ・レジーナカッサシオン室内楽曲ベトナム料理国立新美術館高音質CD交響曲28番交響曲13番交響曲108番交響曲107番交響曲62番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲スカルラッティカンタータ声楽曲戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲54番交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中ピアノソナタXVI:30カラヤンスウェーリンク書籍交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽ピアノソナタ

月別(表示数指定)
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カウンター
カレンダー
03 | 2019/04 | 05
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -
ブログ内検索
Translation(自動翻訳)
アクセスランキング(FC2)
[ジャンルランキング]
音楽
66位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
クラシック
6位
アクセスランキングを見る>>
ブログランキング等
当Blogへお越しの際は、下のバナーをクリックの上お仲間のBlogも是非お楽しみください。
クラシック音楽鑑賞の情報満載。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

クラシックの膨大なブログランキング。更新もクイック。
人気ブログランキングへ

大家さんFC2のクラシックブログランキング。

おすすめ(音楽)
当ブログが発掘した超名演盤
ViventeR.jpg
衝撃の爆演(記事1 記事2

PetersenQ.jpg
Op.1の超名演(記事

Destrube.jpg
美音の饗宴(記事

書籍もCDも送料1点から無料。配送クイック


クラシックの独自企画・復刻盤は要注目


クラシックのアルバム・日本語解説が一番充実
HMVジャパン
HMV & BOOKS ONLINEでハイドンのアルバムを検索icon
HMV & BOOKS ONLINEでハイドン関係書籍・楽譜を検索 icon

おすすめ(音楽以外)





twitter
ブログの更新情報などをつぶやいています。
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ