フリードリヒ・グルダのピアノ協奏曲1962年ライヴ(ハイドン)
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フリードリヒ・グルダ(Friedrich Gulda)のピアノ、ハンス・ミュラー=クライ(Hans Müller-Kray)指揮のシュトゥットガルト放送交響楽団(Radio-Sinfonieorchester Stuttgart)の演奏で、ハイドンのピアノ協奏曲(Hob.XVIII:11)他を収めた3枚組のアルバム。ハイドンの収録は1962年1月10日、シュトゥットガルトのリーダー・ハレ(Liederhalle)でのライヴ。レーベルはSWR CLASSIC。
グルダのハイドンは、同じくSWR CLASSICから以前リリースされた1959年のシュベツィンゲン音楽祭ライヴを取り上げています。
2010/07/21 : ハイドン–ピアノソナタ : フリードリヒ・グルダのシュベツィンゲン音楽祭ライヴ(ハイドン)
この記事に書いたように、グルダは元々アバドやアーノンクールとのモーツァルトの惚れ惚れするようなキラめくタッチが絶品。そのグルダのハイドンの新たなライヴがリリースされるということで注文を入れていたもの。今日取り上げるアルバムはシュベツィンゲン音楽祭のライヴの3年後の1962年、私の生まれた年のライヴ。アルバムタイトルは「フリードリヒ・グルダ ピアノ協奏曲集」ということで、収録されている曲と収録年などは以下のとおり。
(CD1)
モーツァルト:ピアノ協奏曲24番 ヨーゼフ・カイルベルト指揮シュトゥットガルト放送交響楽団(1959年7月1日)
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲4番 ハンス・ミュラー=クライ指揮シュトゥットガルト放送交響楽団(1960年2月18日)
(CD2)
ハイドン:ピアノ協奏曲XVIII:11
リヒャルト・シュトラウス:ブルレスケ
ドビュッシー:前奏曲集第2巻より花火(アンコール)
ハンス・ミュラー=クライ指揮シュトゥットガルト放送交響楽団(1962年1月10日)
(CD3)
モーツァルト:ピアノ協奏曲第14番(1962年1月16日)
モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番(1962年1月15日)
ハンス・ロスバウト指揮南西ドイツ放送交響楽団バーデンバーデン
グルダのピアノが好きな方には、30代の若きグルダの演奏を存分に堪能できる夢のような収録曲の数々。CD1と2は初出、CD3のみセッション録音とのこと。録音はモノラルながら鮮度は十分で、モノラルならではの芯のしっかりした録音です。
Hob.XVIII:11 Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [D] (1784)
軽やかな序奏に続いてピアノが入りますが、なぜかリズムが絶妙に踊るグルダのピアノ。予想通り華やかな芳香を放ち、艶やかな高音が響き渡ります。これぞグルダのタッチ! ミュラー=クライの振るオケもグルダの見事なピアノに負けず、キレ味抜群です。録音はモノラルのハンディを感じさせるどころか、モノラルの最上級のカッチリとした見事な響き。揺るぎない音像、ブレない低音、そして全奏でもまったく歪まない素晴らしい録音。
この素晴らしい録音、2楽章に入るとグルダのピアノが眼前で弾いているような超絶的なリアリティ。癒しに満ちた弦の伴奏からあの、輝かしいグルダの音色が轟きます。妖艶な色気を感じさせるかと思いきや、趣深い古潭の響きを聴かせ、この曲の美しい旋律が眩いばかりに流れていきます。微妙に古色を帯びたオケと、超リアルなピアノの紡ぎ出す美しい響きに時の流れを忘れんばかり。耳を澄ますとグルダの唸り声がわずかに聴こえます。そして圧巻はカデンツァ。磨き抜かれたタッチから繰り出さされる目眩く音楽にノックアウト。絶品です。
そして、終楽章の軽妙洒脱なタッチはグルダの真骨頂。ハイドンが仕込んだ転調、転調の音楽の息継ぎを実に見事に描き分けながらも淀みなく流れる音楽。もちろんタッチは冴に冴え渡り、ハイドンの終楽章の面白さを描き切ります。いやいや、これは超弩級の名演です。
この後のブルレスケももちろんキレキレ。このアルバムに収録されたどの演奏もこの時期の狂気が宿るようなグルダのキレ味が堪能できる名演揃いです。
期待はしていましたが、これほど見事な演奏だとは思いませんでした。ハイドンは国宝級の名演と言って良いでしょう。華を添えるのが見事な録音と完璧なリマスター。先にも書きましたが、モノラルのハンディを感じるどころか、モノラルでしか聴くことのできない圧倒的なリアリティでこの名演奏を楽しむことができます。ハイドンの評価は[+++++]とします。
もちろん、ハイドンばかりでなく、モーツァルトもベートーヴェンも絶品。ベートーヴェンの4番の入りの音でゾクゾク来ます。これは必聴でしょう。
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